体脂肪を減少させるプロバイオティクスを特定する研究
「腸内環境を整える」「腸内の善玉菌を増やす」など、私たちのお腹の中に棲んでいる微生物が、健康にさまざまな影響を及ぼすことは広く知られるようになってきました。
腸内環境を改善することによって、お腹の主の健康に良い影響を与える微生物のことをプロバイオティクスと言います。
人間と同様に、犬の健康にとってもプロバイオティクスは大切な役割を果たしています。その役割は単にお腹の調子を整えるというだけに留まらず、意外な面にまで及んでいるようです。
この度、韓国のソウル大学、キョンブク大学、チュンナム大学、イルドン・バイオサイエンス社の研究チームによって、犬の肥満とプロバイオティクスについての研究結果が発表されました。
家庭のペットとして飼われている犬の太り過ぎは、世界の多くの国で問題視されています。体重過多や肥満と診断された犬の多くは、ダイエット用の療法食などの治療を受けていますが、この研究ではさらに積極的に体脂肪を減少させるプロバイオティクスを特定することを目標としたそうです。
高脂肪食にプロバイオティクスをプラスして給餌実験
研究の対象となったのは、20頭のビーグル(2〜4歳、オス8頭メス12頭)でした。犬たちは無作為に5頭ずつ4グループに分けられ、9週間にわたってそれぞれ以下のようにフードを与えられました。
- グループ1 中型成犬用の100グラムあたり357キロカロリーのドッグフード
- グループ2 100グラムあたり483キロカロリーの高脂肪ドッグフード
- グループ3 上記高脂肪ドッグフードとプロバイオティクス(エンテロコッカスフェシウム菌)
- グループ4 上記高脂肪ドッグフードとプロバイオティクス(ビフィドバクテリウムラクティス菌)
エンテロコッカス・フェシウム菌と、ビフィドバクテリウム・ラクティス菌が採用されたのは、この実験に先立って行われた調査で、老犬の腸内細菌叢ではエンテロコッカス属と、ビフィドバクテリウム属の数が減少していることが判ったからです。
9週間の期間中は1週間に1回、体重測定と体型判定のためのボディコンディションスコアの評価が行われ、それぞれのグループの平均値が算出されました。また、給餌期間が終わった時点で犬たちの血液検査が実施されました。
プロバイオティクスは体脂肪を減少させる!’
給餌実験の結果は有意な違いを示しました。357キロカロリーの普通食のグループに比べて、高脂肪食のグループは体重が約28%増加していました。これは予想された通りです。
しかし同じ高脂肪食を食べていても、プロバイオティクスを与えられていたグループは2組とも体重の増加が緩やかで、ボディコンディションスコアでは脂肪の蓄積を示していませんでした。
与えられた2種のプロバイオティクスは排泄を促進するだけでなく、エネルギー代謝を活性化させ、体の代謝の方向性を脂肪蓄積ではなく脂肪消費にシフトさせていたことが確認されました。
血液検査の結果からは、プロバイオティクスが肥満によって誘発される全身性の炎症と、ホルモンの乱れを軽減することもわかりました。これらの変化は一時的なものではなく、観察された良い変化は長期にわたって持続されます。
人間や家畜動物に適したプロバイオティクスの種類は特定されているのですが、犬や猫などコンパニオンアニマルについては、標準化されたガイドラインがまだないのだそうです。
ペットの健康のために、プロバイオティクスを応用するための研究がさらに拡大前進していくことを願っていると研究者は述べています。
まとめ
9週間にわたる給餌実験の結果、プロバイオティクスを与えられた犬は、たとえ高脂肪のドッグフードを食べていても体重の増加が緩やかで、体脂肪が蓄積していなかったという報告をご紹介しました。
肥満の防止だけでなく、代謝の活性化や炎症の抑制などの効果も見られたため、プロバイオティクスを病気治療に応用できる可能性についても言及されています。しかしこの点については、さらに研究が必要であるとのことです。
《参考URL》
https://doi.org/10.1128/spectrum.02552-23
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