犬が飼い主を慰める理由
人と遺伝子的によく似ているのは、同じ霊長類の仲間であるチンパンジーやボノボで、DNAの99%近くが同じだということが分かっています。そんなチンパンジーやボノボよりも、人の近くで長く一緒に暮らしてきた犬たちは、種を超えて人と意思疎通を図る術を身に着けてきました。
犬は、飼い主さんの表情やニオイ、声のトーンや話し方などから感情を読み取り、共感することができます。そして、アイコンタクトや人の指差しなどの仕草から、コミュニケーションを図ることができるのです。
このようなことは、犬と一緒に暮らしている飼い主さんであれば経験的に理解できることでしょう。近年は世界各国の研究により、科学的にも証明されたり解明されたりするようになってきました。
そこで今回は、犬が悲しんでいる飼い主さんに対して慰めるような行動を取る理由について、現在考えられている内容をご紹介したいと思います。
1.笑顔でいてほしいから
犬は、感情豊かな動物だと言われています。特に『犬の4大感情』と言われているのが、「喜び」「安心」「恐怖」「怒り」です。
当然のことですが、犬はできるだけ「安心」していられ、かつ「喜び」を感じていられる状況を好むことでしょう。そのためには、いつもそばにいてくれる飼い主さんが笑顔で機嫌の良い状態であることが望ましいはずです。
そこで犬は、飼い主さんが憂鬱そうにしているのを見ると、かつて飼い主さんがどんなときに笑顔を見せていたのかを思い出し、その状況を再現しようとします。一緒に遊んでいたときを思い出した犬はお気に入りのおもちゃを飼い主さんの下に持っていき、一緒に遊ぼうと誘うかもしれません。
自分が甘えたりおどけたような仕草をしたときに笑顔を見せていたと思いだした犬は、飼い主さんの体を前足でつついてみたり、顔を舐めてみたり、ちょっとおどけたような仕草を見せたりするかもしれません。
2.違和感を解消したいから
犬は飼い主さんのことを非常によく見ています。そして、ちょっとした感情の変化も見逃しません。
まず最初に感じるのは、飼い主さんに対する違和感でしょう。(いつもと違う!)(どうしたんだろう?)とその違和感に気付いた犬は、いつも以上に飼い主さんのことを観察し、何が起きたのかを探ろうとするはずです。
そんなとき、犬は飼い主さんのことをじっと見つめることでしょう。遠くから見つめているだけのときもあれば、近づいて来て飼い主さんのそばで寄り添うようにしながら、必死に観察しているときもあるかもしれません。
3.不安を感じているから
犬は人への共感度が高く、また一緒にいる時間が長くなればなる程、共感度が高まることが分かっています。
つまり、飼い主さんが落ち込んだり悲しんだりしているのを見ると、犬にもネガティブな感情が伝染してしまい、不安な気持ちにさせてしまうのです。場合によっては、不安を通り越して、恐怖心まで呼び起してしまうかもしれません。
そこで犬自身の不安を解消するためにも、「クンクン」とか「クーン」といったか弱い声で鳴いたり、ピタッと飼い主さんに寄り添ってそばから離れなくなったりするのです。
4.本能的な行動
そもそも犬たちは、群れを作って小さな巣穴で暮らしていました。群れの仲間同士で自分たちの身の安全を守る必要があったのです。そのため、危険な状況を早く察知するためにも、仲間の不安や恐怖といったネガティブな感情をいち早く察知し、それを共有することで自分たちの身を守る習性が身についたのではないかと考えられています。
つまり、犬が飼い主さんが悲しんだり落ち込んだりしていることを察知して慰めるような行動を取るのは、本能的な行動であるとも考えられるのです。
犬はネガティブな感情ほど敏感に反応する
犬が飼い主さんのネガティブな感情を察知して慰めるような行動を取るのは、本能的な行動ともいえるという説をご紹介しました。
実際にオーストリアの獣医大学の研究では、『犬は相手が犬でも人でも、よりネガティブな感情に共感する』と報告されています。
またイギリスの研究では、『犬は自分の飼い主のみならず、悲しんでいる人には誰に対しても慰めようとする習性を持っている』という報告もあります。この研究者は、犬のこの習性を「人間の3〜4歳児と同等の反応」と解釈しています。
1〜2歳児は、泣いている人を見ると一緒に泣き出しますが、慰めようとはしません。しかし3〜4歳児は、相手を抱きしめたりおもちゃを与えたりして慰めようとします。この行動は、社会的な精神が成熟した現れだと解釈されています。
群れという社会の中で暮らす犬は、自分のいる群れの安全を確保するために、仲間のネガティブな感情をいち早く察知し、相手を慰めることで群れの平穏を維持しようとしているのかもしれません。
まとめ
今回は、犬が飼い主さんを慰めるような行動を見せる理由について、いくつかの説をご紹介しました。
個々の理由を見てみると、飼い主さんを慰める行動は、必ずしも飼い主さんのための行動というわけではなく、犬自身のためのものなのかもしれないことが分かりました。
とは言え、飼い主さんを自分の群れの仲間と認めたうえでの「共感」であり、「慰め行動」なのだと解釈することができそうです。
愛犬のためにも、ネガティブな感情はなるべく外で解消してから帰宅するようにしたいですね。
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