「残酷な天使のテーゼ」などで知られる歌手の高橋洋子さんが6月19日に自身のXを更新。7月10日に出演を予定していた音楽イベント「池袋アニメーションフィルハーモニー」の第一回演奏会への参加を辞退したことを明らかにしました。
これを受けイベントの実行委員会側は、チラシ・HPに使用している画像が生成AIを用いているのではないか、などの指摘が多くの方からあり、高橋さん側からもこうした状況での出演は好ましくない、と意見があったと説明。生成AIイラストを巡る議論が活発化しています。
高橋さんは発表の中で「運営の姿勢につきまして、高橋洋子の想いと異なり、アーティストとして向き合うことができない出来事がございました」と経緯を語り、熟考の上、出演を辞退したと説明。お知らせの最後にはお詫びと共に「高橋洋子の気持ちとしては、アニメを深く愛する皆様の気持ちを最も大事にしたいと思っております」と記されています。
一方のイベント実行委は「アニメを愛する楽団を名乗っているのにもかかわらず、昨今の生成AIを取り巻く問題について自覚が足りなかったことを恥じております」と自責。「また、作品に対する配慮、アニメやそれに関わるクリエイティブを愛するみなさまの気持ちを汲み取れなかったことに気付き、実行委員一同深く反省しております」と謝罪しました。
チラシやHPに使用している画像は、すでにイラストレーターに依頼した作品に差し替え済みで、演奏会については中止にせず、引き続き開催に向けて準備を進めていくことを表明。辞退を受けてのチケットのキャンセルや返金には応じる、としています。
一連の投稿を受け、SNSでは生成AIを用いたイラストに対する議論が活発化。「生成AIイラストは既存のネット上にあるイラストや版権画像をAIが模倣してるものなので、絵描きに対するリスペクトに欠けている」「作品の参考に使うならいいと思うけど、生成物そのままをチラシに載せてしまうのはウーンという感じはする」と、著作権や商用利用に対する問題提起が多くあげられていました。
一方で「AI使ってアニメーターの過酷な労働環境を改善しようって話もあるのに。類似性を調査した上で判断した方がよかったのでは」「断定できる著作権侵害が行われているわけでもないのに、なぜチラシの一枚でここまで騒がなければいけないのか」と、騒動に発展したことを疑問視する声も。過剰に反応することがキャンセルカルチャーの扇動になるのではないか、などと懸念されています。
生成AI作品に対する、法整備が追い付いていないことも問題ではありますが、今回の件が、今後イベントを行う際に生成AIを用いるべきか否か、のひとつの判断事例となりそうです。
<参考・引用>
高橋洋子official(@yoko_t_official)
池袋アニメフィル(@ikeaniphil)
※掲載画像は高橋洋子officialおよび池袋アニメフィル公式Xアカウントのスクリーンショットです。
(山口弘剛)
Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By 山口 弘剛 | 記事元URL https://otakuma.net/archives/2024062004.html