社会人の学び直しが叫ばれる時代。大学や会社で学んだスキルが生涯通用する時代は終焉し、第2、第3の新たなスキルの習得が求められるようになっています。では、社会人は何を学び、何をこれからの糧とするのが望ましいのか。こうした問いの1つの解となるのが、東京都市大学が開講する社会人向け講座「DX人材コース2025」です。実務経験豊富な講師陣による講義を用意し、社会人の新たなスキル習得を支援します。2025年7月からの開講に先立ち、講座の概要や受講する利点について東京都市大学渋谷PXU担当兼 株式会社YKB 代表取締役の川邉雄司氏に話を聞きました。(聞き手:デジタルシフトウェーブ 海道理彩)
――東京都市大学では社会人を対象とした「DX人材育成コース2025」を開講します。プログラムの目的や開講するに至った経緯を教えてください。
川邉:社会人が新たな知識やスキルを教育機関で学び直すリカレント教育の重要性が近年増しています。人生100年時代が叫ばれる中、一度身に付けたスキルだけでは働き続けられなくなっているのです。外部環境が目まぐるしく変わる中、仕事で求められるスキルも変化し続けています。こうした社会で生き残るためには、知識やスキルを習得する学びの場が重要になると考えます。その場となるのが「DX人材育成コース2025」です。
文部科学省は大学に対し、リカレントやリスキリングを支援する講座やプログラムを増やすべきという方針を打ち出しています。そこで東京都市大学でも社会人の学び直しを支援し、ビジネスパーソンや企業、ひいては社会に貢献できる講座を実施すべきと判断しました。2024年1月に「東京都市大学リカレントプログラム」を立ち上げ、2024年度プログラムとして6月と11月にそれぞれ開講し、多くの方に受講していただきました。

――具体的に何を学ぶのでしょうか。
川邉:2024年1月の立ち上げ当初は、各講師が専門とするテーマの講義を受けられるようにしていました。しかし、講義によって専門性が高すぎるし、受講者がどの講義を選べばよいのか分からないといった声がありました。
そこで「東京都市大学リカレントプログラム」では内容を見直し、「DX(デジタルトランスフォーメーション)×サステナビリティ」と「デザイン×エンジニアリング」という2つのテーマに重点を置いた講義内容にしています。東京都市大学の学長として野城智也が2024年1月に就任したのを機に、DXやサステナブルといった世間の関心の高いテーマに軸足を置いた講義を打ち出すようにしたのです。
――その核となるコースが「DX人材育成コース」というわけですね。
川邉:はい。DXを推進できる人材を育成することを目的とした「DX人材育成コース」を用意しています。コースの監修には、東京都市大学(旧武蔵工業大学)の卒業生で、DXコンサルタントして活躍している鈴木康弘氏に携わってもらっています。
「DX人材育成コース」では、実践的な内容と基礎的な内容をバランス良く学べるカリキュラムを用意しています。ビジネスを具体的にどのように変革すべきかの考え方やアプローチを学べる一方、DXを成し遂げるために不可欠な考え方やITの基礎も学べます。内容は経済産業省が公表する「デジタルスキル標準」を参考にしながら、DX人材の育成に主眼を置いたものとなっています。受講対象となる人は、DX推進に現在携わっている人だけにとどまりません。これからDXリテラシーを高めたい人、将来はDXを推進する責任者を目指したい人など、幅広い層をターゲットとしています。
――DXを推進するためにはさまざまな分野の知識やスキルが求められます。「DX人材育成コース」では具体的に何を学べるのでしょうか。
川邉:DXに求められる思考術、DXを前提とした経営戦略などを学ぶほか、UXなどのデザインやデータ分析などを学ぶ授業で構成しています。とりわけで重点を置いているのは「ビジネスアーキテクト」の育成です。新規事業開発だけでなく、既存事業の高度化や社内業務の効率化といった、より広範な領域でDXを推進できる人材を育成できるようにします。例えば、営業の責任者が営業DXを推進したり、経理部門や総務部門の現場担当者がDXで業務効率を高めたりすることを実現できるようにします。ちなみに前回実施した際には、人事部門や人材開発部門に所属する受講者もいました。
――授業の回数や開催場所について教えてください。
川邉:「DX人材育成コース2025」は3ヵ月間のコースで、授業は全14回(1コマ90分)となります。14コマ中8コマが必須授業、6コマが選択授業という内訳です。講義は原則として、東京都渋谷区にある「TCU Shibuya PXU」という東京都市大学の拠点でオフライン開催します。ただし社会人を対象としたプログラムのため、時間を取りにくい人向けにオンラインによるライブ配信も実施する予定です。なお、講義後に動画をアーカイブ配信することは予定しておりません。
――必須授業の内容について詳しく教えてください。
川邉:必須授業では、DX推進を担うリーダーとして必要なスキルを学びます。各分野の第一線で活躍する方々を講師に招いているのが特徴です。
