デジタルシフトウェーブは2024年9月4日、定例のDX経営セミナーを開催しました。今回のテーマは「ネットスーパー超成功方程式～なぜ大手でもほとんど赤字のネットスーパーをサンシは黒字化できたのか～」。三重県鈴鹿市に拠点を構えるスーパーマーケット「スーパーサンシ」のネットスーパー事業成功の秘訣に迫りました。
地域に根付いた事業を展開するスーパーマーケット。しかし今、さらなる売上拡大を図るべく、新たな事業としてネットスーパーの展開を検討する事業者が増えています。配送サービスや移動スーパー、ピックアップサービス、さらにはアプリを使ったポイント管理やお買い得情報の通知など、消費者との接点を創出しようと、次の一手を模索する動きが加速しています。
とはいうものの、ネットスーパーを黒字化するのは必ずしも容易ではありません。一般社団法人全国スーパーマーケット協会の「2024年版スーパーマーケット白書」によると、ネットスーパーの利用率は、「よく利用している」が19.4％で、「時々利用している」（5.5％）を合わせても24.9％。4人に1人しか使われていないのが現状です。さらに、スーパーマーケット事業者の売上高に占めるネットスーパーの割合は、2023年でわずか1.5％にとどまります。
しかしそんな中、ネットスーパーを黒字化させたスーパーマーケットがあります。それが、スーパーサンシです。三重県鈴鹿市に本社を置く小売事業者で、県内には「スーパーサンシ」や関連店を18店舗構えます。
ネット事業を成功へ導いた理由は何か。どんな工夫を凝らして事業を成長させたのか。ネットスーパーを運営する上での課題と課題の解消法は…。
今回のセミナーでは、スーパーサンシ 専務取締役 NetMarket事業本部長 システム部/開発部統括の高倉照和氏がゲストとして登壇。自社の取り組みを詳しく紹介するとともに、ネットスーパーを成功に導いたポイントを解説しました。
ECと実店舗のハイブリッド環境を徹底活用
高倉氏によれば、スーパーサンシの成功の背後には、顧客のデジタルシフトへの対応と、地域市場での強固なポジションを維持しながら競争が激しいネット市場で独自の地位を築いたことがあります。高倉氏は1997年にネットスーパー事業を開始した際の経緯を説明し、それがどのようにして業界内での革新と見なされたかを述べました。この時期は、インターネットがまだ普及し始めたばかりで、オンラインでの食品販売はまだ珍しい試みでした。
スーパーサンシは地元密着型のアプローチを強化し、顧客との密接な関係を築くことで、ニーズに迅速に応えることができました。高倉氏は、ネットスーパーを単なる販売チャネルではなく、顧客の生活スタイルの変化に対応する戦略的なツールとして位置づけました。高倉氏は、過去のモータリゼーションが小売業にもたらした影響と比較し、現代におけるスマートフォンの普及が同様の変革を推進していると強調しました。
成功の鍵として、オンラインとオフラインのハイブリッドモデルの採用を挙げ、地元の店舗がオンライン注文の受け取り点としても機能することで、顧客サービスの向上と効率的な物流が可能になったと述べました。このモデルにより、顧客はオンラインでの注文の利便性と、店舗での買い物の即時性を併せ持つことができます。
高倉氏はまた、テクノロジーを利用して顧客体験を向上させることの重要性を強調しました。例えば、スーパーサンシでは独自のアプリを開発し、オンラインでの注文プロセスを簡素化すると同時に、顧客の購買データを分析してパーソナライズされたマーケティングを行うことができます。
地元のコミュニティとの連携を重視し、地域のイベントやキャンペーンに積極的に参加することで、顧客との絆を深め、地域社会に根ざしたビジネスモデルを構築しました。高倉氏は、このような地元への貢献が顧客のロイヤルティを高め、結果的にビジネスの持続可能な成長を支える要因になっていると述べています。
将来に向けての展望として、高倉氏は更なるデジタル化の推進と、サービスの多様化に焦点を当てる計画を明らかにしました。また、持続可能なビジネスモデルを追求する中で、環境への配慮やリサイクル可能な包装材の使用など、エコロジーに優しい取り組みを強化する意向を示しました。
この講演を通じて、高倉氏はスーパーサンシがネットスーパー市場で成功を収めるために採用した独自の戦略と、地域社会との連携の重要性に光を当てました。彼のリーダーシップの下で、スーパーサンシはデジタル変革を実現し、競争の激しい市場で持続的な成長を達成しています。
