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ものづくりに関する情報が集約され、守られている安心感、商品企画・生産物流プラットフォームの中核となる小売向けPLM によるDX推進:セントリックカンファレンスで語られたファッション業界で成長を続けるオンワードとyutoriの内幕とは?


Centric Connect Tokyo 2024 was held on September 19, 2024, focusing on the vital role of Product Lifecycle Management (PLM) in digital transformation within the retail sector, including fashion, cosmetics, food, and general retail. The conference featured insights from Centric Software, two Japanese deploying companies, and industry experts. Centric Software highlighted AI-driven decision support for merchandising planning, pricing, and inventory optimization. Notable sessions included Onward Holdings, discussing their PLM implementation as part of their ONWARD VISION 2030 strategy, aiming for unified information management and efficient supply chain collaboration. Yutori, targeting Gen Z with 31 brands, shared strategies for integrating Centric PLM to support their rapid growth. The potential of PLM in managing product development and AI-driven innovation was emphasized by industry experts, suggesting PLM as a critical enabler in retail DX.

セントリックソフトウェアは2024年9月19日、カスタマーカンファレンス「Centric Connect Tokyo 2024」を開催しました。当日はファッション、化粧品、食品、総合小売などリテールビジネスに関わる企業がDX推進する際のカギとなる「小売り向けPLM(製品ライフサイクル管理)」をテーマに、セントリックソフトウエア、国内導入企業2社、業界エキスパートによる講演が行われました。セントリックソフトウェアからは、AI技術によるデータに基づいた最適なプレシーズンとインシーズンにおけるMD計画、価格最適化、在庫最適化の意思決定支援、AIによる新たなインスピレーションの創出やイノベーションの加速を支援する最新ソリューションを紹介しました。ここでは、Centric PLM導入の背景と道のり、期待効果を赤裸々に紹介したオンワードホールディングスと急成長を続けるZ世代向けブランドの経営戦略を披露したyutoriのセッション、小売業DXのあるべき姿と小売向けPLMへの期待について熱く語った日本オムニチャネル協会会長鈴木康弘氏によるセッションの様子をフィーチャーします。

PLMを中核に商品企画・生産物流サプライチェーンのデジタル化を実現するオンワードホールディングス

オープニングキーノートにはオンワードホールディングス DX推進室の石川りか氏と釜野涼氏が登壇。「オンワード プロジェクトマネージャーが語る PLM導入の実態」と題し、PLM導入プロジェクトの全社視点の位置づけと導入効果、選定における舞台裏までを語りました。

オンワードグループは2030年に向けた中長期経営ビジョン「ONWARD VISION 2030」を打ち出しており、経営プラットフォームの改革を推進しています。グループとして目指すべき姿を明示し、進化するために必要な環境整備に取り組んでいます。とりわけ顧客中心の経営を重視。「お客様と社員のコミュニケーションを直接的、かつ双方向に進化させ、お客様への提供価値を共創することに主眼を置く。これまでのコミュニケーションは間接的、一方向になりがちで、お客様の求める価値とのギャップが拡大していた」(石川氏)と振り返ります。


写真1:PLMを中核に新たな価値創出を目指すオンワードホールディングス DX推進室の石川りか氏と釜野涼氏

同社では「ONWARD VISION 2030」の実現に向け、グループのプラットフォームの再構築を決定。中核事業会社であるオンワード樫山にてセントリックソフトウェアのPLMソリューションを導入しました。「当社にとってPLM導入は中長期経営ビジョンを成し遂げるための切り札。商品企画や生産、物流プラットフォームを再構築する上での中核ソリューションと位置付けた」(石川氏)と強調します。

オンワード樫山では、従来分断していた商品情報の一元管理を実現し、取引先との協業円滑化を進めるというサプライチェーンのDX推進に取り組んでいます。「2030年までにPLMソリューションを軸に社内はもとより、商社や繊維商社、糸メーカー、生地メーカー、編み工場、裁縫業者、さらには物流、小売業者がデジタルでつながるサプライチェーンの構築を実現する。各社との状況共有やデータ連携を前提としたビジネスモデルを築けるようにする」(釜野氏)と述べます。これまでのサプライチェーンは企画や調達、生産、物流、販売といった各フェーズに関わる取引先の情報は分断しがちで、各社の取り組みが不透明で非効率だったと言います。

