仕事は一人では成り立ちません。同僚はもちろん、上司や先輩、さらには取引先や顧客がいて初めて成り立ちます。こうした多くの人と良好な関係を築く上で大切なのが「思いやり」です。思いやりは具体的にどんな行動に現れるのか。思いやりが仕事にどう影響するのか。論語の「五徳」の1つである「仁」から、周囲を思いやる大切さについて考えます。【週刊SUZUKI #57】
人として正しい振る舞いや望ましい考え方を表す「五徳」。その1つが、思いやりを意味する「仁」です。
仕事に取り組むとき、「仁」の教えと向き合うことが大切です。「仁義」や「仁徳」などの言葉に使われる「仁」には、周囲の人への気遣いや配慮、慈しみといった意味が込められています。仕事では、上司や先輩はもとより、同僚や後輩にも思いやりを持つようにします。顧客や取引先といった社外の人に対しても、思いやりが当然求められます。
仕事では思いやりが求められるシーンは多々あります。仕事に行き詰まって悩んでいる同僚に声をかけ、相談に乗るのも思いやりの形と言えるでしょう。取引先との仕事を円滑に進めるため、コミュニケーションを積極的に取ろうとするのも、思いやりの気持ちがあってこそです。もし、思いやりの気持ちを態度や行動で示せなければ、仕事は立ちどころに行き詰まります。相手に不快な印象さえ与えかねず、関係も悪化してしまうでしょう。
私は小さいころ、両親や学校の先生から「思いやりを持った人になりなさい」と言われたことを今も強く覚えています。特に父には「相手のために行動するのではなく、相手の立場に立って行動しなさい」と言われ続けました。後に「五徳」の「仁」の教えだと知り、今は仕事を通じてその大切さを強く実感しています。
大切なのは「常に相手の立場に立って考える」です。相手が自分をどう見ているのかを考えられるかどうかが重要です。例えば、相手はどうすれば喜ぶのか、どうすれば笑うのか、何を望んでいるのかを推察し、行動できるかどうかが何より求められるのです。逆に言えば、どうすれば悲しむのか、嫌がるのかも想定した上で行動できなければなりません。
これが思いやりであり、「仁」の教えの本質だと考えます。
仕事に一所懸命取り組むあまり、周りが見えなくなっていませんか。周囲への配慮に欠けていませんか。常に周囲に気を配り、仲間の異変を感じたら声をかけるなどの配慮を示すべきです。思いやりを行動で表すべきです。こうした思いやりに満ちた社風が、チームとしてのまとまりを生み、全社一丸の土壌を育むのです。
筆者プロフィール
鈴木 康弘
株式会社デジタルシフトウェーブ
代表取締役社長
1987年富士通に入社。SEとしてシステム開発・顧客サポートに従事。96年ソフトバンクに移り、営業、新規事業企画に携わる。 99年ネット書籍販売会社、イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を設立し、代表取締役社長就任。 2006年セブン&アイHLDGS.グループ傘下に入る。14年セブン&アイHLDGS.執行役員CIO就任。 グループオムニチャネル戦略のリーダーを務める。15年同社取締役執行役員CIO就任。 16年同社を退社し、17年デジタルシフトウェーブを設立。同社代表取締役社長に就任。 デジタルシフトを目指す企業の支援を実施している。SBIホールディングス社外役員、日本オムニチャネル協会 会長、学校法人電子学園 情報経営イノベーション専門職大学 客員教授を兼任