starthome-logo 無料ゲーム
starthome-logo

地域特化型のスーパーマーケットが勝ち抜く秘策を成功事例から学ぶ【オムニチャネルDay2025レポート】


日本オムニチャネル協会は「オムニチャネルDay」で、地方リテールの成長戦略において、プライベートブランド(PB)の強化とネットスーパーの役割を議論しました。いちやまマートの辻氏は、PBの差異化戦略が競争力を高める鍵と強調。「美味安心」ブランドの商品で品質を重視する姿勢を紹介しました。一方、スーパーサンシの高倉氏は、ネットスーパーの売上が同社全体の50%以上を占めていることから、ネットを基盤とした成長戦略を描きました。彼は月商1000万円の達成がネットスーパー成功の基盤と説明し、効率的な物流と地域インフラとしての役割を強調しました。両社の戦略は、地方の小規模スーパーマーケットが大手と差別化するための新たなモデルとして注目されています。

日本オムニチャネル協会は2025年2月28日、年次カンファレンス「オムニチャネルDay」を開催しました。ここでは、いちやまマート 取締役 社長室 室長の辻隆元氏とスーパーサンシ 専務取締役 NetMarket事業本部長の高倉照和氏、モデレータの日本オムニチャネル協会 Nextリテール分科会リーダーの郡司昇氏が登壇したセッションの様子を紹介します。「地方リテールが考える成長戦略とは?」というテーマで、ネットスーパーの可能性を考察するとともに、いちやまマートとスーパーサンシの具体的な取り組みを紹介しました。

地方スーパーマーケットの現状と課題

セッションではまず、郡司氏が日本のスーパーマーケット業界全体の現状と地方リテールの特徴を改めて紹介。日本全国には約2万3000店舗のスーパーマーケットが存在し、そのうち約65%が10店舗未満という零細規模で運営されているという事実に触れました。とりわけ地方では規模が小さい店舗が多く、価格競争で大手チェーンに対抗するのが難しい点を指摘。その中で競争力を保つためには、商品構成とビジネスモデルで差異化を図らなければならないといった現状を解説しました。

写真:日本オムニチャネル協会 Nextリテール分科会リーダー 郡司昇氏

その上で郡司氏は、プライベートブランド(PB)の重要性を強調します。「日本のスーパーではPB商品が全体の売上の約10%であるのに対し、アメリカの食品小売業におけるPB商品は24%を占める。海外と比べてPB商品の割合が低いのが日本の現状である」(郡司氏)と考察。PB商品は他店と差異化を図る手段の1つとして有効な戦略である点を強調しました。

さらに郡司氏は、「アメリカのトレーダージョーズやアルディなどの成功事例に学び、日本でもPB商品を強化することが成長に繋がる」と指摘。独自性を打ち出すPB商品を企画、開発する体制づくりの必要性にも言及しました。加えてネットスーパーの可能性にも触れ、「日本の場合、現在のネットスーパーの売上は全体の1.5%程度にとどまる。しかし、将来的にはさらなる成長が期待される」と、ネットスーパーに軸足を置いた成長戦略を描くべきと訴えました。一方ネットスーパーは安易に着手をしても変動比率が高く儲かりにくいので、黒字化するためにはよく考える必要があると訴えました。

いちやまマートのプライベートブランド強化と地域密着型戦略

いちやまマートの辻氏は、自社の成長戦略としてプライベートブランド(PB)の強化に注力していることを紹介。山梨県を中心に約250店舗を展開するいちやまマートは年商250億円規模のスーパーマーケット。辻氏は自社の現状について、「規模が小さいことから価格競争で勝つのは難しいと感じていた。そこで独自のPB戦略を打ち出し、他の大手スーパーマーケットとは一線を画す形で競争力を高めることに主眼を置いている」(辻氏)と、PBを駆使した差異化戦略の重要性を訴えました。

