犬の排尿トラブルに効くツボの位置とは?
健康な犬の尿は、淡い黄色〜麦わら色で透きとおっていて、1日の排尿は2〜3回が正常といわれています。しかし、個体差があり、普段の排尿の回数やトイレに行く頻度、量は飼い主でなければ観察できません。
犬の排尿トラブルに気がついた時は、まずは動物病院を受診することが大切です。
特に、犬の尿が長時間出ない、頻尿、血尿、尿にキラキラしたものが混ざっているという症状がみられる場合は、膀胱炎や尿路結石といった重大な病気の可能性があります。早めに獣医師の診断を受けましょう。
病気の診断がなかった場合でも、飼い主が日常的にできる犬の排尿ケアとして、ツボ押しやマッサージを取り入れるのがおすすめです。
犬のツボとは
東洋医学では、体調を表す「病気」や「元気」の「気」を、体内の血液や酸素の流れを整えるエネルギーと考え、このエネルギーの流れる道を「経絡」といいます。
東洋医学の治療では、経絡の上にあるツボを、鍼や灸、マッサージなどで刺激して、病気の予防(未病)や体質改善を行います。
犬の体にも人と同じようにツボがあり、ツボを刺激することで未病状態を保ち、健康を促すことができるといわれています。この記事では、排尿トラブルに効果的な泌尿器に関する経絡上のツボを5つ紹介します。
犬のツボの位置と症状をわかりやすく図に表した「犬のツボ図」等を参考にしながら、自宅でのケアに役立ててください。
腎兪(じんゆ)
腎兪のツボは、一番後ろの肋骨を背中に向かってたどった背骨のでっぱりから、2つ後ろの背骨の両側にあります。少し窪んでいるのがわかります。
腎兪は、腎炎や多尿症に効果があり、腎臓の機能を高めるだけでなく、老化防止としても重要なツボです。
膀胱兪(ぼうこうゆ)
背骨と骨盤の交わる、骨盤の付け根当たりの両側にあります。膀胱のはたらきを活発にし、膀胱のあらゆる疾患に効果があります。
命門(めいもん)
「命の門」と書くとおり、エネルギーが集まる重要なツボです。おへその裏側に当たる背骨の上にあり、両側に腎兪のツボがある背骨の突起部分です。長生きのツボともいわれています。
冷えのトラブルに効果的で、ツボ押しよりも、すぐ両側にある腎兪と一緒に手で包むように温めてマッサージする方が簡単でおすすめです。
湧泉(ゆうせん)
後肢の一番大きな肉球の付け根にあります。気が「泉」のように「湧く」元気のツボです。湧泉は、泌尿器に関連する経絡のスタート地点で、腎臓病はもちろん免疫力の安定に効果的です。
肉球の付け根を足先に向かって親指で優しく押し上げます。超小型犬では、親指の代わりに綿棒を使ってゆっくり押すように刺激してあげましょう。
気海(きかい)
犬のおへそから、指2本分下の方にあるツボで、ツボを押すというよりはマッサージがおすすめです。
気海の周辺を手で温めながら時計回りにくるくるとさすります。強く押すと犬が嫌がりますので力加減に気をつけましょう。刺激で尿が出やすくなるので、利尿作用を高めたい時に効果的です。
犬の排尿を促すツボ押しのコツ
犬の排尿を促すツボ押しを行う時は、犬も飼い主もリラックスしていることが大切です。
飼い主の体調や感情は手を通して犬にも伝わります。飼い主自身もゆったりとした気持ちで犬を触ってあげましょう。また、犬のツボ押しを始める前には、爪を切り、手を温めておくと良いでしょう。
指先を使ってツボにアプローチする
腎兪や膀胱兪のように、背骨の両側にあるツボでは、親指と人差し指で挟むように押していきます。この時、指を立てるのではなく、できるだけ指の腹を使うと気持ちよく感じます。犬が触られて気持ちよさそうにしている場所を探してみましょう。
超小型犬の場合やツボの位置が指で押しにくい場合は、ツボのあたりを手で覆ってマッサージするのも気持ちが良いです。
ツボを押す位置は少しずれても大丈夫
ツボの大きさはボールペンの芯くらいと考えられています。その一点を探し出すのは難しいですが、少しズレた場所を押しても、刺激はツボまで伝わります。
ツボがわからない時は、ツボ周辺の皮膚を優しくつまんだり、円を描くようにマッサージしたりして刺激してみましょう。
「だいたいこのあたり」と思う場所で問題ありません。ツボ押しで犬が心地よさそうにしているかどうかで判断しましょう。
