
日本オラクル 執行役員NetSuite事業統括 日本代表カントリーマネージャー 渋谷由貴氏とデジタルシフトウェーブ 代表取締役社長 鈴木康弘氏が、DXの課題と成功の鍵について議論する対談企画。1回目となる前回は、DXを成功させる際の経営者のあるべき姿を模索しました。第2回となる今回のテーマは、DX推進時の戦略の立て方。戦略を立てるときに求められる「妄想力」の必要性について議論しました。
未来の自社のあるべき姿をゴールに定める
鈴木:「DX」という言葉を聞かない日はないくらい、DXは多くの業界、企業で浸透しています。ただし、これは言葉が使われているという意味で、DXを成し遂げた企業が増えているわけではありません。多くの企業が「DXをやらなければ」と焦っているのが現状です。
渋谷:「DXを始めてみよう」と勢いで動き出す企業も多いように思います。その中で、つい大事なことを見落としてしまうことがあります。それが「ゴール」です。DXを達成したといえる基準がはっきりしないまま、「とりあえずやってみよう」と進めている企業もあるのではないでしょうか。こうなると、せっかくの取り組みも、うまく成果につなげるのは難しいかもしれません。
鈴木:DXに取り組む企業の多くが、システム導入をゴールに考えがちですよね。しかしDXで大切なのは、変革できたかどうかです。会社が変わらない限り、その取り組みはDXとは呼べません。では、「変わる」とはどんな状態を指すのか。この答え、つまり変わった状態こそがゴールです。企業は自社をどう変えたいのか、どんな未来にしたいのかをきちんと描いて、ゴールを明確にすべきです。3年後の姿でも5年後の姿でも構いません。もしくは10年や30年先を見据えても構いません。現在と比べて未来はどうなりたいのかを考え、言語化することで初めてゴールを設定できるようになるのです。
渋谷:その通りだと思います。多くの企業は、DXそのものがゴールになってしまっているように感じます。DXもITと同じで、あくまで手段として考えるべきではないでしょうか。将来の自社の姿に向けて変わるための手段として、DXを活用することが大切だと思います。
鈴木:経営者の中には、最近の時流に乗って「AIで何かやってみろ」なんてことを言う人がいますよね。しかし、これもゴールがありません。このケースもAI導入が目的となってしまい、何を持って成功なのかが分かりません。
