企業のシステム開発やDX推進を支援するオフショアカンパニー。ベクトルグループの一員として、動画の活用を支援するプロダクト開発も手掛けます。2024年10月には、動画の内容を外国語に翻訳する新サービス「AI動画翻訳くん」を投入。企業のグローバルビジネスの支援に乗り出します。新サービスを開発するに至った経緯と新サービスの強みについて、同社 代表取締役の野呂健太氏に話を聞きました。
ベクトルグループの広める力を、AI Tech領域から支える存在に
――野呂さんが代表を務めるオフショアカンパニーの事業内容を教えてください。
野呂:当社はベクトルグループの一員として、システム開発の民主化の実現を目指して立ち上げた企業です。日本企業のデジタル化が叫ばれて久しくなりますが、今なお「道半ば」という状態の企業は少なくありません。そこで当社は、企業の根幹でもあるデジタル化という本質的な課題に向き合う存在として生まれました。
――野呂さんがベクトルグループに参画した経緯を教えてください。
野呂:私がベクトルグループに参画したのは2024年2月です。これまではNTTドコモや損害保険ジャパン、さらにはデジタルホールディングス傘下のグループ企業の代表を務め、DX推進や新規サービスの立ち上げを担当してきています。そんな中、ベクトルグループから声をかけていただき、ベクトルグループのCTOと、オフショアカンパニーの代表取締役を兼務する形で参画することになりました。
――ベクトルグループのCTOとして、具体的にどんなミッションに挑んでいるのでしょうか。
野呂:CTOとして私が最初に取り組んだのは、サーバー費用の削減です。着任後、約1ヵ月かけて集中的に取り組み、年間4000万~5000万円程度のコスト削減に成功しました。ちなみに削減したコストを営業利益に貢献とみなした場合の売上に換算すると、5億円を売り上げるのと同等のインパクトがあります。
――日本企業を見ると、はCTOというポジションが十分定着していないように感じます。
野呂:その通りです。ある調査では、CTOを設置する企業の割合は20%を下回っていました。売上高1兆円規模の企業でも35%程度とのこと。CTOという要職が日本企業に少ないのは、いわゆる「IT人材」が不足していることが背景にはあると考えます。
――CTOはテクノロジーだけではなく、経営的な視点も求められる?
野呂:はい。多くのCTOは役割上、最新のシステムやテクノロジーの動向に主眼を置きがちです。一方、経営層とコミュニケーションを円滑に図れないという話をよく聞きます。ITを駆使して事業を加速させるには、単に技術的な視点を持ち合わせるだけではなく、自社の事業やビジネスとITをどう結び付けるか、どう利益を生み出すかといったアイデアを創出する役割こそが求められると考えます。
――ベクトルグループは野呂さんに経営的な視点を踏まえた役割を求めているわけですね。
野呂:ベクトルグループはこれまで、PR企業として世の中に情報を届ける事業を生業としてきました。近年は広告会社とビジネスモデルが近しくなり、競合するケースも増えています。グループを取り巻く環境が変わる中、私自身がビジネス思考のCTOとして、クライアント企業のビジネス創出を支援できればと考えます。社内外の垣根を越えてプロダクトを迅速に展開できるような体制づくりを推進することが、中長期にわたって利益を生み出す企業体質になると考えます。
AI技術で言語の壁を越える「AI動画翻訳くん」の誕生
――オフショアカンパニーが市場投入したサービス「AI動画翻訳くん」についてお聞きします。オフショアカンパニーにとっては第一弾となるプロダクトとのこと。具体的にどんなサービスなのか教えてください。
野呂:「AI 動画翻訳くん」は多言語対応の動画音声翻訳サービスです。動画内の話者の声の特徴を完全に保持したまま、50カ国以上の言語に翻訳します。従来の字幕や吹き替えとは一線を画し、話者本人が外国語を流暢に話しているかのような、自然な多言語コンテンツの生成が可能となります。世界最高水準の翻訳精度95%超という高精度な翻訳技術を用いているのが最大の特徴です。
――なぜサービスを開発するに至ったのか。経緯を教えてください。
野呂:開発背景には、動画AIの可能性を探るという側面があります。ベクトルグループでは「ベンチャーTV」や「IRTV」「JOBTV」といった動画を活用したソリューションを提供しています。グループで培ってきた強みとAIを掛け合わせることで、面白いものが作れるのではないかと考えたのがきっかけです。