ツボを押す強さは犬の体格や好みに合わせる
押す強さは、強すぎず弱すぎずという「程よい力加減」がポイントです。ツボ押しの力加減は、風船を押した時に少しへこむくらいの強さが理想とされています。
押す強さの具体的な目安は以下のとおりです。力加減を調べるには、キッチンスケールに指を押し当てて参考にしてみましょう。
- 小型犬:350 〜500g
- 中型犬:500g 〜1kg
- 大型犬:2〜3kg
犬の体格やその日の体調によっても、力加減の好みが変わります。犬の様子を見ながら調整してあげましょう。
ツボの押し方
ツボの部分に指をあてたら、3秒ほど徐々に力を加えていき、力を加えた状態で3秒止まり、次の3秒で力を抜いていきます(じわっと3秒−3秒−3秒)。
力を加えていく時、犬の様子をよく見ながら強くなりすぎないように押しましょう。
超小型犬の場合やツボの位置が指で押しにくい場合は、指ではなく綿棒を使って押してあげると程よい刺激が伝わります。
ツボを押す回数
ツボを押す回数は、ツボ1か所につき5〜30回くらいが目安とされています。しかし、犬がツボ押しを嫌がる時は、ムリに触らないようにしましょう。
ツボ押しは毎日行うのが効果的ですが、犬の体調に合わせて行いましょう。
犬の排尿トラブルを防ぐツボ押しマッサージの方法
犬に明らかな排尿トラブルがある時は、ツボ押しマッサージの前に動物病院を受診することが大切です。獣医師の指導のもと、ツボ押しマッサージが効果的とされる場合に行うようにしましょう。
犬が排尿困難を抱えている場合、犬が触られることに敏感になっている可能性もあります。ツボ押しマッサージを行う時は、飼い主はいきなりツボを押し始めるのではなく、まずは犬に「始めるよ」という合図を送ってあげましょう。
排尿トラブルを防ぐツボ押しマッサージの手順は次のとおりです。
①犬の全身をなでてリラックスさせる
手のひらでやさしく、犬の頭から背中にかけてゆっくりとさすっていきます。この時、いきなり顔や足の先端を触ると犬が緊張したり、嫌がったりするのでやめましょう。
片手でさすりにくい場合は、両手を使います。片手ずつ追いかけるように頭から背中までゆっくりとなで下ろしていきます。犬がリラックスするまで続けましょう。
犬が落ち着かない場合は、マッサージは無理にしないでください。痛いところがないか、炎症がないか観察しましょう。
②腎兪のツボを親指と人差し指で挟むように優しく5回押す
じわっとした力加減で3秒−3秒−3秒のリズムでツボ押しをします。まずは5回から、気持ちよさそうなら回数を増やしていきます。
犬がお尻を飼い主の方を向けている場合は、犬のウエストあたりを両手で包み込むように触ります。腎兪のツボに両手の親指をあてて、背骨に向かってやや内向きにじわっと3秒−3秒−3秒を繰り返します。
③腎兪から膀胱兪に向けてマッサージする
腎兪から膀胱兪まで(背中の真ん中から尾の付け根まで)、徐々に指をずらしながら上から下に向かって背骨に沿って優しくつまむように触っていきます。
この部分は腎臓に関連した経絡に当たります。ツボ押しがうまくできなくても温かい手でマッサージしてあげるだけでも排尿ケアに効果的です。
④涌泉を優しく5回刺激する
後肢の一番大きな肉球の付け根を優しく親指でゆっくり押していきます。超小型犬では、押しにくい場所なので綿棒を使って刺激するのがおすすめです。
肉球の付け根に綿棒を斜めにあて、足先方向に向けて優しく力を加えていき、徐々に力を緩めます。この時、綿棒を強く押しすぎないように気をつけましょう。
②〜④のツボ押しは、犬がリラックスして触らせてくれるところから始めても大丈夫です。犬の体調に合わせて、力加減や回数を調整してあげましょう。
犬の排尿ケアでツボ押しをする時の注意点
犬の尿が長時間にわたって出ない時や、頻尿・血尿などの病気を疑う症状が現れた時には、早めに動物病院を受診することが大切です。
ツボ押しよりもまずは、治療を優先して行いましょう。そのためにも、普段から犬の排尿間隔や量、色などを観察し、定期的に動物病院での健康チェックを行っておきましょう。
犬にツボ押しするのを控えた方がいい時
次の場合は、ツボ押しを控えましょう。
- けがや強い炎症がある
- 骨折している
- 腫れている
