日常的に「方言」を使う人にとって、どの言葉が方言なのかを認識できていない場合があります。都会にでてはじめて他人から指摘をされ「まじかよ!」と驚くこともしばしば。
今回紹介するのは、まさにそんな事象の一つ。どこにでもある文房具「定規」について、静岡県ではかなり独特な表現で呼んでいることについ最近気づきました。
そもそも皆様は定規のことを、何て呼んでいますか?え?定規以外ないんじゃないの?と思うのかもしれません。もしくは、「ものさし」という方もいるかも知れません。
筆者は、静岡生まれの静岡育ち。一時就職で県外に住んでいた時期もありますが、今はUターンし静岡在住です。つまり根っからの静岡人。
よって、この文房具についても「定規」や「ものさし」ではなく、全く違う名前で読んでおりました。しかもそれが「方言」であることに気づかず、ここまで生きてきたので、かなり衝撃です。
では、何て呼んでいたのか、その名前は……
「せんひき」です。
線を引く道具だからゆえに、「せんひき」。当たり前の理屈であり、何も迷うことがない表現。仮にこれが「方言」だとしても、何がおかしいのか?と疑問に思うレベルです。
そこで静岡県民を対象に、この文房具の呼び名について個人的にアンケートを行ったところ、半数近くが「せんひき」と回答。
この状況に対し「せんひき」派の静岡県民はSNSで、「線引きとしか言わん」「別地域ではこの呼び名あまりしないらしい」「線引き 遠州人ならこの呼び方しか認めん」と、「せんひき」以外の表現は認めない強気な姿勢。もちろん筆者も同感。
■ 「ものさし」「定規」「せんひき」の違い
ちなみに「ものさし」と「定規」の違いですが、読んで字の如く「ものさし」は、物の長さを測る道具。「定規」は線を引いたり、カッターを当ててカットしたりするための道具、という意味があります。
この定義でいうと、静岡弁で言う「せんひき」は、線を引く道具という意味であることから「定規」ということになります。
なお、定規を「せんひき」と呼ぶエリアについて調べてみると、朝日新聞デジタルが公開している「せんひき」のページを見つけることができました。それによると、もとは「定規」「ものさし」と区別するために、「プラスチック製定規」をさして「せんひき」と呼び、関東広範囲で使用されていた言葉だそうです。
ところが時代の変化とともに区別することが減り、いまでは「関東周辺部に残るドーナツ状の分布」とのこと。
【もともとの違い】
・ものさし:物の長さを測る道具
・定規:線を引いたり、カッターを当ててカットしたりするための道具
・せんひき:プラスチック製定規
※注意:いまでは一般的に大差なく使用されています。ものさし警察や、定規警察などの行為をSNS上で行わないように。
これら背景から読み取れるのは、「せんひき」の使用エリアの減少にともない、残った地域では地域独特の方言扱いになっていった、という感じではないでしょうか。言葉の変化や残り方って、おもしろいですね。
ということで、静岡県民の方は県外民と話すときにちょっとだけ注意を。残念なことに我らが「せんひき」は通じないことが多いもようです。あんまり「せんひきせんひき」言っちゃいかんだにー!
<参考・引用>
朝日新聞デジタル「せんひき」
(たまちゃん)