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【現役獣医が解説】犬のお手入れについて|適切な方法やメリット、注意すべきポイントまで


犬のケアには、爪切り、足裏カット、肛門腺絞り、ブラッシング、耳のお手入れ、そして歯磨きが含まれます。犬の爪は、特に親指にあたる部分が地面に触れないため、定期的に切る必要があります。足裏の毛が伸びすぎると滑る原因となるため、カットして清潔に保ちます。肛門腺の分泌液は臭いがあり、溜まると炎症を起こします。ブラッシングは犬の毛玉を解消し、皮膚の健康を保つために重要です。耳掃除は頻繁には不要ですが、綿棒で奥を掃除しないよう注意が必要です。また、歯磨きは歯周病の予防に効果的であり、若いうちから慣れさせると良いとされています。始めてケアをするときは少しずつ慣れさせ、動物病院やサロンを利用するのもおすすめです。

爪切り

爪切りをするトイプードル

トリミングに行くワンちゃんは、多くの場合サロンで切ってもらうのではないでしょうか。

動物病院で爪切りをしてもらう子も多いですね。

ある程度の体重があり、固い道をよく散歩しているワンちゃんは、ほとんどの爪がお散歩で削れていて、爪切りを必要としていない場合もあります。

ワンちゃんには前足に5本、後ろ足に4本の指があり、それぞれに爪があります。

「親指」にあたる指は、基本的に前足にしかありませんが、たまに後ろ足にもある子がいます。また、前足の親指を切除している子もいます。

親指にあたる爪は地面に着くことがないので、散歩で他の爪がよく削れている子でも、爪切りが必要となってきます。

犬と人間の爪の大きな違いは、その形と「爪の中に神経と血管が通っている」ということです。

白い爪で見やすいですが、爪を透かして見ると根元にほんのりと赤く血管が通っていることが確認できます。

ということは、血管が通っているところまで爪切りをしてしまうと、出血してしまうということです。

ワンちゃんは基本的に足先を触られることを嫌います。爪切りが苦手な子も多いのではないでしょうか。

それに加え、爪切りで出血したり痛い思いをしたことのある子は、さらに足先のケアを嫌います。

しかし爪は伸ばしっぱなしにしてしまうと曲がって指に負担をかける場合もあり、また巻き爪となって肉球に刺さってしまうこともあります。

また爪を伸ばし続けていると、爪の中の血管や神経も伸びてきます。爪は少なくとも2~3ケ月に1度は切るようにした方が良いでしょう。

自宅で爪切りをおこなう場合には、嫌な思いをさせないように気を付けましょう。

よく知られたコマンドの一つである「お手」は、足先を触ることに慣れさせるためには、有効な触れ合い方法です。

爪を切る際には、「少しずつ」を心掛けましょう。苦手な子は、1日に1本切れたら褒めてあげるところから始めましょう。

もし自宅で出血してしまったら、慌てず乾いた布やガーゼなどで断面を押さえることで、多くの場合出血を止めることが出来ます。

止まるまで数分、押さえておかないといけない場合もあります。出血が止まらない場合には、動物病院へ行きましょう。

足裏カット

足裏の毛

犬種によって足裏の毛が伸びてしまい、肉球を覆ってしまうことがあります。

肉球は滑り止めとしての役割も持っており、例えばフローリングの床などを歩くときに役立っています。

例えば足腰の弱っているシニア犬、首や背骨を痛めたことのある子、もともと膝や股関節の弱い子などは、フローリングで足を滑らせることがケガに繋がります。

ケガを予防するために、足裏の毛をカットする必要があります。

また、アレルギーのある子は足裏の皮膚などに症状が出ることが多いです。

足を清潔に保ったり、外用薬を塗ったりするために足裏の毛をカットすることをお勧めします。

皮膚症状のある子の足裏はとってもデリケートですので、サロンや病院などでカットしてもらうのも良いでしょう。

肛門腺絞り

おしりをあげる犬

これもトリミングや病院でお願いされることの多い処置の一つです。

肛門腺(肛門嚢)というのは、肛門の斜め下左右に位置している、分泌液を溜めるための袋のことです。

ここから分泌される液は「臭い付け」のために使われるので、かなり強烈な臭いがします。

分泌液の性状は液体~ペースト状まで様々。年齢によって性状が変わってくることもあります。

基本的には排便の時に少しずつ排出されるものですが、排出が上手くいかず溜まってしまうと炎症を起こす可能性があります。炎症が酷くなると化膿し、破裂してしまうこともあります。

