高齢者の認知機能とペットの存在との関連についての調査
ペットとの暮らしが健康に良い影響を与えることについては、今までにも数多くの研究が発表されています。
例えば犬と暮らしている人は、散歩などで運動量が増えるため心臓や血管の疾患のリスクが低下する、動物の存在が孤独感を癒しメンタルヘルスに良い影響を与える、といったものです。
近年では、中年期以降の認知機能の低下とペットの存在との関連についても、研究が行われるようになってきました。
このたび中国の中山大学(ちゅうざんだいがく)公衆衛生学の研究チームによって、ペットの保有状況と高齢者の認知機能の低下についての調査が行われ、その結果が報告されました。
50歳以上一人暮らしの人の認知機能低下とペット
この調査では、イギリスで実施されている長期的な加齢研究のデータが用いられました。この加齢研究は、イギリス在住の50歳以上の人を対象に現在も継続して行われているものです。
参加者の年齢、性別、生活形態などの情報の他に、定期的な認知機能テストを実施して結果が記録されています。
中山大学の調査では、50歳以上の7,945人のデータから、同居している人の数、ペットの保有状況、認知機能テストの結果が分析されました。
ペットの保有状況は一人暮らしの場合、言語記憶、言葉の流暢さにおいて機能低下が緩やかであることと関連していました。これらは注意力、ワーキングメモリー、短期記憶などの要素に関連しています。
しかし、他に同居している人が居る場合には機能低下の緩やかさは当てはまらず、その理由は不明です。
認知機能とは別に、ペットを飼っている人は飼っていない人に比べて社会的孤立のスコアが低いという結果も出ており、孤独感やストレスの低下が認知機能低下を緩やかにすることと関連している可能性が考えられます。
しかし、ペットの保有状況が一人暮らし高齢者の認知機能低下のスピードを遅らせるかどうかを評価するためには、さらに研究が必要であるとのことです。
調査結果についての注意点
注意しなくてはいけないのは、この調査結果は関連性を示してはいますが、直接的な因果関係を示してはいないことです。どのような理由でペットとの暮らしが、認知機能低下のスピードを遅くするのかについては調査されていないということです。
またこのような調査結果を受けて、すでに認知機能障害を持っていたりバランスや視力の機能が低下している人が、「脳の老化を遅らせるために」という理由でペットを飼い始めることは非常に危険です。
認知機能に障害が出ている場合、ペットの世話をきちんと行なうことが難しくなり動物と人間両方の健康を損なう恐れがあります。バランスや視力が低下している人が動物と暮らすことは、転倒のリスクが高くなってしまいます。
動物との暮らしが人間の身体や精神、さらには脳に良い影響があるのは素晴らしいことですが、研究結果に安易に飛びつくのではなく、冷静に見極めることが大切です。
まとめ
高齢者の認知機能低下とペットの保有状況を分析したところ、50歳以上一人暮らしの人がペットと暮らしてる場合には、機能低下のスピードが遅くなるという関連を示す調査結果をご紹介しました。
数ヶ月前にもよく似た内容の研究結果が発表されており、動物が人間の認知機能に及ぼす影響についての関心の高まりが伺えます。
このような研究が増えることで、高齢ではあるが認知機能障害がない方のための動物ボランティアへの参加や、アニマルセラピーなど、人にも動物にも優しい解決策につながるといいなと願います。
よく似た内容の研究結果はこちらです。
『ペットと暮らす高齢者は認知機能の低下が遅いという研究結果』
https://wanchan.jp/column/detail/41767
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