公正取引委員会は2025年7月22日、シンガポールに本社を置くVisaグループの拠点、ビザ・ワールドワイド・ピーティーイー・リミテッドが申請していた確約計画を認定しました。同社が提供する取引処理ネットワークに関する優遇制度が、競合排除の懸念を生じさせていたとして、独占禁止法上の「拘束条件付取引」に該当するおそれがあると判断したものです。今回の認定により、競争環境の早期回復と公正な市場の維持を目的とした是正措置が今後5年間にわたって実施される見通しです。
Visaの取引条件が競争制限の懸念、公取委が対応を促す
公正取引委員会は、Visaブランドのアジア太平洋地域における中核拠点であるビザ・ワールドワイド・ピーティーイー・リミテッド(以下、ビザ・ワールドワイド)に対し、独占禁止法に基づく審査を実施してきました。その結果、Visaカードの取引処理に関する優遇レートの適用条件が、他社ネットワークの利用を事実上困難にするものとなっており、不公正な取引方法の一つとされる「拘束条件付取引」に該当する可能性があると判断しました。
ビザ・ワールドワイドは、Visaカード決済における取引処理ネットワークにおいて、自社ネットワークを利用した場合に限って優遇レートが適用されるよう制度を設計しており、特定の業種区分ではその条件が明確に示されていました。この設計により、クレジットカード事業者が競合他社のネットワークを選択しづらくなり、実際に他社からVisaネットワークへ切り替える事例も確認されていたとのことです。
今回の確約計画では、優遇レートの判定条件を改め、ビザ以外のネットワークを使用しても不利益とならないよう、条件の同等性を確保することが盛り込まれました。また、こうした措置を取締役会で正式に決議し、クレジットカード会社に通知、関連従業員にも周知すること、さらに5年間にわたり対応を継続することが計画されています。
あわせて、公正取引委員会が認めた第三者機関により、措置の履行状況を監視・報告する体制が構築され、独占禁止法の遵守に向けた研修や内部監査も定期的に実施される予定です。
なお、公正取引委員会は本件について「違反の事実を認定したものではない」としていますが、こうした確約制度を活用することで、違法の疑いがある行為を迅速に是正し、競争環境の回復を図る狙いがあります。今回のケースは、競争政策における「確約手続」がより実効的に運用されていることを示す事例といえます。
詳しくは「公正取引委員会」まで。
レポート/DXマガジン編集部