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企業連携による持続可能な物流網の確立が不可欠、2025年は業界全体の競争力強化が求められることに


日本オムニチャネル協会は、2025年2月に「2024年問題」をテーマに物流業界を振り返るセミナーを開催しました。この問題は、トラックドライバーの労働時間規制により輸送能力が低下する懸念を指します。セミナーでは、2024年以降の現状を分析し、ITやDXによる変革の可能性を議論しました。物流業界は多くの課題に直面しており、高齢化する労働力、低賃金、そして複雑な多重下請け構造が依然として問題です。参加者は、デジタル化や効率向上策を模索し、競争力を維持するためには柔軟なアプローチが必要であると認識しました。また、外国人ドライバーの受け入れや自動運転技術の導入も議論されました。

日本オムニチャネル協会は2025年2月19日、定例のセミナーを開催しました。今回のテーマは「ロジスティックス分科会 どうなった2024年問題!?」。同協会で物流をテーマに活動するロジスティックス分科会が、物流業界で取り沙汰された「2024年問題」を振り返りました。2025年の動向を踏まえて、これからの物流も考察しました。

トラックドライバーの労働時間を規制することに端を発した「2024年問題」。ドライバーの労働時間短縮による輸送能力低下が、日本の物流網に大きな影響を与えると懸念されました。

では2024年を終えた今、「2024年問題」は物流業界にどれほどの影響を与えたのか。輸送能力はどれだけ低下したのか。さらには、物流事業者は人手不足をどんな手段で解消しようとしたのか。

今回のセミナーでは、ローランド・ベルガー パートナーの小野塚征志氏、ロジスティックス分科会のリーダーで、LiNKTHの代表 小橋重信氏がゲストとして登壇。物流業界の「2024年問題」を振り返りました。さらに、2025年以降の物流業界を考察。ITやDXによって既存の物流網を変革する最新のトレンドについても解説しました。

2024年問題の背景と現状

セミナーでは、物流業界に長らく蔓延してきた労働環境の厳しさが、2024年から一層問題視されるようになった背景が語られました。従来、トラック運送業界では「働き方改革」の一環として労働時間の規制が導入される前は、長時間労働や残業によって一定の収入が確保できるという面もあり、実質的な労働環境の改善がなかなか進まなかった現状がありました。しかし、規制強化に伴い、ドライバー不足が加速し、各物流会社の売上や利益に影響が出始めたといいます。実際、アンケート調査などにより、待機時間や運転以外の業務の非効率さが指摘され、現場では「14.2%の輸送能力不足」や、2030年にはそれが「34.1%」にまで拡大するとの試算が示されるなど、今後物が運べなくなるリスクが現実味を帯びてきています。

ローランド・ベルガー パートナー 小野塚征志氏

また、物流業界は運送会社の数がかつての規制緩和によって増加し、現在は6万社を超えるといった状況にあります。多くの小規模事業者が参入する一方で、業界全体の効率性や労働環境の改善が進まないことから、運賃の低さや長時間労働、さらには多重下請け構造による管理の複雑さといった課題が浮き彫りになっています。セミナー内では、こうした現状を背景に、物流業界が「単なるコストセンター」として扱われがちな点や、現場のデジタル化が遅れている現実についても言及され、従来のアナログな運用方法が大きな障壁となっていることが強調されました。

物流業界の課題と今後の展望

議論の中で、物流業界が抱える課題は多岐にわたっていることが改めて示されました。たとえば、運転者不足の問題は、残業規制の影響を受けることでさらに深刻化しており、ドライバーの賃金水準も業界平均より低いという現実があります。こうした労働環境の悪化が、企業間の競争力に大きな影響を及ぼしているとともに、荷主側が支払う運賃に転嫁され、最終的には物流コストの高騰を招いています。また、従来の長距離輸送における「サガドリーム」といった成功モデルが崩れ、競争激化の中で生き残るためには、単に運賃交渉に頼るのではなく、運送効率の向上や運転者一人当たりの輸送量の増加といった業務改善策が求められる状況です。

LiNKTH 代表 小橋重信氏

一方、企業努力や国の施策として、外国人ドライバーの受け入れや自動運転技術の導入、さらには共同配送やダブル連結の活用など、業界再編やイノベーションの試みが進められています。これにより、従来のアナログな取引方法や多重下請け構造を見直し、透明性を高めることで、効率的な物流ネットワークの構築が期待されています。たとえば、パレットサイズの標準化や、デジタルツールによる待機時間の短縮、さらには物流データの見える化が進めば、トラック一台あたりの積載率が向上し、結果として運送会社の収益改善にもつながるとの見方が示されました。

また、地域密着型の物流モデルの重要性も議論され、特に過疎地域におけるラストワンマイル問題や、コミュニティバスのような仕組みを活用した新たな配送形態の試みが紹介されました。これにより、単に物を運ぶだけでなく、地域の住民が互いに助け合いながら物流サービスを支える仕組みが構築されれば、地域全体の経済活性化にも寄与する可能性があると指摘されました。大手荷主や歴史ある取引関係の中で、運賃交渉だけでなく、双方がWin–Winとなる協力体制を築くことが、今後の物流業界の持続的成長に不可欠であると強調されました。

DXの可能性と新たなビジネスモデル

セミナーでは、物流業界におけるDXの必要性と、その具体的な取り組みについても多角的に議論されました。現状、物流業界はファックスやアナログな電話連絡といった旧態依然とした手法に依存している部分が大きく、これが業務の非効率化を招いていると同時に、透明性の欠如にもつながっています。対照的に、個人向けの配車アプリやタクシーのデジタル化が進む中で、物流現場においても同様の技術革新が求められています。具体的には、スマートフォンやAPIを活用して、運送ルートの最適化、待機時間の短縮、さらには運行情報のリアルタイム共有を実現することで、業務効率の大幅な向上が期待されるといいます。

モデレータを務めた日本オムニチャネル協会 理事 逸見光次郎氏

また、データ入力や商品情報のデジタル化といった基本的な業務プロセスの見直しも、DX推進の重要なテーマとして挙げられました。従来、営業部門や管理部門が手作業で行っていた情報入力作業は、今後AIや自動化ツールを活用することで、精度と効率が飛躍的に向上する可能性があります。これにより、物流業界全体の透明性が高まり、最適な積載計画や需要予測が実現されることで、運賃や労働環境の改善につながると考えられています。さらに、将来的には、量子コンピューターを利用した複雑な組み合わせ最適化など、最先端技術を活用した新たなビジネスモデルの創出も視野に入れた議論が交わされ、物流が単なる物理的な輸送手段から、デジタルデータを駆使した戦略的なサプライチェーン全体の最適化へと進化する可能性が示唆されました。

全体として本セミナーは、物流業界が抱える深刻な課題と、それに対してどのように企業努力や技術革新、国の施策が連携しながら解決策を模索していくべきかを、具体的な事例や数字を交えて議論する貴重な機会となりました。参加者は、従来の慣習にとらわれず、物流の未来を見据えた柔軟なアプローチが今後の競争優位性を決定づけると認識し、変革の波に乗るためのヒントを多く得たといえるでしょう。今後は、2024年問題を皮切りに、物流現場のDXや業務効率化を積極的に推進する企業が、業界全体の再編と成長を牽引していくことが期待されます。


関連リンク
日本オムニチャネル協会
https://omniassociation.com/

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