犬がうつむいているときの心理
会話や会議、授業などに参加している人がうつむいていたら、あなたはどう感じるでしょう。人の場合、楽しいとか嬉しいといった前向きな感情のときには、あまりうつむきません。おそらく、困っている、迷っている、指名されないように気配を消しているなどと感じることでしょう。
犬も、なんとなく元気のない様子でうつむいていることがあります。愛犬がじっとうつむいているとき、犬はどのような心理状態なのでしょうか。そして私たち飼い主は、どう対応すれば良いのでしょうか。
そこで今回は、犬がうつむいているときの心理について解説します。
1.不安だ、怖い
愛犬の粗相やいたずらを見つけて叱ろうとしたとき、または叱っている最中に、うつむいたまま上目遣いでこちらを見ていることがあります。
このとき、犬には悪気があるわけではないので、基本的には「悪いことをした」とは思っていません。ただ飼い主さんの様子から、不安になったり怖くなったりして見せる仕草です。
このような場合、犬は叱られてもその理由を理解できません。叱ったり騒いだりするよりも、無視して黙々と片付けをすることが、正しい対処法です。
また、見知らぬ犬や人に対して、不安や恐怖を感じてうつむくこともあります。その場合は、無理に仲良くさせようとせず、できるだけ早くその場を離れて不安から解き放ってあげるとよいでしょう。
2.気まずい
悪気はないものの、飼い主さんの機嫌が悪くなることが分かっていることをやってしまったような場合、不安や恐怖とまではいかなくても、気まずい気持ちになってうつむき、視線を合わせないようにすることがあります。
視線を合わせないという仕草には、「抵抗しません」「敵意はありません」という意味が隠されていますので、それを受け入れてそっとしておきましょう。
下手に叱ったり騒いだりすると、飼い主さんが喜んでいると勘違いしてしまい、積極的にその「望ましくない行動」をその後もしようとしてしまうことがあるため注意が必要です。
3.相手の関心を逸らしたい
歯磨きや爪切り、通院などの愛犬が苦手なことをしようとすると、なぜか気配で勘付かれてしまいます。
そういうときの愛犬は、部屋の隅などで小さくなってうつむき、じっとしていることが多いのではないでしょうか。視線は絶対に合わせようとしません。
これは、自分の気配を消すことで飼い主さんからの関心を逸らし、苦手なことを避けようとしているのです。愛犬が嫌がっても、必要なケアや通院、投薬などは、しないわけにはいきません。
愛犬が苦手なことはできるだけ手早く行い、苦手なことが終わった後は、我慢できたご褒美をあげて褒めてあげましょう。
4.仲良くなりたい
犬は、相手に「親しくなりたい」という気持ちを伝えるときにも、わざと視線を合わせないようにすることがあります。その結果、うつむいたように見えることもあるでしょう。
愛犬がうつむいていても、体には緊張感が見られなかったり、しっぽが下がったり股の間に挟まれたりしていなかったり、表情が柔らかい場合には、不安や恐怖、気まずさを感じていたり、嫌なことから逃げたがっているという気持ちはないと考えられます。
そのため、そのまま優しく声をかけたり撫でたりして、コミュニケーションを図るとよいでしょう。
5.かまってほしい
全ての犬に共通した仕草ではありませんが、過去にうつむいてしょんぼりしたような仕草をしていて飼い主さんに優しくされた経験を持つ犬は、寂しくて飼い主さんにかまってほしいときに、わざとしょんぼりとうつむくことがあります。
これは、過去の経験に基づいて学習した結果です。心当たりがある方は、愛犬がうつむいてしょんぼりしていなくても、積極的にスキンシップを図るようにしてあげてください。
うつむくのはカーミングシグナルのひとつ
犬の仕草のうち、不安、恐怖、緊張といったストレスを感じたときに、自分や相手を落ち着かせることで不要な争いを避けようとして見せるサインを「カーミングシグナル」といいます。これは、飼い主さんが愛犬の気持ちを察するためのサインとして広く知られています。
犬が視線を逸らしたり床や地面のニオイを嗅いだりといった、一見うつむいたように見える仕草も、カーミングシグナルの中のひとつです。ただしこれらの仕草は、ストレスの度合いがまだ低いときに出されるサインです。
愛犬がうつむいていることが多くなったと感じたら、愛犬に何らかのストレスが生じていると考え、不安や恐怖、緊張の対象を見極めることが大切です。
ストレスの度合いがまだ低い段階で、対象から離れたり刺激を和らげたりという対処をすることで、愛犬の精神的な負担を軽減することができるでしょう。
また事前に、刺激となる対象を回避するような対策をとる工夫も大切です。
まとめ
今回は、犬がうつむいているときの心理について解説しました。
犬がうつむくのも、人のようにあまりポジティブな心理からではないことが分かりました。しかし、人のように「いたずらを反省している」といった解釈は、単なる思い込みに過ぎません。なぜなら、犬は悪意からいたずらをしているわけではないので、「悪いことをした」とは思っていないからです。
ただし、基本的に犬がうつむいているときの心理は、不安、恐怖、緊張、嫌悪などの感情を抱いている可能性が高く、あまり好ましい状態ではありません。
愛犬の周囲の状況や、その後の行動も含めて総合的に判断し、愛犬のストレスの原因を見極め、適切に対処しましょう。
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