仕事の基本となる「型」を学ぶ一冊。そんな本が3月に発売されます。書籍のタイトルは「仕事の心得」。著者であるデジタルシフトウェーブ 代表取締役社長の鈴木康弘氏は、なぜ「型」の必要性を訴えるのか。なぜ仕事への向き合い方を今、問うのか。「仕事の心得」を上梓するにいたった経緯を聞きました。
――「仕事の心得」では、仕事に向き合う基本的な姿勢や考え方をまとめています。なぜ今、仕事への姿勢が問われているのでしょうか。
鈴木:仕事に対する姿勢や考え方を学ぶ機会の減少が背景にあります。以前なら、上司や先輩から仕事のやり方はもちろん、どんな心構えで臨むべきか、どんな点に注意すべきかなど1つひとつ教わったものです。しかし今、上司や先輩から教わる機会はなくなりつつあります。その結果、多くの人が「仕事でどう成果を出せばいいのか分からない」「仕事とプライベートをどう切り分ければいいか分からない」などの悩みを抱えるようになっているのです。
――上司や先輩から仕事の作法を教わる機会は、なぜ減ってしまったのでしょうか。
鈴木:要因の1つと考えられるのが新型コロナウイルス感染症です。コロナを機にリモートワークが加速し、上司や先輩と日常的に話す機会がなくなってしまったのです。オンラインの画面越しに話すことと言えば、仕事の進捗程度。これでは仕事に向き合う姿勢や考え方など、仕事に取り組むために必要な心構えなんて学べません。
さらに最近は、上司が部下を飲みに誘う機会も減りつつあります。無理矢理に誘えばハラスメントになるのではと、上司や先輩が部下を誘いづらくなっているのです。いわゆる「飲みニケーション」が減ったことで、上司や先輩から仕事への向き合い方を学ぶ機会そのものも減ってしまったのです。
――仕事への姿勢や考え方を教わる機会を失った若い世代は、仕事に迷いを感じています。そこで「仕事の書籍」では、こうした迷いを払拭する、仕事への向き合い方をまとめているわけですね。
鈴木:はい。「仕事の心得」では、上司や先輩が部下に教えているような、仕事の基本をまとめています。さらに、私自身もこれまで、いろいろな方々から仕事について教わってきました。こうした教えを次代の若者にも受け継ぐべきと考え、私が教わってきた教訓も本書に盛り込みました。コミュニケーションが希薄な今こそ、仕事への姿勢や考え方をきちんと明文化すべきと思ったのです。
――「仕事の心得」では具体的に、仕事への姿勢や考え方をどのように解説しているのでしょうか。
鈴木:仕事に取り組むときの姿勢、仕事で成果や結果を出すための考え方、苦難の乗り越え方など、仕事と向き合うときの心構えを30の「型」としてまとめています。ここで言う「型」とは、仕事の基本となるものです。仕事に限らず、どんな世界でも「型」は存在します。代表的なのが茶道や華道、柔道、剣道などです。これらには例外なく、基本となる「型」があります。その「型」をきちんと習得しなければ、応用することだってできません。いわゆる「型破り」は、基本となる「型」があってこそ成せるのです。上司や先輩から仕事に対する姿勢や考え方を教わってない人は、まさに「型なし」の状態といえます。仕事でも基本となる「型」を身に付けない限り、成果や結果さえ残せません。自身の成長も見込めません。
――例えば、どんな「型」を紹介しているのでしょうか。
鈴木:本書では「仕事とはなにか」「プロフェッショナルになる」「仕事とプライベート」「苦労と向き合う」「正しく学ぶ」「人として大切なもの」という6つのテーマに分け、それぞれの「型」を解説しています。
例えば「苦労と向き合う」のテーマの1つとして、「どんなときも笑顔を忘れない。幸せだから笑顔なのではなく、笑顔だから幸せなのだ」という心得を紹介しています。仕事ではつらく苦しいことが少なく利ません。ピンチに見舞われることもあります。そんなときでも笑顔を絶やないことが必要だと考えます。笑顔が周囲との関係を深め、仲間とピンチを脱せられるようになるかもしれません。仕事も前向きに進められるようになるでしょう。こうした笑顔の大切さを「型」にして紹介しています。多くの人が忘れている、もしくは見失っている仕事の基本を、「型」として改めて伝えることが大事だと考えます。