写真:いちやまマート 取締役 社長室 室長 辻隆元氏

その中核に位置づくPBブランドが「美味安心」です。このPBは2008年から本格的に展開を開始。「美味安心は、おいしさ、健康、安心、安全をテーマにした商品づくりに重視する。特に添加物不使用の商品開発に注力している」(辻氏)と、価格以外の価値創出に力を入れているといいます。

「美味安心」の商品開発は「美味しさ」をまずは最優先に考慮し、その後に価格を決定する独自のアプローチを採用します。このアプローチにより、「美味安心の商品は他の商品と比較して高価格帯に設定されることが多い。しかし、品質と味に対する信頼が消費者に支持されている。無添加商品を手頃な価格で提供できるよう配慮している」(辻氏)と強調。具体例として、「美味安心の『秘伝蔵』という味噌は、半年以上の熟成を経て深い旨みが引き出している。他の味噌に比べて高価格だが、それでも消費者から求められる人気商品となっている」(辻氏)といいます。大手との価格競争に臨むのではなく、独自の強みや価値を創出することの大切さを聴衆に訴えました。なお、いちやまマートでは「付加価値型」のPBを展開し、価格競争に巻き込まれないような商品開発に注力しているといいます。「付加価値型の商品は、品質や安全性を重視し、消費者にとって新たな価値を提供することに主眼を置いている。この商品を展開することで、競合店との差異化に成功している」(辻氏)と、PB商品開発による効果を訴えます。

なお、いちやまマートでは販促活動も工夫を凝らしているといいます。特に「カテゴリークーポン」や「ポイント制度」を利用したリピート購入の促進に注力。消費者が実際に商品を試し、その後リピート購入する仕組みを構築することで、PB商品の販売を拡大させています。試食会なども積極的に開催し、消費者との接点も創出。PB商品の認知や普及に向けた販促施策の取り組みにも余念がありません。

スーパーサンシのOMO戦略とネットスーパーの成長

スーパーサンシの高倉氏は、ネットスーパーを成長させるための戦略について説明。スーパーサンシでは1970年代から宅配サービスを開始。1997年には日本で初めてネットスーパーを導入するなど、小売業界のネットビジネスを先行する取り組みを次々打ち出しています。ネットスーパーの売上は全体の50%以上に達しているといいます。成功の秘訣について高倉氏は、「ネットスーパー成功させるには、月商1000万円もしくは売上の5%を早期に達成することがカギだ」と語りました。

写真:スーパーサンシ 専務取締役 NetMarket事業本部長 高倉照和氏

高倉氏は、ネットスーパーの成功には売上の加速が不可欠と強調します。特に「月商1000万円」を目標にすることで、ネットスーパーが順調に成長すると述べました。「売上目標の達成がネットスーパーの基盤を築く。この基盤が後の成長を大きく加速させる」(高倉氏)と断言します。ネットスーパーの場合、実店舗の限られたスペースにとどまらない商品を提供できるのが強みで、高倉氏は地域やエリアの特性を問わないビジネスを打ち出せるネットスーパーの可能性を模索すべきと聴衆に訴えました。そのためには物流の効率性を高めるなど、ネットスーパーを前提とした体制確立の必要性も指摘しました。

高倉氏は、ネットスーパーの強みについて「配送効率の良さ」や「商品数の多さ」を指摘。特に地方では「ネットスーパーが地域のインフラになる」(高倉氏)とし、地域の消費者にとって必要不可欠な役割を果たすべきと訴えました。一方、サブスクリプションモデルを導入し、消費者の購入習慣を作り出すことの重要性にも言及。「サブスクによって消費者の購入意欲を高め、安定した売上を確保できるようにするのも一案だ。競争が激化する小売業界だからこその重要な差異化要因になり得る。安定した売上確保に向けた施策立案にも目を向けるべきだ」(高倉氏)と述べました。

写真:辻氏と高倉氏とも自社の具体的な取り組み事例を詳しく解説した

関連リンク
日本オムニチャネル協会

    Loading...
    アクセスランキング
    game_banner
    Starthome

    StartHomeカテゴリー

    Copyright 2025
    ©KINGSOFT JAPAN INC. ALL RIGHTS RESERVED.