生成AIが環境負荷の新たな主役に──。最新の研究で、AIが2025年末までに世界のデータセンター電力の約半分を占め、ビットコインマイニングの消費量を超える可能性が指摘されました。利便性の裏で進行する「エネルギー爆食」の実態と、私たちが直面する未来とは?
“便利なAI”が気づかぬうちに地球を削る時代
オランダ・フリー大学の研究者アレックス・デ・フリース=ガオ氏によると、AIは2025年末までにデータセンター全体の電力消費のうち最大で50%を占める可能性があるとのことです。これはイギリス全土の年間電力使用量に匹敵する23ギガワット。
背景には、ChatGPTの登場以降、企業が“より大きく、より高性能”なAIモデル開発を競い合う構造があります。処理精度は向上しても、モデルの巨大化により消費電力も加速的に増大。実際、GoogleやMicrosoftはAI開発の進展とともに温室効果ガスの排出量も年々増加させています。
ところが、多くの企業はAIに関連するエネルギー使用の詳細を公表しておらず、正確な排出量は不明。デ・フリース氏は、TSMCなど半導体メーカーの出荷量や企業の決算資料をもとに、AI用チップの電力消費を推計する「トライアングル法」で分析しました。
さらに、AIが利用される場所によっても環境負荷は大きく異なります。たとえば、西バージニアのデータセンターではカリフォルニアの約2倍のCO₂排出が発生するという事例も。地理的要因やエネルギー源の違いが、利用者の意図に関係なく環境負荷を左右しているのです。
仮想通貨の世界では、イーサリアムが方式転換により99.988%の電力削減を達成しましたが、AI産業にはまだそのような省エネ転換の兆しは見えません。むしろ「使いやすさ」や「商用化」が先行し、電力という代償は見過ごされがちです。
未来のAIは、進化の代償として“エネルギーを食いつぶす存在”になるのか。企業の透明性と省エネ開発への本気度が、今後の分かれ道となりそうです。
詳しくは「フリー大学」の公式ページまで。
レポート/DXマガジン編集部 海道