同社ではモノづくりに関する情報の一元化を目指し、従来、電話やメールで行っていた発注情報や見積管理におけるノウハウの属人化を解消するため、業務標準化と精度向上への取り組みに着手。商品マスタや取引先マスタはもちろん、原材料の在庫や製品のサンプル情報、企画時の情報、生産の進捗情報、製品の見積もりなど、製品に関わるあらゆる情報を集約。自社グループだけではなく、商社や生地メーカーなどのサプライチェーンを構成する企業と必要な情報を共有し、各社とのやり取りをPLMソリューション上で完結できるようにします。「これまで、進捗は生産管理システム、見積もりは受発注システムなどといった具合に、ユーザは目的別に異なるシステムを使う必要があった。PLMを使うことで無駄を解消でき、製品に関連するデータを探す手間も省ける」(石川氏)といいます。さらに、情報共有や見える化に取り組むことで、モノづくりの業務効率を改善、全社共有の販促計画を立案したり、商社に提案精度を要求したりといった効果も見込める。加えて、仕入れコストの最適化や生産タームの短縮など、さまざまな点で導入効果を期待できる」(釜野氏 )と指摘します。

なおセッションでは、セントリックソフトウェアのPLMソリューションを選定した理由にも触れました。同社では一度の選定では決められず、2回目の選定を実施。開発体制や導入支援体制、コスト、操作性などの項目でPLMソリューションを比較したといいます。中でもセントリックソフトウェアの開発体制と国内導入実績を評価。さらに2回目の選定では、システムを使った入力体験デモを実施したところ、セントリックの操作性が大きく改善しており、操作面で逆転したと言います。「どこで何を入れたらいいのかといった操作の簡便性や、クリックやセルの遷移による入力のしやすさ、レイアウトの見やすさなども評価した。多くの人が関わるシステムゆえ、使いやすさを重視した」(石川氏)と振り返ります。加えて、「現場の使いやすさはもちろん、企画内容を含め多くの情報を可視化したいという経営者の視点、セキュリティや予算を重視するIT部門の視点を併せ持つのがセントリックソフトウェアのPLMソリューションだった。経営層を含む社内関係者のニーズを満たし、スムーズに合意形成を図れた」(石川氏)と続けます。

オンワード樫山では2022年7月にPLM運用フェーズ1を開始。フェーズ1ではCentric PLM機能を8つに分類し、要件定義、画面への実装とまさにアジャイルに導入を進め、既存システムとのAPI連携も並行しました。フェーズ2のプロジェクトはERPシステムを含めた基盤システムとのデータ連携やテストの厳格な管理のもと進行しました。特に社内システムとのAPI連携は苦労したと語ります。2024年6月にはオンワード樫山の全ブランドにおける量産工程を含む全社本番運用を開始、「フェーズ2では、取引先を含め操作を説明するオンライン動画を配信したり、一部の旧システムを同時並行で運用したりし、現場の利便性を損なわないよう配慮した」(釜野氏)と、システム定着のための取り組みにも余念がありません。セッションではUATや実際のテストタイミング、プロジェクトでの駆け引きなど詳細かつビビッドな説明がされ、本稼働を迎えたばかりの導入企業ならではの説明は参加者にとって意義深いセッションとなりました。「システムの引っ越しが無事完了した。これからさらにメリットを享受していく」(石川氏)と今後の計画をチームメンバーとともに進めたいと語ります。

