日本の産業用ドローンメーカーである株式会社ACSLが2023年1月16日、国連の専門機関である万国郵便連合(UPU)に加盟しました。日本郵便をはじめ世界各国の郵政サービス機関が加盟するUPUに、ドローン関連企業が加盟するのは世界で初めて。
これにより、世界各国におけるドローンを活用した郵便・物流に関する規格の標準化に、日本が大きく貢献することになります。
郵便や物流サービスで将来の課題とされているのが、配送を担う人材の減少。特に拠点から個々の宛先へと配送する「ラストワンマイル」という部分では、多くのドライバーを必要とするものの、必要な人材確保が困難になると予測されています。
このラストワンマイルを担う存在として期待されているのが、ドローン(無人航空機)の活用です。特に配達距離が長くなりがちな山間部など過疎地域では、自動(自律)制御で飛行し設定された宛先へと郵便物や荷物を配送できるドローンは、とても有効なソリューション。
株式会社ACSLは、2013年に設立された産業用ドローン開発企業。インフラ点検や物流、防災など様々な分野で使われるドローンを開発し、様々な産業分野におけるドローン活用を事業者とともに進めてきました。
郵便・物流におけるラストワンマイルについても事業者と協力して実証実験を積み重ねており、2018年には福島県で初の「レベル3(無人地帯における目視外自律飛行)」に成功。2019年から2020年にかけては東京都奥多摩町で、レベル3によるラストワンマイルの配送を成功させました。
2022年12月には、レベル4(有人地帯上空における目視外自律飛行)制度開始に合わせ、これまで以上に搭載能力や航続力をアップさせた新型ドローンを発表。これまでは搭載量1.7kg(宅配便80サイズ相当)・最大飛行距離10kmでしたが、搭載量5kg・最大飛行距離約35km(想定値)と大幅に性能が向上し、日本郵便との実証実験に投入予定だといいます。
今回、国連の専門機関である万国郵便連合(UPU)への加盟が認められたことで、株式会社ACSLは世界初かつ唯一のドローン関連企業として、世界各国におけるドローン配送に関するシステムやガイドライン策定に大きな役割を果たすこととなります。
それと同時に、日本がこれまで実施してきたドローンによる郵便・物流サービス実証試験結果を各国と連携しながら展開することで、日本発のドローン運用ノウハウを発信可能に。世界各国からの情報収集も容易となり、日本がドローン配送実現に向け中心的存在となることも期待されます。
今回、ACSLのUPU加盟にあたり、UPU事務局長・目時政彦氏は「ACSLには、実証実験による知見が多く蓄積されており、これから国際郵便における各種課題の早期発見や対策の検討などに一緒に取り組んでいける存在としてとらえております」とのコメントを発表。
ACS代表取締役社長・鷲谷聡之氏は「ACSLは、UPUに加盟する世界初のドローン関連企業として協力体制を構築し、公正で開かれた国際的な郵便・物流サービスへの貢献はもちろんのこと、日本国内の技術・サービスの発展にも貢献したいと考えております」とコメントしています。
郵便・物流におけるラストワンマイルを担う人材の不足は、世界的な問題となっています。日本製のドローンによる配送システムが世界標準になる可能性を感じさせる今回のUPU加盟は、ドローン開発のみならず、日本の産業界にとっても大きな希望となるかもしれません。
(咲村珠樹)