防衛費の増額に伴う財源として令和5年度税制改正の大綱に明記された「たばこ税」。2024年以降に増税が検討されています。
それに伴い、加熱式たばこ「IQOS」を展開するフィリップ モリス ジャパン合同会社が11月16日、「煙のない社会を目指して たばこ増税に関するメディアセミナー」を開催。有識者らを招いて意見交換をおこないました。
今回のテーマは、「紙巻たばこと加熱式たばこを取り巻く増税とその影響を考える」。最初にフィリップ モリス ジャパン合同会社の副社長である小林献一さんが登壇し、日本におけるたばこ税の現状などについて説明。
日本国内における加熱式たばこと紙巻きたばこの税率を比較すると、製品によって違いはあるものの、平均10%~30%ほど加熱式たばこの方が低くなっています。しかしEU加盟国では平均63%程度、OECD加盟国では平均55%程度と、加熱式たばこの税率がより低く設定されており、健康への影響を勘案しているためとのこと。
葉っぱの重さや市場価格など製品によってたばこ税は変わるものの、最大で一箱100円の増税が検討されています。たばこが国家財政の一般的な財源とされる観点から、たばこの増税そのものに反対ということではないとのことですが、これにより、加熱式たばこのユーザーはもちろん、飲食・宿泊施設やたばこ販売店などに大きな影響が出ることが見込まれていると、小林さんは語ります。
このような状況を危惧して、実際に加熱式たばこの増税に懸念を表明する要望書には、約8000軒のホテルやレストランなどが賛同し、約9500筆の署名がたばこ販売店より集められているそうです。
■ 国外の税制策の考え方と、あるべきたばこ増税
続いて、アメリカのワシントンを拠点とする公共政策のシンクタンクである「プログレッシブ・ポリシー・インスティテュート」でエグゼクティブ・ディレクターを務めるリンゼイ・マーク・ルイスさんが登壇。「国外の税制策の考え方と、あるべきたばこ増税」についてプレゼンをおこないました。
ルイスさんは、アメリカ・ミネソタ州の経済学者の調査結果を紹介。これは、もしも紙巻たばこと加熱式たばこの税率が同じだった場合、たばこ屋のお客さんのうち毎日平均1%の人が紙巻たばこに切り替えてしまうというもの。それほど税制というものは大事だといいます。
日本でEUやOECD加盟国に比べ紙巻きたばこと加熱式たばこの税率差が少ないにもかかわらず、数多くの人が紙巻たばこから加熱式たばこに切り替えています。ちなみに税率差が大きいイタリアなどでは10年後にはすべて加熱式たばこに切り替わり、紙巻たばこのユーザーはいなくなるだろうと言われているのだとか。
アメリカも数年後には同じようになっていると考えられているそう。また、数百万人に及ぶすべての成人喫煙者が加熱式たばこに切り替えたら、1人あたり年間1800ドル相当の医療費を削減できると試算されているとのこと。
■ 「もっと議論を重ねてほしい」の意見も
ルイスさんのプレゼンが終わると、消費経済アナリストの渡辺広明さん、カフェやクラブなどを経営する株式会社グローバル・ハーツ代表取締役の村田大造さん、秋葉原でたばこ販売店「ミマツたばこ」を営む山本荘司さんを迎えてパネルディスカッションがおこなわれました。
加熱式たばこの登場による変化や影響について、山本さんは年々需要が高まっていることを毎日、肌で感じているそう。売り上げの40%を加熱式たばこがしめているのだとか。元々コンビニで22年間働いていたという渡辺さんは、コンビニの売り上げの4分の1は「たばこ」だと明かします。
さらに今でも年5回ほどコンビニでレジを打っており、加熱式たばこはどんどん品ぞろえが増えていき、購入するお客さんも増えていると実感。加熱式たばこの存在というのはコンビニにとっても大きいと語ります。
加熱式たばこの増税については、「お金がない若者に影響が出る」と予想する村田さん。他にもお店の換気設備を増やしたりエリアを分けたりしたのに、値段が上がり紙巻たばこの需要が増えると、設備のバランスが崩れて再び投資をしなければいけなくなると危惧。
「個人消費が厳しくなっているところでの値上げはお客さんの離脱に繋がる」と渡辺さん。山本さんも「紙巻たばこの需要が増えてしまうのでは?」と懸念している様子。少しの値上がりもお客さんにとってはシビアな問題ということが店頭に立っているとヒシヒシと感じるそうです。
最後に司会から「今後に望むこと」を問われると、「もっと慎重に議論を」と山本さん。村田さんもコロナの影響や食材の高騰で多額の借金を抱えているところもあるので、改正の時期や時代のニーズなどを加味したうえで「もっと議論を重ねてほしい」と願っていました。
取材協力:フィリップ モリス ジャパン合同会社
(取材・撮影:佐藤圭亮)
フィリップ モリス ジャパンが「たばこ増税」に関するメディアセミナー開催 | Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By 佐藤圭亮