2025年4月22日に三笠書房から刊行される書籍『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』(著・神田裕子氏)が、SNS上で波紋を呼んでいる。
■ 発達障害者を揶揄? 問題視された表現
問題視されているのは、発達障害など抱えた人たちを「職場の困った人」や「職場にはびこる困った人」などと表現し、イラストではASD(自閉スペクトラム症)をナマケモノ、ADHD(注意欠如・多動症)をサルなど、キャラクターを動物で表現している点。
これらの表現が、「発達障害者を揶揄している」「差別を助長する」といった批判を呼び、X(旧Twitter)を中心に炎上状態となっている。
■ イラスト担当の芦野氏が経緯を説明
この事態をうけ、本書のイラストを担当したイラストレーター・芦野公平氏は4月16日、自身のnoteで「装画に関するご報告と経緯のご説明」と題した投稿を公開した。
冒頭で芦野氏は、今回の批判を真摯に受け止め、「ご不快な思いをされた方がいらっしゃること、それ自体が大きな問題であり、表現に関わった一人として深くお詫び申し上げます」と述べた。加えて、「(差別的な)意図を持って描いたものではありません」と、差別する意図はなかったことを説明。
芦野氏によれば、当初は“多様な職場の人々が言葉の力で生き生きと働く”という要望のもと、ラフ案が描かれ提出された。しかし、その後の編集部からの「人物を愛らしく描きたい」との意向が示され、「キャラクターを動物に置き換える」指示があったという。
芦野氏がこの指示に従った理由として、本書には「皆がいきいき働ける未来がある」という前向きなテーマがあり、編集者とのやりとりにも差別的な意図は感じられなかったと説明している。
一方で、動物化表現に危うさがあるとは感じつつも、多忙を理由に「編集部とコミュニケーションを取る労を惜しんでしまった」「制作チームでのコミュニケーションを厭わない態度が不足していた点を深く、そして最も反省しております」と述べている。
■ 炎上が示した「届け方」の重み
発売前の書籍が、内容そのものではなく「言葉選び」や「表現の仕方(キャラクターを動物で表現したこと)」で注目され炎上に至った今回のケースは、出版業界におけるデザインやメッセージの届け方がいかに繊細であるかをあらためて示す形となった。特に表紙やイラストは、読者にとって最初の接点であり、そこに差別的または偏見的な解釈の余地がある限り、作り手側の姿勢が問われることになる。
現在もX上では多くの議論が交わされている。出版社や著者からの今後の対応に注目が集まる中、読者の声にどう耳を傾けるのか、問われているのは“誰のための本か”という根源的な問いかもしれない。
<参考・引用>
芦野公平氏note「装画に関するご報告と経緯のご説明」
芦野公平Xアカウント(@ashiko)
三笠書房ホームページ