肛門腺の貯留の目安として、お尻周りのかゆみ、特にお尻をこすりつけて歩くような仕草が見られます。

肛門腺の炎症や破裂を起こしたことのある子、肛門腺が溜まりがちな子は、定期的に絞ってあげることが必要です。

ブラッシング

ブラッシングされる犬

犬種による毛質の違いが大きいですが、ブラッシングというのは多くの犬で必要となってくるお手入れの一つです。

換毛(毛の抜け変わり)がある犬に限らず、プードルのような毛の伸び続ける犬でもブラッシングは大切です。

毛が絡まってできる毛玉は、見た目をそこなうだけではなく、皮膚の血流を悪くしてしまう悪影響があります。

毛玉はトリミングで手入れしてもらえば大丈夫と思いがちですが、固く絡まった毛玉をほぐすのには時間や手間もかかり、犬にも痛みやストレスを伴うものです。

ブラッシングを嫌うワンちゃんは多いですが、おうちで少しずつ慣れさせていきましょう。

また、ブラッシングを通して全身をよく触ることで、身体の異常にも気づきやすくなり、病気の早期発見・治療に繋がります。

耳のお手入れ

耳掃除は必須のお手入れではありません。人間でも最近では「毎日の耳掃除は必要ない」といった傾向にありますよね。

耳垢は耳の自浄作用で外に出てくるものですので、指の届く範囲の耳垢を拭うくらいで、日常のお手入れとしては十分です。

綿棒などを使って、耳の奥の掃除をするのは厳禁です!

耳の奥に綿棒を入れることによって、汚れを逆に押し込んでしまったり、耳の中を傷つけてしまう恐れがあるからです。

人間の耳と違い、犬の耳は鼓膜までの耳道が折れ曲がっています。

そのため鼓膜の外側である「外耳」の炎症「外耳炎」も多く発生します。アレルギー体質の子、皮膚炎を起こしやすい子は特に外耳炎に気を付けてあげましょう。

耳の汚れがひどい、かゆみがあるなど外耳炎を疑った場合には、必ず動物病院での診察を受けましょう。

耳の中の炎症や、鼓膜への影響などで耳の掃除が困難な場合もあります。適切な耳洗浄の仕方、適切な薬剤の使い方を動物病院でアドバイスしてもらいましょう。

プードルやシュナウザーなどで耳の中の毛が多く生えている子がいますね。

耳の汚れが多くなければ、耳毛はそのままにしておいても良いですが、外耳炎がある、耳の汚れが多いなどの場合には、耳垢を綺麗にするためにも耳毛を抜く処置が必要となります。

歯磨き

歯磨きをする犬

歯磨きはおうちで是非ともやっていただきたいお手入れの一つです。

近年ではワンちゃんの歯周病についても、よく知られてきたのではないかと思います。

歯周病は歯の問題だけではなく、全身に影響する病気です。日々の歯磨きをおこなうことで、歯石の付着を防ぎ、歯周病を予防しましょう。

犬は人間と違って、虫歯になる確率はとても低いのですが、その代わりに歯石が付着するまでの時間は人間よりも早いです。

歯石は細菌の巣窟になりやすく、口臭の原因ともなりますし、歯周炎や歯周病に繋がります。

歯石が形成される前に歯垢を取り除くことが、歯周病予防にはとても大切です。そのため、できるだけ毎日歯磨きをしてあげることが理想となります。

口の中というのは一朝一夕に触れるようになる部分ではありません。

まだ若齢で、口の中を触ることに抵抗がない子は、是非早めに歯磨きのトレーニングを始めましょう。

触らせない子はまずは口周りを触る練習から。それが出来るようになったら、唇をめくって歯を触ってみましょう。

最初はガーゼを指に巻き付けて、歯の汚れを取るところから始めましょう。指サックのように、指に付けて使用する歯ブラシも多く売られています。

口を開けてみたり、ブラシ上の歯ブラシを使ってみたりするのは、よくよく口の中を触らせるようになってからでも構いません。

まとめ

おうちでのお手入れは、ワンちゃんが好むものとは限りません。おうちで行う時には、

  • 少しずつ進めること
  • 嫌がる前に褒めてあげること
  • 必ず成功して褒めて終わらせること

を心掛けましょう。

おうちで行うのが困難な時には、トリミングサロンや動物病院を頼りましょう。

その子に合ったお手入れの頻度や内容も、積極的に相談してみましょう。


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