日本の基幹産業である自動車産業のサプライチェーンに、今、大きな異変が起きています。帝国データバンクの最新調査で、自動車部品メーカーの倒産件数が「過去10年で最多」を記録したことが判明しました。この危機的状況は、単なる景気低迷ではなく、サプライチェーン全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)の遅れが引き起こす深刻な問題を示唆しています。
2024年度「32件」の倒産が示す危機
株式会社帝国データバンクが2025年6月5日に発表した国内景気動向調査によると、2024年度の自動車部品メーカーの倒産件数が32件に達し、過去10年で最多を記録しました。この背景には、不安定な生産と原材料価格の高騰が挙げられています。
この倒産増加は、一部の大手完成車メーカーの生産調整や原材料価格高騰だけでなく、サプライチェーン全体における情報共有、在庫管理、生産計画の最適化といったDXの遅れが、企業の脆弱性を高めていることを示唆しています。個々の企業がDXを進めても、サプライチェーン全体でデータ連携や自動化が進まなければ、外部環境の変化に耐えられない現実が浮き彫りになっています。
製造業において、サプライチェーンのDXは喫緊の課題です。例えば、生産計画の変動がサプライヤーにリアルタイムで共有されず、過剰な在庫や生産調整の遅れが生じることは、非効率性とコスト増大を招きます。また、原材料価格の変動や供給リスクを早期に察知し、代替調達先を確保するといったリスクマネジメントも、デジタル技術なしには困難です。
今回の倒産増加は、製造業における「つながる工場」や「スマートファクトリー」の重要性を再認識させるものです。IoTセンサーによる生産ラインの可視化、AIによる需要予測、ブロックチェーンを活用したサプライチェーンの透明化など、デジタル技術を駆使してサプライチェーン全体を最適化するDXが、企業の存続と成長に不可欠となっています。
特に、多くの中小企業がサプライヤーとして自動車産業を支えている現状を考えると、中小企業が連携してDXを進めるための支援も重要です。補助金制度の活用や、大手企業による中小企業へのDX支援など、業界全体でデジタル化を推進するエコシステムの構築が求められます。
詳しくは「株式会社帝国データバンク」まで。
レポート/DXマガジン編集部海道