明治大学商学部の加藤拓巳准教授と日本電気株式会社(NEC)の共同研究成果が、日本感性工学会で優秀発表賞を受賞したことが発表されました。この研究は、都市設計や政策における「サイレントマジョリティ」の意見を可視化し、少数派の意見だけでなく、多数派の声をも反映させる重要性を証明するものです。具体的には、子どもの声が「騒音」ではなく「魅力」であることを実証し、都市政策の決定における偏りを防ぐための重要な一歩を踏み出しました。
研究では、都市設計や政策の場でしばしば反映されがちな少数派(ノイジーマイノリティ)の意見が、都市の風情や活気を失わせるリスクがあることを指摘しています。具体的な例として、近隣住民の苦情により、公園の廃止や保育園新設の中止、さらには除夜の鐘を中止する寺院の事例が挙げられました。このように、一部の強い苦情が反映されることで、社会全体の多様な意見が無視されてしまうことが懸念されています。
加藤准教授の研究では、公園を対象に電車の音、鐘の音、子どもの声が魅力、訪問意向、街の居住意向に与える影響を比較検証しました。その結果、いずれの指標においても、電車の音よりも鐘の音や子どもの声が高い評価を得たことが明らかとなり、子どもの声が必ずしも「騒音」ではなく、むしろ都市の魅力や活気を生む要素であることを示しました。


さらに、研究では、性別や年齢による評価の違いも分析しました。特に45歳以上の男性が鐘の音や子どもの声を好意的に評価しており、20-44歳の女性は逆に低評価を下す傾向が見られました。この背景には、日本社会における育児とキャリアの両立の難しさが影響している可能性が指摘されています。

この研究結果は、都市政策においてサイレントマジョリティの意見を無視してノイジーマイノリティの意見だけを反映させることが、都市全体の評価と乖離するリスクがあることを警鐘しています。また、低い評価を受けた政策については、その発信元や理由を詳細に分析し、適切な対処を行うことが重要であると提言されています。
この研究は都市設計や政策、さらには社会全体の意識改革に対して大きな示唆を与えるものとして、今後の議論において重要な指針となるでしょう。
レポート/DXマガジン編集部折川