デジタルシフトウェーブは2025年6月4日、定例のセミナーを開催しました。今回のテーマは「大手コンサル卒業宣言! 企業成長を加速させる真のパートナーの選び方」。Groovement 代表取締役の浴野真志氏と取締役の高倉諒一氏をゲストに迎え、コンサルティング業界の現状と真のパートナーとなるコンサルティング会社の選び方について議論しました。
コンサルを使いこなすノウハウや知識がクライアントに必要
セミナー前半は、Groovementの事業内容やコンサルティング業界の歴史を解説。登壇した浴野氏、高倉氏の経歴も紹介されました。浴野氏は新卒でセイコーエプソンに入社したのち、デロイトトーマツコンサルティング、ブティック系の戦略コンサルティングファームであるフィールドマネジメントを経て、Groovementを創業。メーカーに入社したものの、より負荷をかけられる環境としてコンサルティング業界に転身したといいます。現在はGroovementで、フリーランスのコンサルタントと企業をマッチングするサービスを使ったビジネスを展開します。

高倉氏は新卒でデロイトトーマツコンサルティングに入社し、浴野氏と同期だったといいます。その後、野村総合研究所に転職し、消費財、人材、メディアといった多様な領域で戦略から実行支援、リサーチまで幅広い業務に従事しました。コンサルタントとしてだけでなく、新卒や中途採用者向けの研修プログラムの作成や実施にも携わったそうです。現在はGroovementの取締役として、主にコンサルティング事業と法人向けのコンサルタントスキル研修サービス「Pro Essence(プロエッセンス)」を統括します。

セミナーでは、両氏がコンサルティングに対する考えにも言及しました。浴野氏は、大手コンサルティングファームで学んだことについて触れ、「クライアントへのトップイシューへの挑戦機会、徹底したクライアントファーストのマインドセット、優秀な方々を模範とした当たり前の基準の高まりの3点を育むことができた。この経験が自己成長を後押しした」と、大手コンサルティングファームで働くメリットを述べました。その一方で、「働く中でコンサルティング業界の課題も見えるようになった」(浴野氏)といいます。具体的には、未経験者を中心とした大量採用による質の低下、コンサルティングファーム側の都合による「大きい案件を長く継続せよ」という営業・デリバリーの圧力、クライアントのコンサル依存と、コンサルタントによる雑用的な業務遂行による、費用対効果の乖離の3点を考えるようになったといいます。特に、コンサルタントが高額な費用に見合わない雑務をこなし、クライアントがコンサル抜きでは業務が回らない状況に陥ることで、「何のためにコンサルを頼んでいたのか分からなくなる」(浴野氏)という状態に気持ち悪さを感じたといいます。こうした経験から大手コンサルティングファームを卒業するに至ったと述べました。
高倉氏はコンサルティング業界の現在のビジネスモデルについて、「誤解を恐れずに言えば、第三者の支援が常に必要な状態にクライアントを置き続けることでフィーをもらうという側面がある」と指摘。そこでGroovementでは、「コンサルタントを使う企業側にコンサルタントの使い方をきちんと理解してほしいという啓蒙活動を重視する」といい、この思いを体現するサービスを提供できるようにするといいます。
Groovementが提供する支援サービスも紹介しました。経営コンサルタントを紹介するサービス「Strategy Consultant Bank」は、これまでのサービス同様に「身近な変革パートナー」として存在しつつも、「誰が、どんな経験を積んできたのかをオープンにする」という透明性を重視するといいます。さらに、「利用しやすい妥当なフィー設定」を心掛け、費用対効果が納得できる形でサービスを利用してもらうことを目指します。「大手のコンサルティングファームの中には、月何百万円以下はダメなどの制約を設けるケースが多い。しかし当社は短期間、極論すれば1日だけでもといった柔軟な支援を可能にする」(浴野氏)と差異化点を強調します。コンサルティング業界が大手によるサービスだけではなく、より小回りの利くサービスと共存すべきと同氏は訴えました。
一方、経営コンサルティングサービス「Groovement Consulting」は、コンサルティングを依頼する企業側が「このコンサルタントがいい」と選べなかった「ブラックボックス」を解消できるのが強みです。約1500名のフリーランスコンサルタントが登録し、企業側が望ましい人材を選べるのが特徴です。なお、登録するコンサルタントの多くが大手コンサルティングファーム出身者や独立した事業会社出身者で構成しています。
コンサルタントの研修サービス「Pro Essence(プロエッセンス)」は事業会社向けのサービスで、コンサルタントのスキルを短期間で習得してもらうようにします。これにより、外部のコンサルティングファームに頼ることなく、課題解決に向けた取り組みを自走できるようにします。「コンサルティング会社の新卒が2ヵ月で戦力となるようなスピード感で成長する研修のノウハウを事業会社に還元する。外部コンサルティングファームに頼らなくても自社で課題解決ができる世界観を目指す」(浴野氏)といいます。
3氏による座談会、コンサルティングの「疑問」に斬り込む
セミナー後半はモデレータを務める鈴木氏と、浴野氏、高倉氏による対談を実施。大手コンサルティングファームとブティックファームの対立をテーマに、コンサルティング業界の疑問について浴野氏と高倉氏がコメントしました。
鈴木氏は「大手コンサルティングファームで勤務し、疲弊した人が自ら起業するケースが多い」と指摘。大手出身者が起業するブティックファームが数多く登場している現状を考察しました。これに対して浴野氏は、「私の同期で今もコンサルティングファームに残り続けているのは1割程度にとどまる。多くは事業会社に転職したり、スタートアップを立ち上げたりしている。医師や弁護士などのまったく違う道に進む人も少なくない」と述べました。

