慢性疾患を抱える患者の約40%が「高い治療負担」に――東京慈恵会医科大学が開発した10項目のMTBQ日本版が、服薬管理や通院手配など日々の大変さを可視化。医師・政策担当者も「診療改革の必須ツール」と太鼓判を押す革新尺度の全貌に迫ります。
患者の“治療負担”を一瞬で見える化する10項目
東京慈恵会医科大学 臨床疫学研究部の青木拓也准教授らは、多剤服用や通院手配、生活習慣変更など、慢性疾患患者が感じる「治療の大変さ」を定量化する新尺度Multimorbidity Treatment Burden Questionnaire(MTBQ)日本版を完成させました。
MTBQ日本版は以下の10項目から構成され、患者自身が回答することでスコア化が可能。高スコアほど“治療負担が重い”ことを示します。
- 服用する薬の数
- 服薬のタイミングを守る手間
- 薬や医療機器の費用支払い
- 処方薬の受け取り・管理
- 健康状態の自己モニタリング
- 診療予約の取りまとめ
- 複数医療機関の受診調整
- 通院・移動の手配
- 健康情報の収集・理解
- 食事・運動など生活習慣の変更
383名を対象とした調査では、処方薬が3剤以上の患者や通院先が3か所以上の患者で、MTBQスコアが有意に上昇。特に服薬管理の煩雑さが負担感を左右し、高負担群は全体の約38%に及びました。さらに、スコアの高さはQOL(生活の質)低下や主観的健康感の悪化とも相関し、診療計画や患者支援策の設計に直結する結果となっていま。
今後、臨床現場ではMTBQ日本版を用いたスクリーニングで高負担患者を早期発見し、服薬支援や通院サポートなど個別介入を効率化。研究面でも、介入効果の評価指標や社会的要因との関連分析にMTBQが幅広く活用される見込みです。患者と医療者をつなぎ、真に“負担の少ない”治療環境を実現する新たなスタンダードとして、MTBQ日本版の普及が期待されます。
詳しくは「学校法人慈恵大学」まで。
レポート/DXマガジン編集部