現在、世界では約4,300万人が失明しており、2050年にはその数が1億2,000万に達するとの予測があります。これらの失明の多くは、眼科医療へのアクセスの欠如が原因とされ、特に離島や地域医療が不十分な場所では問題が深刻です。そこで、株式会社OUIと株式会社マグナ・ワイヤレスは、5G通信技術を活用して眼科疾患の遠隔スクリーニングに向けた実証実験を行い、その可能性を探りました。
実証実験では、自社開発のSmart Eye Camera(SEC)を使用し、5G環境下で患者の眼を撮影、遠隔地にいる眼科医によるスクリーニングを試みました。KDDI株式会社の協力を得て、5G通信を利用した場合とLTE通信でのスクリーニング品質を比較しました。実験結果として、4K映像による前眼部の映像は理想的でしたが、HDでも十分な品質を確保できることが確認されました。一方、眼底に関しては、疾患の診断に必要な詳細な映像を得るために4Kが必須であることが明らかになりました。5G通信によってリアルタイムで4K映像が転送される一方、LTEでは画質を下げる必要がありました。この結果は、特に遠隔地で高品質なスクリーニングを行う上での重要な知見です。
専門医によると、眼科疾患の多くは自覚症状が少ないため、患者が症状を感じる前に受診することが重要です。加齢が原因の疾患も多く、早期発見による治療が効果を発揮します。眼科の診療において20世紀以来の新たな取り組みであるこの遠隔スクリーニング技術の導入は、心身の健康を維持する観点から、これからの日本社会において非常に大きな意義を持つと言えるでしょう。
今後、OUI社およびマグナ・ワイヤレスは、今回の実証実験から得られたデータを基に技術的な課題を洗い出し、さらなる研究開発を進めていく予定です。眼科疾患の遠隔スクリーニングの実用化が実現すれば、全国どこでも、医師がいつでも診断を行うことができる環境が整うでしょう。これにより、地域医療の格差を埋め、患者にとってより良い医療サービスを提供できる社会の実現が期待されます。
5G技術がもたらす未来の医療は、今後ますます進化を遂げ、患者と医療従事者の新しい形の「出会い」を創出していくことでしょう。詳しくは「株式会社マグナ・ワイヤレス」の公式ページまで。
レポート/DXマガジン編集部熊谷