一方、市場に目を向けると、海外展開したいが言語の壁を理由に進められないという企業の声をよく聞きます。優れたサービスを開発しても、言語を理由に海外展開できないのはもったいないですよね。こうした課題を解決する手段を模索する中で着想したのが「AI動画翻訳くん」なのです。
「AI動画翻訳くん」を使えば、誰でも自分の言葉を他言語に翻訳できる環境を構築できます。世界の人とコミュニケーションを円滑に図れるようにもなります。「AI動画翻訳くん」が顧客のビジネスを世界展開させる一助になればと考えます。
精度の高さと自然な仕上がりが特徴
――「AI動画翻訳くん」の特徴を教えてください。
野呂:「AI動画翻訳くん」は、翻訳の精度が95%超という高精度が売りです。類似する競合サービスにはない革新的な機能だと自負します。
「AI動画翻訳くん」では、各言語に対応する業界用語のデータベースを読み込ませています。さらに「HeyGen」などの翻訳サービスではなく、独自のAIエンジンを構築。これにより、自然で高精度な翻訳を可能にしています。さらに、各言語に精通するメンバーを揃えることで翻訳の質にも配慮します。具体的には日本語、英語、中国語はもちろん、韓国語、ドイツ語、フランス語にも対応できる日本人スタッフを配置。50か国語以上の言語を高精度に翻訳する体制づくりにも余念がありません。
一方、従来の翻訳サービスは機械的な声だったり、そもそも翻訳できていなかったりするケースが少なくありません。これに対し「AI動画翻訳くん」は、ユーザー自身の声の特徴を維持したまま翻訳する機能を備えます。まるで自分が外国語を流暢に話しているかのような自然な発言が可能となります。
――サービスの開発過程で工夫した点はありますか。
野呂:開発時もっとも重視したのは、ユーザーが簡単に使えるシンプルさです。高度な技術を使っていても、それが一部の人にしか使えないものなら意味がありません。そこで当社は、複雑な技術をいかに広く一般の方々に使っていただけるかに注力しました。
具体的には、動画を指定のURLにアップロードするだけで使えるようにしました。シンプルなユーザーインターフェースを用意するといった従来の考え方をすべて払拭したのです。アップロードから最短2日で翻訳された動画が自動生成されます。ユーザーがあれこれ手を動かすといった作業は必要ありません。
――「AI動画翻訳くん」の具体的な利用シーンを教えてください。
野呂:「AI動画翻訳くん」はさまざまなシーンでの活用を見込めます。例えば外国人向けの観光動画の制作です。日本の魅力を海外に発信する際、さまざまな言語に翻訳して動画を配信できるようになります。
企業のグローバル戦略の一環として使用するケースもあります。特に2025年4月から、東証プライム上場企業は決算情報や適時開示情報について、日本語と英語の同時開示が義務化されることになっています。こうしたニーズを容易に満たす手段として「AI動画翻訳くん」の利用が見込まれます。
教育分野では、オンライン学習教材、企業の外国人向け研修資料の多言語化などにも役立ちます。もちろんエンターテイメント業界では、YouTubeの最新コンテンツの海外向けに発信する用途でも使えます。医療業界では、治療内容を患者さんの母国語で分かりやすく伝える手段として役立つのではと考えます。
オフショアカンパニーが目指す今後の展望
――オフショアカンパニーとして今後の計画や目標があれば教えてください。
野呂:新たな動画関連サービスを現在構想しています。現時点で詳細は伝えられませんが、「AI動画翻訳くん」同様にAIを駆使した面白いサービスを提供できればと考えます。2024年中には発表する予定ですので、楽しみにしていただければ幸いです。
――「AI動画翻訳くん」の利用を検討する企業に向けてメッセージをいただけますか。
野呂:「AI動画翻訳くん」を通じて、さまざまな可能性を広げていただければと考えます。特にスタートアップ企業や中小、中堅企業の方々が、海外展開を加速させるきっかけになれば幸いです。逆に、海外の優れたサービスを日本に紹介するツールとしても活用できると考えます。「AI動画翻訳くん」がグローバルビジネスをもたらす懸け橋になることを期待します。
「AI動画翻訳くん」が皆さまの事業を支援し、日々の生活やビジネスで活用していただけることが何よりの喜びと考えます。言語の壁を越えて、より多くの人々がつながり、新たな価値を生み出す――。そんな未来の実現に少しでも貢献できればと思います。
【関連リンク】
株式会社オフショアカンパニー
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