一方、コンサルティング業界の「2兆円」という市場規模について鈴木氏は、「本来なら事業会社が自ら取り組むべき業務がそれだけあるということを物語っている」と指摘します。浴野氏はコンサルティング業界の市場について、「構造の問題が潜む」と考察。東京大学や京都大学といった難関大学の就職人気ランキングの上位にコンサルティングファームが多数ランクインしている現状を挙げ、「優秀な方の志向がコンサルティング業界に傾いている以上、事業会社はなお一層、コンサルティング会社に頼らざるを得ない状況に追い込まれている。優秀な方の知恵を借りたいという構造ができあがっているのが市場を形成する背景にある」(浴野氏)と述べました。
コンサルティングを使いこなせない企業側の姿勢についても意見が出ました。高倉氏は、「クライアントに対し、支援するメンバーや体制をできるだけブラックボックスしてきたことがコンサルティング業界を成長させたと言える。事業会社は『そういうものだよね』と結論づけ、発注していた」と、企業側が納得しているかどうかを問わずビジネスが成り立っていたと指摘します。企業側から「この人がいい」「この新人は外して」などと意見されるのは「極めてレアケース」(高倉氏)だったといいます。コンサルティング費用についても、「見積もりの明細を事業会社が正しく精査しないことが不透明さを助長する。金額の意図を説明してもらうことがコンサルティング会社を効果的に活用する方法の1つである」(高倉氏)と述べました。
自社にとっての真のパートナーをどう選ぶのかも議論しました。高倉氏は、「相性や姿勢を見極めることが大切」と強調します。専門的な知見やノウハウを持つコンサルタントも「一方ではサラリーマンに過ぎない。それなりの取り組みで給料をもらえると割り切るコンサルタントがいるのが事実。クライアントのことを真剣に考え、変革を促さなければ自分の給料さえままならないと考える小規模なコンサルティングファームのコンサルタントの方が、大手のコンサルタントよりクライアントに寄り添う姿勢は強い」(高倉氏)と考察しました。
小規模なブティックファームを活用する具体的な方法についても、浴野氏と高倉氏が言及しました。浴野氏は「コンサルティング会社に対し、予算100万円しかないけど何ができるかと相談するとよい。コンサルティング会社の担当者がどのくらいの覚悟を持って支援しようとしているのかを見極める参考になる。100万円では難しいと断ってきても、再提案するコンサルティングファームは真のパートナーに値するのではないか」と述べました。
一方、高倉氏は「100万円を50万円に分け、2社に発注して競わせるのも手だ」と、真のパートナー選びに言及します。「 1ヵ月のお試し期間で両社のアウトプットの質を精査する。自社との相性やモチベーションを見極める上でも有効だ」(高倉氏)と述べました。
鈴木氏は、「コンサルタントを自社の仲間のように引き込み、ゴールに向けて一緒に進むことが大切である」と述べました。「社会を変えるプロジェクトなどに参画してもらえば、そのプロジェクトに携わった自負を引き出せる。その気持ちがよいアウトプットを導く」(鈴木氏)と、コンサルタントのモチベーションアップを促すことが真のパートナーに昇格させるという考えを述べました。
セミナーの最後、高倉氏はコンサルティング業界を総括。「コンサルティング業界は時に、何やってんだ、ぼったくっているなどとネガティブに捉えられやすい。だからこそ透明性を高め、より身近に感じてもらう業界に進化させる努力を怠ってはならない」と、コンサルティング業界に身を置く当事者としての決意を述べました。
浴野氏は、フリーランスのコンサルタントを活用するという社会インフラを構築したいと強調。「Groovementの活動を対外的に発信し続け、当社の取り組みを理解してもらうことが大切。多くの企業から応援してもらえるような存在を目指したい」(浴野氏)と述べました。
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株式会社Groovement
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