ショートメール(SMS)やメールアドレスに送られてくる「架空請求」。よく送られてくるということもあり、もはや見慣れた人が大半ではないでしょうか。
しかし、自分が実際使っているサービス名義となると、一瞬悩んでしまうもの。近ごろではそうした生活に密着したサービスの名前でばらまかれています。
よく見かけるのは、Amazon、イオン、ETC。いずれも生活に密着したサービスです。そんな中、読者から新たによせられたのは「東京電力エナジーパートナー」を名乗るメールでした。
詐欺被害は手口を知っておくことで、避けられる場合があります。今回も読者のみなさんのかわりに、メールの先をのぞいてきました。
■ 東京電力からの架空請求
今回のことの発端は、読者リクエストでよせられた「東京電力エナジーパートナー」と名乗るメール。実はリクエストをうけたあとに、筆者のもとにも同じメールが届きました。どうやら近ごろ流行っているもよう。
届いたメールの内容は次の通りです。
このメールは、未払いの電気料金についてご連絡させていただくものです。お手数ですが、以下の内容をご確認いただき、早急にお支払いいただけますようお願い申し上げます。 お支払い期限: 2024/4/9
ちなみに、筆者のもとに届いた東京電力を名乗るメールのアドレスは「ホットメール」でした。東京電力とあろうものが、無料メールサービスを使うとは、ネットの黎明期でもありえません。そして情報提供者の読者の元に送られてきたアドレスは、「実在する企業のアドレス」。偽装の可能性もありますが、もしかすると乗っ取られているのかもしれません。
さて、調査時点でメールに記された期限「2024年4月9日」はとっくに過ぎていますが、とりあえずアクセスしてみます。
■ 「電話番号ちょうだい」の意気込みが強い
アクセスしてはじめに出てきたのは、電話番号を入力する項目。電話番号から、請求書が検索できるらしいのです。なんともお粗末な仕様……。
通常であればまずは「ユーザ名」「パスワード」でしょう。明らかに「電話番号ちょうだい」の意気込みが強く感じられて、なんともあきれてしまいます。
ということで、そういう輩には適当な電話番号を提供。デタラメな番号を入力してみました。
すると、適当な番号でも難なく先に進めてしまう。どこまでこれはお粗末なんだろうか。
次に現れたのは、3830円の請求書画面。それにしても電気代やっす。
この額について少し気になったので調べてみたところ、現在は単身者でも「6808円」が月平均。その半分ほどの金額なので、どうやらかなり節約意識が高い人の電気代ということになります。もしかするとエアコンすら使ってないかも。
■ やっぱりカード情報もクレクレされる
その後の画面では、やはりカード情報を抜かれるようで、番号やらなにやら頂戴のオンパレード。
しょうがないので、とりあえず「ダミー」のカード番号を入れて先に進みます。
するとその先ではワンタイムパスワードの設定として、再び携帯電話番号が求められました。
ははーん、デタラメな番号だと意味がないからこれで正しい携帯電話番号を入手するわけだな。
なお、もしここで電話番号を渡してしまうと、ウザい営業が日夜問わずかかってきたり、しょうもないSMSがいっぱい届くようになります。これは過去の潜入から経験ずみ。よって、適当な番号を入力。
すると、ここから先は永久ループ。なかなか進まなくなりました。まあ、詐欺側にしてみたら携帯電話やカード情報も無事に盗んだあとなので、これで十分なのでしょう。本物の番号ならば。
ちなみにですが、本物の東京電力のサイトと偽物ではUI(ユーザーインターフェース)が若干異なります。怪しいメールだとおもうけれど、真偽がわからない……と不安なときは、「自分で検索して本物のサイトを見に行くだけ」で被害を避けられる可能性が高まります。ぜひクセづけるようにしてみてください。
■ 本物なのに疑ってしまうクセ
さて、調査はここまでで終了しましたが、実はこの話ちょっとした後日談がありました。
今回、リクエストをよせてくれた情報提供者(読者)より、再び連絡が……今度はイオンを名乗る相手から「入金確認が取れていない」というSMSが届いたそうです。
もちろんこれも「架空請求」だろう……と調べてみると、相手の番号は正式なものでした。イオンは昨今の詐欺対策の一つとして、問い合わせに使用しているメールアドレスおよびSMS用の番号を公開しています。本物かどうか悩ましいときは、一度ネットで検索してみるといいでしょう。
ということで情報提供者はその後、引き落としができないと困るので、自分の口座にちゃんとお金を入れたとのことでした。
それにしても、直前に東京電力の「架空請求」が届いていただけに、今回の情報提供者のようにこの手のSMSを、すなおに信じられない人が増えているのではないでしょうか。
結果、もしかしたら、相手を疑って引き落としができないままになってしまい、信用情報に傷をつけてしまう……なんてこともあるかも。これはある意味、由々しき事態なのかもしれません。
(たまちゃん)
Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By たまちゃん | 配信元URL:https://otakei.otakuma.net/archives/2024041501.html