Xユーザー・RUIさんが6月25日に投稿した1枚の写真。なにやら画面いっぱいに文字が書かれており、一見すると昔の書物やお経のように見えますが……。
実はこれ、全てRUIさんが自作した実際には“存在しない”架空の文字で、5年間にわたり創作したものなのだとか。たしかに一文字たりとも読める字がない!?
普段から「存在しない文字・言語」を作るクリエイターとして活動するRUIさん。現在、留為語という表意文字を用いた人工言語を制作しており、今回のポストで取り上げている文字は、その言語で用いられる「留為文字」と呼ばれるものなのだそう。
もともと言語学に興味があり、調べ物をしていたところ、たまたま「人工言語」という言葉に出会い、興味を惹かれたことが活動を始めるきっかけに。当初はアラビア語に憧れていて、これに似たような言語を作ろうとしていましたが、なかなかうまく行かなかったことも多かったそうです。
そんな折、かつて西夏王朝で用いられていた「西夏文字」の存在を知り、同時期に中国人現代アーティスト・徐冰(Xu Bing)氏の作品「天書」に出会ったことが大きな転機に。これに影響を受けた結果、自分に合った言語のスタイルとして、現在の漢字ライクな「留為文字」の誕生に至ったそうです。
「留為文字」はもちろん全て、RUIさんの手作業によって生み出されたもの。コピー用紙と筆ペンを使って最初は絵からスタートし、美しく見えるように要素の配置やバランスを試行錯誤しながら、最終的に文字にしていきます。
いくつか基礎的な文字ができたら、それらを組み合わせて新しい文字を生み出すことも。漢字にも、字同士を組み合わせてひとつの漢字とする「会意文字」が多く存在しますが、これと同じ考え方で、留為文字全体のおよそ85%を占めているそうです。
こうして次々と生まれ、正式採用となった文字は、5年間で973文字にのぼり、単語ベースで数えると1400語に至るのだとか。中でも特に気に入っている文字は、自身のアイコンにも用いている「蝶・蛾」を意味するという文字。
「形状が複雑でありながらバランスが取れていて、かつ蝶(蛾)の持つ神秘的とも悪魔的とも言える美しさを表現できた自信作」とコメントするなど、その出来栄えには大いに納得といったようすでした。
留為文字の今後について聞くと、「やはり言語ですので、文法や語彙をまとめてインターネット上に公開したり、可能であれば出版物にしたいと考えています。また、小説や書道芸術としても発展させたいと考えています」と大きな野望を語ったRUIさん。
我々が当たり前のように使っている文字も、こうした試行錯誤を気の遠くなるくらい繰り返した末に生まれたものだと思うと、感慨を覚えます。RUIさんにもいつかきっと、その夢をかなえてほしいものですね。
<記事化協力>
RUIさん(@RUWI368)
(山口弘剛)
Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By 山口 弘剛 | 記事元URL https://otakuma.net/archives/2025070104.html