近年、製造業におけるサプライチェーンの強靭化は避けて通れない課題となっています。特に自然災害や地政学的リスクは、企業にとって事業運営の大きな障害要因となり、更にはサプライチェーンの途絶を招く要因にもなります。これを受けて、株式会社Specteeが実施した「サプライチェーン強靭化」に関する調査によれば、経営層と業務担当者が持つ認識のズレや、現在の管理手法の非効率さが顕著に浮かび上がってきました。この状況を改善するためには何が必要なのでしょうか。
調査によると、約半数の企業がサプライヤー情報の管理にExcelなどの表計算ソフトを利用しているという結果が出ました。具体的には、48.8%がこれらのツールを使用していると回答し、さらに20.8%が「特にツールを使用していない」と答えています。このように、未だに手作業頼りの運用が続いていることに驚きが隠せません。現代において依然として人力に依存している状況は、業務の迅速化や効率化をテーマにしたDX(デジタルトランスフォーメーション)に逆行するものです。
さらなるデータを詳しく見ると、サプライヤー管理の課題は主に「効率化」「可視化」「情報のこまめな更新」と位置付けられます。調査によれば、34.6%が「手作業が多く、非効率になりがち」と回答し、次いで27%が「データやプロセスの可視化がしにくい」と述べています。また、26.8%は「情報を更新できず、常に最新の状態に保つことが難しい」と応え、現場の混乱が状況を悪化させていることが明らかになりました。このようなヒューマンエラーや情報の遅延は、時折多大な損失をもたらすリスクを抱えています。これらの課題については、自然災害やその他の危機的状況が発生した際、直ちに影響を受ける部分や各サプライヤーにどのように波及しているかを把握することは困難です。サプライチェーンの途絶が実際に発生し、結果として生産や納期が遅延することさえ想定されます。
興味深いことに、経営層と現場社員の間にはサプライチェーンマネジメントの重点課題について意識の違いが存在しています。調査では、経営層が最重要項目として挙げたのは「リスク管理」で、約42%の回答者がこれを選択しました。一方で、現場の人々は「自動化」を最も重視し、27.4%がこれに同意しました。このギャップを埋めるためには、両者が共通の認識を持ち、効果的にコミュニケーションを取れなければならないことが求められます。全体として、現行の管理手法の多くが時代遅れとなりつつある今日において、サプライチェーン強靭化はすべての企業で急務とされています。特に経営層は、強靭なサプライチェーンを実現するために、リーダーシップを発揮し、適切な戦略を打ち出すことが重要です。
現在、サプライチェーン強靭化への対策が十分ではないという声も多数聞かれます。半数以上の企業が自己評価として「対策はしているが十分だとは思わない」と回答しています。これを踏まえると、企業はまず、サプライチェーンに対する可視化情報基盤を整えることから始める必要があります。具体的には、リアルタイムで情報を集約できるプラットフォームを利用し、データの共有と意思決定の迅速化を図ることが現実的な解決策となります。技術の進化に伴い、サプライチェーンリスクマネジメントを助けるためのツールやテクノロジーは次々と登場してきました。これらを適切に導入し、利用することによって、より効率的で可視化されたサプライチェーン管理が実現可能です。そして、強靭な体制を対策としてしっかりと整えていくことで、万一の事態にも迅速に対応できる企業への道が開けます。
執筆:香田雄大