グローバル社会において、教育のデジタルトランスフォーメーション(DX)は喫緊の課題となっています。しかし、日本の学校教育現場では、ICT化が遅れている現状や教員の負担増加など、多くの課題を抱えています。そんな学校現場のDX推進を後押しするのがIT導入補助金です。
これは、中小企業や小規模事業者が、自社の課題に合ったITツールを導入する際の経費を一部補助する制度であり、業務効率化や売上向上を目的としています。学校法人でも常勤従業員が300人以下の場合は申請が可能で、ICT教育の推進に役立てることができます。
本記事では、学校教育現場におけるDX推進のポイントと、IT導入補助金申請時の注意点について詳しく解説していきます。
なぜ学校教育現場にDXが必要なのか? ~遅れが指摘される現状と課題~
経済協力開発機構(OECD)の調査によると、日本の学校におけるICT環境整備は、先進国中でも遅れをとっているという結果があります。グローバル社会で日本の教育競争力低下が懸念されている中で、子どもたちが21世紀を生き抜くためには情報活用能力や問題解決能力が不可欠です。そのためにも、学校教育現場でDX推進は急務です。
さらに、教員の業務負担増加や長時間労働は深刻な問題となっており、働き方改革も喫緊の課題です。これら課題解決にはICTを活用した校務効率化や個別最適化された学び実現など、学校教育現場でDXが不可欠です。
IT導入補助金とは? ~学校法人でも活用可能!~
IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者が自社課題に合ったITツール導入時経費一部補助する制度であり業務効率化売上向上目的としています。学校法人も対象含まれ常勤従業員300人以下の場合申請可能です。
学校法人で活用できるITツールとして、下記のものが挙げられます。
・Web会議システムなどソフトウェア
Web会議システムとは、パソコンやタブレットにソフトウェアをインストールしてインターネットにつなぐことで、オンライン上で会議などを行うことができるシステムです。これまではメールや電話で行っていた連絡も、このシステムを使えばリアルタイムかつ簡単にビデオ通話でやり取りできます。教師同士の会議だけでなく、生徒への遠隔授業にも活用可能です。また、離れた教室間でも合同学習が実現します。
・タブレットやパソコンなどハードウェア
生徒一人ひとりにPCやタブレットを支給するためには、ハードウェアのレンタルまたは購入が必要です。この際に必要なPC、タブレット、およびICT教育関連デバイス導入時に補助金が活用できるケースがあります。
IT導入補助金の種類
- 通常枠
A類型とB類型に分かれており、生産性アップを期待できるITツール導入時に利用可能です。補助率は1/2となっており、ITツール費用半額まで補助されます。 - セキュリティ対策推進枠
サイバー攻撃からリスク軽減目的として必要な費用を補助します。 - デジタル化基盤導入類型
中小企業・小規模事業者等による受発注ソフト、会計ソフト等購入時、およびPC・タブレット導入時に適用されます。 - 複数社連携IT導入類型
複数中小企業・小規模事業者連携によるITツール導入ケース対象です。 - 商流一括インボイス対応類型
インボイス制度対応したITツール無償提供条件下、一部費用補助されます。
学校法人の場合、「通常枠A類型」と「デジタル化基盤導入類型」が主な対象です。「通常枠A型」では5万円~150万円未満、「デジタル化基盤」では50万円以下(3/4以内)または50万超350万以下(2/3以内)の範囲内で適応されます。PC・タブレット等ハードウェアについても10万円以下(1/2以内)条件下適応可能です。
学校法人もIT導入補助金を活用することが可能です。これからのICT教育に向けて、まだ体制が整っていない学校法人は、この補助金を積極的に利用することをお勧めします。ただし、条件に合致しない場合や申請時のミスによって、補助金が支給されないケースもあるため注意が必要です。特に、交付申請後に交付決定を受ける前に契約を結んでしまうと、補助対象外となるので、その点にも十分気を配りましょう。
執筆:海道理彩