カリフォルニア州でペットの遠隔医療法案が可決
2023年10月アメリカのカリフォルニア州において、免許を持つ獣医師が遠隔医療によって獣医療を行なうことを認める法案が可決されました。
遠隔医療とは実際に病院に訪れるのではなく、ビデオ通話によって医師の診療を受けることができるというもので、モバイル医療やテレ医療とも呼ばれます。
現行の法律では獣医師は遠隔医療による診療はもちろん、患者の飼い主へのアドバイスも禁止されています。
アメリカではコロナ禍をきっかけに、実際に病院に行かずに医師の診療を受けられる遠隔医療を利用する人が爆発的に増えました。これは人間の医療の話です。
動物病院の待合室での飼い主と動物両方のストレスや、検査結果を聞くためだけに病院に行くことなどを考えると、獣医療の遠隔医療というのは確かに魅力的に感じられます。一方で「本当に大丈夫なのか?」という不安も感じます。
この法案が可決されたことに対する賛否両論の賛と否についてご紹介していきます。
モバイル獣医療によって問題の一部が緩和される可能性
アメリカでは獣医師の不足が長年にわたって問題となっています。愛犬や愛猫の具合が悪くなった時にすぐ診察してもらうことができず、予約は何日も先にしか取ることができないのが普通です。
どうしてもすぐに診察が必要な時には動物救急病院に行くしかなく、この場合は診察料金がかなり高くなってしまいます。
このような状態ではペットの医療費を払うことができずに、動物保護施設や団体に愛犬や愛猫を引き取ってもらう人も増えています。モバイル獣医療によって動物病院にアクセスしやすくなれば、獣医療費のためにペットを手放す人の問題の一部は緩和される可能性があります。
また農村部など、遠隔地に住んで動物病院にアクセスできなかった人のペットが、獣医療を受けられる可能性が高くなるという面も考えられます。
モバイル獣医療は従来の獣医療に取って代わるものではない
しかし、この法案成立に対して肯定的な意見を述べている動物保護団体の人々も、100%手放しで歓迎しているわけではありません。
モバイル獣医療はあくまで従来の対面診療の補助になるべきもので、獣医師と飼い主と動物の関係が構築された上で実践されることが前提となっています。
カリフォルニア州の獣医師会および全米獣医師協会は、この法案成立に対して否定的な姿勢を示しています。
人間のモバイル医療であれば、自分自身で体の不調を説明することができますが、犬や猫はそれができないため獣医師が実際に見て触って診察することの重要性が非常に高いためです。
モバイル獣医療が普及することで、定期的な健康診断やワクチン接種を受けなくなる動物が増えることも獣医師たちは懸念しています。
経済的な事情や遠隔地に住んでいるなどの理由でモバイル獣医療を受ける人々の動物は、獣医師と対面して診療を受ける動物に比べて、質の低いケアや誤った診断を受ける可能性もあります。
このような懸念に対して、処方薬の規制や音声のみのコミュニケーションの禁止などの規定が設けられているのですが、先行きは不透明な状態です。
まとめ
カリフォルニア州において、ビデオ通話などを使ったペットのためのモバイル獣医療を認める法案が可決され、賛否両論の声がわき上がっているという話題をご紹介しました。
法律は2024年1月から施行される予定ですが、獣医師の心配が現実にならないよう対策が取られることを願うばかりです。
《参考URL》
https://cvma-inline.net/wp-content/uploads/2020/03/CV74_2-Compliance-Corner.pdf
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