- 腫瘍がある
- 熱がある
- 衰弱している
- 妊娠中(刺激しない方がいいツボがあるため)
犬がツボ押しを嫌がったり痛がる場合は止める
ツボ押しを嫌がってすぐに逃げようとしなくても、犬が自分を落ち着かせようとして以下のようなカーミングシグナルを見せる場合があります。犬が何らかのストレスを感じている証拠ですので、ツボ押しはすぐにやめましょう。
- その場から離れようとする
- 気持ちよさそうだったのに急にクルッと振り向く
- 体をぶるぶると振る
- あくびをする
- 鼻をなめる
- 頭を下げて姿勢を低くしている
- 目をそらす
- 耳を後ろにたおす
犬が長時間排尿しない時は受診する
明らかに長時間尿が出ない場合は、腎臓や膀胱に関わる重大な病気を発症している可能性があります。できるだけ早めに動物病院を受診しましょう。
通常、犬の排尿は1日に2〜3回、1日の排尿量の目安は犬の体重1kgにつき20〜40mlが目安です。飲水量や個体差により異なるため、必ずこの数値内でなければならない訳ではありません。
飼い主が犬の排尿を細かく観察することは難しいですが、ペットシーツを取り替える時に色や匂いを確認し、重さを量るなどして普段の排尿の様子を知っておくことは、病気の早期診断につながります。
外で排尿習慣のある犬の場合は、時々ペットシートの上に排尿させて確認し、今後、室内で排尿する習慣に変えていきましょう。
犬が自力で排尿できなくなる病気
- 膀胱炎
- 尿路結石症
- 前立腺肥大
- 慢性腎臓病
- 尿毒症
- 椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアでは、病気の進行具合により下半身に麻痺が起こり、自分の意思で排尿ができなくなります。
犬が自力で排尿できない時は圧迫排尿が必要
事故や病気によって、排尿に関わる神経伝達の遮断や泌尿器系の臓器の異常などがあると、犬は自力で排尿できません。また、老化による体力低下でも排尿困難になります。
このような場合には、ツボ押しだけで犬の排尿を促すことは難しいため、人の手による圧迫排尿による介助が必要になります。
圧迫排尿とは、犬の下腹部から膀胱にあたる部分を、外から手で圧迫することで排尿させる方法です。他の腹腔内臓器を傷つけないためにも、必ず獣医師の指導を受けた上で、膀胱の位置を確認してから行います。
圧迫排尿の手順
- 犬の性器の下にペットシーツを敷く(オスは前方へ、メスは後方へ敷くのがポイント)
- 犬を横たわらせ、背中をマッサージしてリラックスさせる
- 膀胱(下腹部の風船のように膨らんだ部分)を確認し、手のひらで包み込む
- 膀胱を優しく圧迫して排尿を促す
圧迫排尿を行う間隔は1日に3〜4回程度です。膀胱がパンパンに膨らんでしまう前に行い、尿毒症や膀胱炎にならないようにしてあげましょう。
排尿後に、膀胱の中に尿が残っていると膀胱炎などのトラブルが起こりやすくなります。圧迫排尿を行う時は、尿が残らないように、しっかりと出し切ってあげましょう。
尿が溜まっているかどうかは、見た目ではわかりません。定期的にお腹を触って膀胱が張っていないか確認しましょう。
犬の排尿ケアとしてツボ押しを行う時の注意点
犬に次のような症状がある場合はツボ押しを控えましょう。
- けがや強い炎症がある
- 骨折している
- 腫れている
- 腫瘍がある
- 熱がある
- 衰弱している
- 妊娠中(刺激しない方がいいツボがあるため)
まとめ
犬に排尿トラブルがみられた場合、まずは動物病院を受診し、診断してもらうことが大切です。病気の治療や排尿介助のための圧迫排尿が必要になった時は、飼い主は必ず獣医師の指導を受けてください。
排尿トラブルがある時でも飼い主が手軽にできるホームケアとして、犬のツボ押しマッサージがおすすめです。
飼い主の手で、犬のツボを確認しながら体を触ってあげることは、犬との親密なコミュニケーションが取れるだけでなく、健康状態の把握にもつながります。
まだ排尿トラブルのない犬であれば、病気の予防にも効果的ですので、犬のツボ押しマッサージをぜひ生活の中に取り入れてみてください。
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