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ファンづくりのための顧客ロイヤルティを定義、顧客の気持ちを優先する心理ロイヤルティに目を向けよ【ファンをつくる「顧客ロイヤルティ」の極意 Vol.5】


ビジネス用語として使われることの多い「顧客ロイヤルティ」。一般的には経済、行動、心理の3つの視点で用いられます。今回は3つのロイヤルティの特性や関係性に加え、ファンづくりのマネジメントを実施する上で踏まえるべきロイヤルティについて考えます。なお、本連載はリックテレコム『ファンをつくる顧客体験の科学「顧客ロイヤルティ」丸わかり読本』の内容をもとに編集しております。

3つの視点で語られるロイヤルティ

突然ですが筆者は、日本オムニチャネル協会の活動に参加しています。日本オムニチャネル協会は、オムニチャネルやデジタルマーケティング、DXなどを成功させるための議論の場を提供する団体です。小売業を始めとするさまざまな業界に属する企業や団体、さらにはこうした企業を支援するITベンダーが参加します。400人/ 280社以上(2023年12月時点)もの企業担当者が参加し、専門家が登壇するセミナーや分科会を通じた議論活動を展開します。

日本オムニチャネル協会
https://www.omniassociation.com/

その中で筆者は2022 年度、ロイヤルティ分科会のリーダーを担当しました。そこではロイヤルティを定義するため、分科会参加メンバーに「ロイヤルティが高いお客様とはどんな状態のお客様か?」というアンケートを実施。その結果をもとに、ロイヤルティを整理・分類しました(図表5-1)。

図5-1:ロイヤルティが高いお客様とは?

アンケート結果を踏まえると、ロイヤルティは3つに分類されます。具体的には「経済(購買)視点」「行動視点」「心理視点」の3つです。これらはいずれも高いロイヤルティ状態を判断するための重要な要素です。各視点の関係と特徴は次の通りです(図表5-2)。

図5-2:3つに分類される顧客ロイヤルティの関係

心理ロイヤルティ
お客様から見た企業への気持ちで定義されるロイヤルティ。ファンづくりにおいては、お客様の気持ちが重要であり、もっとも重要視されるロイヤルティです。なお、ロイヤルティが高い状態ではお客様視点が重要で、心理ロイヤルティが高い状態と定義するのが望ましいでしょう。

経済ロイヤルティ
お客様と企業の取引量や回数で定義されるロイヤルティ。収益マネジメント上で重要な定義となります。ただし、心理ロイヤルティが高いお客様は経済ロイヤルティが高くなる可能性が非常に高まるものの、経済ロイヤルティが高いからと言って心理ロイヤルティが高くなるとは限りません。

行動ロイヤルティ
お客様との接点(タッチポイント)の回数や質で定義されるロイヤルティ。心理ロイヤルティや経済ロイヤルティに影響を与える重要な指標となります。一般的に言われるCX(カスタマーエクスペリエンス)施策は、この行動ロイヤルティを向上させるための取り組みと解釈できます。

顧客ロイヤルティ向上活動に取り組む際、どのロイヤルティに注力すればよいのか。それは、誰が担当するのかによって異なりがちです。一般的には、CFO(Chief Financial Officer)は収益に直結する経済ロイヤルティ、CMO(Chief Marketing Officer)はお客様とのタッチポイント施策の効果視点の行動ロイヤルティ、CCO(Chief Customer Officer)はお客様の満足や愛着度合いを重視した心理ロイヤルティに注力、といった具合です。ファンづくりやロイヤルティ向上活動を社内で啓発したり、プレゼンテーションを実施したりする際には、相手の役職や部署によって興味の視点が異なることを認識しなければなりません。

なお、ロイヤルティを定量化する場合、経済ロイヤルティは指標にしやすい項目が多い一方、心理ロイヤルティは定量化して把握するのが困難であることを踏まえるべきです。行動ロイヤルティもお客様のデジタルシフトが加速し、企業サイドからお客様の行動を把握するのが容易になりつつあります。