――「仕事の心得」をどんな人に読んでもらいたいと思いますか。
鈴木:仕事に悩みを抱える人に気付きを与えるきっかけになればうれしいですね。特に次のような人におすすめしたいと考えます。
・仕事の将来に不安を感じている人
・意思決定に迷いが生じている人
・プライベートが楽しく感じられない人
・これから社会人になることが不安な学生
・世代間ギャップを感じている経営者
・ハラスメントを恐れ何もいえない上司
例えば若い世代に限ると、仕事に向き合う姿勢や考え方が十分根付いていません。上司や先輩から仕事の心構えを教わる機会も減っています。だからこそ、「仕事の心得」で取り上げている30の「型」に重みを感じてもらえるのではと考えます。
一方、経営者の方々にも、社員教育の一環で本書を活用いただけるのではないかと考えます。最近の社員は挑戦したがらず、保守的な考え方が根付いていると言われます。こうした社員が培った企業風土を打破し、積極的にチャレンジする風土を築くためにも、「型」の理解が欠かせないと考えます。若手社員はもちろん、挑戦したがらない40代や50代の社員も含め、社員研修の手段として本書を利用できるのではないかと思います。
――最後に、仕事に悩みを抱える人にメッセージをいただけますか。
鈴木:仕事で苦労を伴うのは当たり前です。つらく苦しい思いもたくさんするでしょう。そんなときでも前を向き、一歩を踏み出さなければなりません。その一歩を後押ししてくれるのが、上司や先輩から教わったこと、さらには過去の偉人や達人の教訓です。「仕事で行き詰まったとき、上司や先輩ならどうするだろう?」「偉人と呼ばれる人たちは、困難な局面をどう乗り切ったのだろう? どんな姿勢を貫いたのだろう?」などの思いを巡らせることで、新たな一歩を踏み出せるようになるのです。「仕事の心得」では、上司や先輩、偉人や達人の教えが凝縮されています。本書で記す30の「型」を理解し、実践することで、成果や結果を残せるようになります。自分を正しい方向へ誘う道標として「仕事の心得」を活用していただければうれしいです。
仕事の心得
発行:デジタルシフトウェーブ
出版社:総合法令出版
発売:2024年3月8日
<内容紹介>
仕事に取り組むときの姿勢や考え方、仕事に向き合うときの心構えなどを解説します。著者である鈴木康弘氏が自身の経験をもとに、仕事の基本となる30の「型」を紹介します。「仕事に行き詰まったら…」「仕事へのモチベーションが上がらない…」「仕事で思うような結果を残せない…」などと悩みを抱えるビジネスマンの心に刺さる一冊です。さらに、「自社を変革したい」「社員の士気を高めたい」「社内の雰囲気を良くしたい」などと考える経営者にとっても、社員教育の一助となるヒントが盛りだくさん!新入社員研修や社員のスキルアップにも役立ちます。
「仕事の心得」著者
鈴木康弘
株式会社デジタルシフトウェーブ
代表取締役社長
1987年、富士通に入社。SEとしてシステム開発・顧客サポートに従事する。1996年にソフトバンクに移り、営業や新規事業企画に携わる。1999年にネット書籍販売会社のイー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を設立し、代表取締役社長に就任。2006年にセブン&アイHLDGS.グループ傘下に入る。2014年、セブン&アイHLDGS.執行役員CIO就任。グループのオムニチャネル戦略を推進するリーダーを務める。2015年、同社取締役執行役員CIO就任。2016年に同社を退社し、2017年、デジタルシフトウェーブを設立、代表取締役社長に就任する。他に、日本オムニチャネル協会 会長、東京都市大学 教授、SBIホールディングス 社外役員を兼任する。