最後に、Centric PLMを検討中の企業へのアドバイスとして、「ユーザー・キーマンを巻き込み一緒に作っていくという道をつくること(逃げ道もなくなります!)」、「取引先との定例ミーティングをもって要望に加えた情報交換の関係づくりが重要でワークフロー作りにも役立つ」、「Centric PLMの特性として使いやすいが故に画面変更も容易なためユーザーの要望に応えたらテストを徹底する必要がある」、「Centric開発コンサル人材は優秀で信頼できる」、「オンラインだけで課題に対応するのは限界があり対面でのミーティングも必要」、「ユーザーが多くなるほど権限設定には注意が必要」、といった率直な意見が語られました。

31ものファッションブランドのビジネスモデルを展開するyutoriの戦略

カンファレンスでは、Z世代向けに複数のブランドを展開し、会社設立後6年目の最年少社長による東京証券市場への上場など、業界での注目を集め続けているyutoriも講演。執行役員の佐藤祐介氏が「急成長を支えるyutoriのヒミツとは?」というテーマで、急成長とブランド展開を加速させる自社の取り組みを紹介しました。

yutoriは現在、31のブランドを展開。D2Cから始まり、今では店舗やポップアップストア、自社ECサイト、ZOZOTOWNの販売チャネルを持ち、創立から7期目を迎えています。「商品企画開発を担う本社を軸に、製造を行う商社やOEMサプライヤ、卸を含み販売を手掛ける各販売チャネルから消費者へお届けするビジネスモデルの一連の流れを一気通貫で管理するためにCentric PLMソリューションを活用する」(佐藤氏)と、Centricソリューションの役割を説明します。yutoriでは、Z世代を中心に複数ブランド毎のポートフォリオを構築し、特定ブランドの売上に依存しない体制構築を進めています。ターゲット層に対する各種指標に基づいた高度なSNSマーケティングを駆使しつつ、熱量の高い自社のファンコミュニティを最重視し、粗利益率・営業利益率ともに右肩上がりを継続しています。同社では創業以来、資本提携や3つのブランドの買収を実施し、対象とする領域選定と最終的なチャネル計画の綿密な分析をベースとした成長戦略を後押しするためにCentric PLMを活用しているといいます。「以前は30ブランドもある中で情報が属人化していたが、今ではCentric PLMにアクセスすれば全員が横串で公正にリアルタイムの情報を入手できるという鉄壁の守りが、会社の熱量を維持するディフェンス力になっている」(佐藤氏)と明言します。

写真2:創業以降の歩みとの同社の成長戦略を説明するyutori 執行役員 佐藤祐介氏

同社の成長戦略の強みの一つに、キャッチーな商品開発からバズったコンテンツを量産し熱狂的な売上を作る、という仕組みの存在があります。90年代ユースカルチャーのリバイバルを得意としたストリートブランド『9090(ナインティナインティ)の成功がその一例であり、UGCの発生とその効果が改めて体現されたといいます。同社では自律分散型ブランド運営を実践し、定量的なブランド管理を徹底しています。Z世代によるZ世代向けブランド運営だからこそ商品の確度と熱量が高まる、という「人材の視点」での成長の要が紹介されました。なお、従業員の平均年齢が23歳と非常に若い同社の中でブランドを取りまとめるプロデューサー職は、商品化から市場投入などさまざまな段階で起きたことを言語化し、型にしていくという「言葉をためて新ブランド創出に役立てること」を重視しています。

今後の成長戦略として、アパレルにおけるターゲット層の拡大、Z世代向け商品カテゴリの拡大、ECと店舗・OMO融合など販売チャネルの強化が挙げられ、Z世代向けの新たな商品カテゴリにはビューティやウィメンズ向けアパレルがあるといいます。ビューティ業界ではアパレルと異なり、より多くの在庫を持つ必要があるためヒット率を高める商品企画の重要性が認識されています。商品企画の全工程進捗管理と情報集約管理を実現するPLMは、同社の攻めと守りにおいて重要性が増していると佐藤氏は語りました。

最後の質疑応答コーナーでは、佐藤氏とセントリックソフトウェア橋永氏の会話において、同社の導入決定までの検討期間は3ヶ月、既存ツールからのデータ変換や社内トレーニング実施を含む本番稼働までの導入期間は合計3ヶ月だったこと、そのうちシステム実装に要した期間は実質5週間であったことが明かされました。