心理ロイヤルティに目を向けた活動はファンづくりに不可欠です。しかし、活動を定量的に把握するのが難しいため、精神論で片付けられるケースが目立ちます。ファンづくりのマネジメントでは、心理を除く経済/行動ロイヤルティの指標による管理しかできていない状況に陥っている企業が少なくないのです。心理ロイヤルティを適切に把握、管理する術を身につけなければ、顧客ロイヤルティ向上活動は正しい道へと進まなくなってしまいます。

そこで本コラムでは、心理ロイヤルティをKGI(Key Goal Indicator)として、その要因を構造化、定量化、分析する手法を解説していきます。

腹落ちするロイヤルティの定義

日本オムニチャネル協会のロイヤルティ分科会では、参加メンバーによる議論を踏まえ、3 つのロイヤルティの特徴に基づいた定義を策定しました。筆者もこれまで「ロイヤルティ」をさまざまな定義しましたが、現段階ではこの定義がもっとも納得できると捉えています。それが以下の定義です。

<ブランドや商品に対するロイヤルティの定義>
ブランドや商品に対して、信頼や愛着をもって末永く関係行動(※)し続けたいと思う気持ち

関係行動とは?
購買(契約)する、購買(契約)した商品やサービスを利用する、来店する、イベントに参加する、情報を収集する、情報を拡散する、ネットのコンテンツを閲覧する、カスタマーサポートにコンタクトする、アンケートに答える、他人に推奨する、応援する、思い続けるなど、自分の時間やお金を費やしてブランドや商品に関わる行動を実施すること。

ファンをつくるための重要要素であるロイヤルティは、「心理」「経済」「行動」の中でも心理ロイヤルティが重要視されます。つまり、お客様の気持ちで定義されるともいっても過言ではないのです。なお、この心理ロイヤルティに影響を与える行動ロイヤルティは、関係行動という言葉で表現されます。

さらに重要なのは、購買行動も心理ロイヤルティ、すなわちお客様の気持ちを向上させるための行動の1つとして定義されていることです。経済ロイヤルティに直結する購買は、多くの関係行動の中の1つと位置付けられるのです。

実業の現場では、日々の収益獲得が重要なのは言うまでもありません。このとき、収益主導のマネジメントとなる経済ロイヤルティが主となりがちです。しかし、ファンづくりの原点に立ち返れば、前述のロイヤルティの定義が非常に有効です。この考え方を前提に、顧客ロイヤルティ向上活動に取り組むことが極めて大切です。

次回は、心理ロイヤルティを構造化し定量化して見える化する手法について解説します。

著者プロフィール

渡部 弘毅 (わたなべ ひろき)
ISラボ 代表 〈www.is-lab.org
一般社団法人 地域マーケティング経営推進協議会 理事

日本ユニシス(現 BIPROGY)、日本IBM、日本テレネットを経て、2012年にISラボ設立。一貫してCRM分野の営業、商品企画、事業企画、戦略・業務改革コンサルティングに携わる。現在は心理ロイヤルティマネジメントのコンサルティングを中心に活動。お客様の心理ロイヤルティアセスメントに関する独自の方法論を提唱し、ファンづくりの科学的かつ実践的なコンサルティング手法を展開する。業界団体や学術団体での研究活動、啓蒙活動にも積極的に取り組む。

〈著書〉
ファンをつくる顧客体験の科学 「顧客ロイヤルティ」丸わかり読本/リックテレコム(2023/11)
お客様の心をつかむ 心理ロイヤルティマーケティング/翔泳社( 2019/12)
営業変革 しくみを変えるとこんなに売れる/メディアセレクト( 2005/1)

本連載は、リックテレコム刊行の『ファンをつくる顧客体験の科学 「顧客ロイヤルティ」丸わかり読本』の内容を一部編集したものです。

ファンをつくる顧客体験の科学 「顧客ロイヤルティ」丸わかり読本

出版社:リックテレコム
発売:2023年11月27日

<内容紹介>
多くの企業は「ファンづくり」の重要性を認めているものの、日常は「購買者づくり」のマネジメントに終始しています。これはファンづくりの科学的なマネジメントができていないからです。本書では、顧客ロイヤルティの定義からはじまり、構造化、定量化、分析、考察するロイヤルティアセスメント手法を、事例を交えながら解説しています。ファンづくりを、「思いのマネジメント」から「科学的なマネジメント」に変革するための知見が凝縮しています。

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