講師には、リカレントプログラムを監修したデジタルシフトウェーブの鈴木康弘氏、オールアバウトの江幡哲也氏、アイロボットジャパンの挽野元氏、トリドールホールディングスの磯村康典氏といった方々に講師として登壇いただく予定です。さらに新たな講師として、クルーズにて「SHOPLIST.com」を新規に立ち上げ、急成長させたFree Standard代表の張本貴雄氏、元レッドブル・ジャパンのCMOで現在は渋谷未来デザインで活躍する長田新子氏、元@cosmeで現在はRejouiの取締役としてAIを活用したデータ利活用を先端企業から老舗企業まで幅広く支援する見並まり江氏も登壇します。各講師の豊富な経験に基づいた実務的な内容の講義になる予定です。なお、私も「DX実践におけるビジネスアーキテクトの重要性」及びコースガイダンス・オリエンテーションというテーマで必須授業を担当します。必須授業は多くの受講者が参加できるよう、同じ内容の講義を平日夜と土曜の2回実施します。
――選択授業の内容も教えてください。
川邉:選択授業は、DXの知識やスキルを習得するための内容となります。講師は、東京都市大学の教員がメインで担当します。
なお、選択授業は必須授業と違って講義を一度しか実施しません。授業実施日と各自の予定を加味して受講できるかどうかを調整する必要があります。さらに選択授業は、可能な限り連続して実施します。1コマずつ開催するより、深い知識を習得できるよう配慮しています。
――DX人材育成コースは前回、2024年に11月に開講しています。受講者からどのような声があったのかを教えてください。
川邉:前回実施したコースには95名の方に受講いただきました。IT業界はもちろん、製造業、建設、金融、不動産、サービス業、医療、教育など、さまざまな業界の人が参加しました。例えば建設業の人からは、DX推進部を新設したタイミングだったので基本的な知識を体系的に学べて役立ったという声がありました。DXというキーワードへの感度が高く、具体的に何から取り組むべきか分からないという企業に所属する受講生が目立ちました。実務経験豊富な講師や大学の先生に相談したり意見を聞いたりできるのがありがたかったという声もありました。
その他、受講者同士のネットワーキングに注力してほしいという意見もありました。DX推進に取り組む受講者同士が集まることから、「他の受講者のDXの状況を知りたい」「どんな課題をどのように解決しているのかを知りたい」といった声が多くありました。授業中のグループワークや授業後の名刺交換、さらにはコース終了後の懇親会だけではなく、今回からは最初の授業時にネットワーキングを含めたオリエンテーションを盛り込むことにしています。
――「DX人材育成コース2025」を活用することで、受講者はどんなメリットを見込めるのでしょうか。
川邉:DXに関する知識やノウハウを習得し、それらを実際の現場で活用できるようになるのが大きな利点です。「DX人材育成コース2025」ではあくまで実務を想定した講義内容にしています。DXの全容を漠然と学ぶのではなく、どんな業務の無駄にメスを入れるべきか、DXを推進するチームにはどんな人材を割り当てるべきかなど、実際に業務で直面するシーンを想定した解説策を提示できるようにしています。「こんなケースではこう解決すべき」といった具合に、自ら解決策を導き出す力や考え方を身に付けられるようになります。
自身のキャリアップやキャリアチェンジの手段として活用することも見込まれます。実際に、前回の受講生の中にキャリアチェンジを目指すための手段としてコースを受講している方がいました。東京都市大学として企業との関係を活かし、受講生のキャリアに関する相談にも対応していく考えです。特に必須授業を担当する講師陣は豊富な人脈を持っていることから、講師陣のネットワークを活かしたキャリア支援にも注力できればと考えます。
――最後に「DX人材育成コース2025」を受講しようか迷っている人にメッセージをお願いします。
川邉:「DX人材育成コース2025」は、変化の激しい時代を生き抜く術を網羅したカリキュラムを用意します。多くの企業にとって共通のテーマである「DX」にフォーカスし、DXを主導できる人になるためのノウハウも詰め込んでいます。「社会で必要とされるスキルや知識を持っていない」「DXに関するスキルを身に付けて会社の変革に寄与したい」などと思っている人に相応しい授業を用意しています。「リカレント」や「リスキリング」「DX」といったキーワードが気になる人はぜひ一度、「DX人材コース2025」についてお問合せいただければと思います。皆さまと授業で出会える日を楽しみにしています。
リカレントプログラム詳細:
募集期間(予定):2025年5月1日(木)~6月20日(金)
https://recurrent.shibuya-pxu.tcu.ac.jp
受講期間:2025年7月~ 2025年9月
開講場所:TCU Shibuya PXU (東京都市大学 渋谷パクス)
渋谷区道玄坂1-10-7 五島育英会ビル8階
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