PB商品の企画開発管理は小売DXの最後の砦、トータルなデータ活用とAIに大きな可能性

カンファレンス最後のセッションには、デジタルシフトウェーブ 代表取締役社長で日本オムニチャネル協会 会長を務める鈴木康弘氏が登壇。「変革と成長の交差点-DXで進化する小売業界の成功-」と題し、小売企業がDXを成功させるポイントを紹介しました。

鈴木氏は「DX」というキーワードが広く浸透するものの、多くの日本企業がDXを進められずにいると指摘し、その背景を考察しました。「DXが停滞気味な企業にはいくつかの共通点がある。例えば、経営者はDXを進めたいものの、具体的な方法を知らないケースは少なくない。誰に相談すべきか分からず、DX推進を鼓舞するだけで社内に定着せずに終息してしまう企業は多く、DXを推進する専門部署を新設しても、具体的な戦略に落とし込めないケースも目立つ」といいます。「コンサルティング会社やシステム会社にDX推進を丸投げし、取り組みがブラックボックス化するケースもある。自社の改革を他社任せで進めても、当然結果は伴わない」(鈴木氏)と指摘。さらに、「DXを単なるIT化と捉え、デジタルを活用した変革と考えていないことがDXを停滞させる要因の1つとなっている」(鈴木氏)と続けました。

写真3:人を起点としたDXが成功の要因と訴えるデジタルシフトウェーブ代表取締役社長、日本オムニチャネル協会会長 鈴木康弘氏

今まで日本企業において理解のなかなか進まなかったDXですが、ようやく日本企業のDXへの意識も変わり始めた兆候が見えてきたといいます。では、DX推進を加速させるには何が必要なのか。鈴木氏は「人の意識を変えることに目を向けるべきである」と訴えます。「まずは経営者が意識・行動を変え、時代の変化に追随し、これまでの事業を否定するほどの覚悟を持ちDXをやり抜く姿勢を示すことが大切だ。その姿勢が周囲の意識改革を起こす契機となり、全社一丸でDXに取り組む風土を醸成できるようになる」と強調します。

さらに人材育成の重要性についても指摘します。「多くの経営者は社員の保守的な姿勢に苦慮している。未知の改革に取り組むには、社員のやる気や積極性が成功を後押しする。成功をもたらす人材を育成することに目を向けるのもDXの推進には欠かせない」(鈴木氏)と考察します。

最後に、小売業におけるDX成功のポイントとして、(1)ECでのリアルとネットの融合によるオムニチャネル化、(2)管理系システムの標準化、(3)One to One顧客体験の向上を担うCRM、(4)オンライン・SNS接客、(5)MD・ロジスティックスなどのクラウド化、そして(6)PB(プライベートブランド)商品の製品ライフサイクル管理(PLM)を挙げました。「世界の小売業ではクラウドサービスを活用したDXが急激に進み、最後に残った砦がPB商品のライフサイクル管理である。今は大手であってもエクセルを利用した業務管理をしているのが実態だと思う。Centricを知った直接の理由は、ある国内大手小売のCentric採用のプレスリリースだが、製造業向けPLMではなく小売向けPLMとしてこのような仕組みがあること、世界中の名だたる小売企業での採用実績があることに驚いた。PB商品の企画開発領域がトータルでデジタル化され、前後の業務プロセスと繋がるようになれば、小売業のデジタル活用は技術進歩に伴い着実に進んでいく。トータルにデータを回せるようになると今後はAIの活用に大きな可能性を見込める」とまとめました。

同社では、来る11月14日(木)15時より本カンファレンスのキーメッセージを凝集してお届けする「Centric Connect Osaka 2024」をイノゲート大阪にて開催します。イベント詳細・ご登録は下のバナーをクリックしていただき、ご確認をお願い致します。


セントリックソフトウエア
https://www.centricsoftware.com/ja/

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