犬の咬傷事故件数が新記録を樹立
アメリカのカリフォルニア州では、州の医療情報管理局から「犬に咬まれて入院した人の数が過去最多となった」という調査結果が発表されました。
犬に咬まれたことによる救急外来の受診率、入院率、死亡率がどれも増加しており、2022年には新記録が樹立されるという事態になっています。
関係者は、咬傷事故の増加にはコロナ禍によるロックダウン時のペットブームが関連していると考えています。
犬の咬傷事故増加は公衆衛生上の脅威
カリフォルニア州医療情報管理局が発表したところによると、2022年にカリフォルニア州で犬に咬まれて救急外来を受診した件数は48,596件で、受診率は2005年から70%増加しました。
同じ時期の入院率は約2倍になっています。犬による死亡事故の件数自体は非常に少ないものの、これも同じ時期では約2倍になっています。
咬まれた人の年齢層で最も多いのは、子どもと若年成人です。この年齢層はカリフォルニアに限らず、世界各地で同じ傾向があるのですが、子どもの場合は身長の低さから咬まれる箇所が顔や頭部であることが多く、怪我が深刻になりやすいという特徴があります。
これらの数字は、公衆衛生と動物福祉の両方にとって非常に深刻な問題です。
咬傷事故増加の責任は犬ではなく飼い主
アメリカではコロナ禍以前から、犬を飼う人が増える傾向は続いていました。アメリカ獣医師会の推計によると、全米で飼われている犬の数は2001年には約6200万頭でしたが、2020年には約8600万頭に増加しています。
この傾向に拍車をかけたのが、コロナ禍によるロックダウンでした。在宅時間が増え、外出がままならない中で、多くの人が犬を家族に迎えたからです。
しかし、コロナ禍中に新しく犬を迎えた多くの人は、犬の社会化のための外出やトレーニングのクラスへの参加をしなかったと考えられます。外出が制限されていたから仕方のない面もありますが、ロックダウンが終わった後のことにまで考えを巡らせずに犬を迎えた人が多かったのでしょう。
その結果、ロックダウン中は四六時中飼い主と一緒にいて、他の犬や人と触れ合うことのなかった犬が日常生活が戻ると共に、長時間の留守番に直面して分離不安を示したり、社会化が不十分であるために、外の世界に恐怖を感じて攻撃行動に出たりという不幸につながっています。
ロックダウン中であっても、オンラインのドッグトレーニング講座は数多く提供されていたので、犬を迎えた初期に適切なトレーニングをしなかったのは飼い主の責任でしょう。
同じ時期にイギリスで発表された調査では、コロナ禍のロックダウン中に犬を迎えた飼い主は、罰を使う嫌悪刺激トレーニングを行なう傾向が強いという結果も発表されています。
罰を使うトレーニングは犬の攻撃行動を誘発するリスクを高めるため、カリフォルニア州でも同じような傾向があるのかもしれません。
救急外来を訪れて入院するほどの怪我を負わせる犬は、すでに精神的なダメージを負っていると考えられるため、飼い主は早急に動物行動治療を専門とする獣医師に相談するべきだと、カリフォルニア大学デイビス校の獣医行動学の専門家は助言しています。
まとめ
カリフォルニアでの調査から、救急外来を受診したり入院するような犬の咬傷事故が増えており、コロナ禍中に犬を迎える人が増えたことと関連しているという報告をご紹介しました。
この調査結果は、事故率の増加という公衆衛生上の懸念とコロナ禍の影響のために大きく取り上げられていますが、個々のケースで考えると安易に犬を迎えてトレーニングを怠ることがどのような結果を招くのかを端的に示しています。
日本でもけっして他人事ではなく、犬を迎える人が心に留めておきたいことです。
《参考URL》
https://kffhealthnews.org/news/article/dog-bite-increase-data-california-emergency-room-er/
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