「人生100年時代」と言われる今、セカンドキャリアをどう築くか。本連載ではこれまで、セカンドキャリアを考える上で、誰もが一度は取り組むことになる「キャリアの棚卸」について、そのポイントをお伝えしました。今回は、キャリアを棚卸する際に陥りがちな“罠”について取り上げます。加えて、セカンドキャリアを描くためのフレームワークの選び方についてもご紹介します。【会社員から社会人へ!50代からのキャリア実践ガイド#4】
キャリアの地図は、永遠のβ版
キャリアを棚卸するには、フレームワークを活用することが一般的です。これまでの経験や実績、強みや弱みを、客観的な視点に基づき洗い出すことができます。前回はキャリアを棚卸するときにもっとも使われる「Will・Can・Must」の使い方、考え方ついて触れました。
しかし、世の中にはさまざまなフレームワークが存在します。「使ってみたけれど、しっくりこなかった」という経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
手元にある国家資格キャリアコンサルタント受験用の教科書を眺めると、キャリアに関する理論は9種類あり、それぞれ10〜20名ほどの主要な理論家が理論を解説しています。全ての理論家がフレームワークを作成しているわけではないものの、派生やアレンジしたものを含めると、キャリアに関するフレームワークだけでも100種類を軽く超えるでしょう。
大切なのは、自分に合ったフレームワークを利用すること。ご自身のキャリアを棚卸するのにもっとも進めやすいもの、書きやすいものを使用するのが望ましいでしょう。
あなたにベストなフレームワークの選び方
とはいえ、どのフレームワークが自分にとってベストなのか選ぶのは難しいですよね。世の中に数あるフレームワークを整理してみると、目的に応じて、以下の3つに大別されます。ご自身はどれに該当するでしょうか?
分類 | 主な目的 | 向いている人 | 代表的なフレームワーク例 |
① 自分の軸を知る | 価値観・動機・強みを棚卸し、キャリアの指針を持つ | 迷いやモヤモヤがある | キャリアアンカー、ストレングスファインダー、ライフラインチャート |
② 今のキャリア資本を整理する | 現時点でのスキル・経験・ネットワークを可視化 | 働き方を見直したい、今の自分を整理したい | Will/Can/Must、IKIGAI、ジョハリの窓 |
③ 人生を構想する | これからの人生の全体像を描く(仕事+α) | 定年後や転機を見据えている | 4L、ライフキャリアレインボー、パーパスツリー |
フレームワークを使う際、「完璧を目指さないこと」も大切です。まずは書けるところから書き始めましょう。30分ほどで切り上げ、翌日にまた書き出してみるようにします。この「ちょこちょこ取り組む」スタイルによって、入社の動機を思い出したり、やりたかった仕事への想いがよみがえったり、家族との思い出から気になる土地への想いが浮かんできたりと、記憶がつながり、棚卸を自然と深められるようになります。
フレームワークを使ってキャリアが一通り埋まったら、次は誰かと話す機会を設けてください。アウトプットした内容を人に話すことで、それまで得られなかった具体的なアドバイスやヒントを得られます。何よりも、自分が書き出した内容を人に説明することで、新たな気づきを得ることができるのです。
実際、当社のキャリア相談の参加者の中には、「ちょっとカッコよく書きすぎたな」とその場で手直しする方や、「話してみたらワクワクしなかった。これは自分じゃない」と方向転換する方もいます。こうしてアウトプットを見直したり対話を繰り返したりすることで、ご自身の「キャリアの地図」が次第に形づくられていきます。
この「キャリアの地図」は、永遠のβ版です。常に未完成で、新たな要素が加わったり、逆に手放すべきものが見つかったりします。それが成長の証ではないでしょうか。そんなセカンドキャリア、セカンドライフこそわくわくしませんか?
日本オムニチャネル協会では、一人でセカンドライフを考えるのではなく、みんなで学ぼう!と協会活動として「セカンドライフアカデミー」を2025年度より開催しています。業界も、立場もまったく異なるメンバーで学び合う場です。第1回の講義では、経営者の方、人事の方、セカンドライフ当事者の50代の方、アカデミックの方、とまさにすべての(オムニ)チャネルを繋ぐ協会らしい多様なメンバーが集いました。「セカンドライフアカデミー」が、1人でセカンドキャリアを考えるのは腰が重いという方のキャリアを見直すきっかけとして活用いただけたら嬉しいです。

筆者プロフィール
大桃綾子
Dialogue for Everyone株式会社 代表取締役
1981年生まれ、新潟出身。三井化学にて人事・事業企画に約10年従事。トリドールホールディングスを経て、2020年創業、40代50代に特化したキャリア自律・越境学習プログラムを展開。 地方企業と都市部人材の副業マッチングサービスJOINS取締役、新潟県産業ビジョン2030委員、広島県呉市中小企業・小規模企業振興会議ワーキンググループ委員などを務める。プライベートでは2児の母。
日本オムニチャネル協会
https://omniassociation.com/