「雨晴の庭」という屋号で様々な「いきもの」の造形作品を制作している、ちぴょさんのこだわりは「表現の仕方に合わせて、素材や技法を選んでいく」ということ。
その時々で「作りたい!」と思ったものを作っていく中で、先日は11月19日・20日に開催される「デザインフェスタ56」に合わせ、新作の「馬ドール」を会場に連れていくとTwitterに投稿しました。
「尾花栗毛の四足靴下、白面お鼻ピンクの派手顔の子」な本作は、往年の名馬「トウショウファルコ」や「ゴールドシチー」などといった、美しい金髪のたてがみと尾が特徴的な馬体で、130以上のパーツを縫い合わせることにより生み出されています。
また「馬の持つ様々な表情やポーズを堪能できるドール」もコンセプトのひとつ。立ちポーズや横たわる姿など、馬独特の筋肉質なディティールが伝わってくるフォルムも印象的です。
その「筋肉質な体」をぬいぐるみで表現することに、もっとも注力したというちぴょさん。
「あらかじめ馬の筋肉の付き方を勉強してから、型紙を細かく分けて『凹凸感』を表現しています」
ご紹介した通り、本作に要したパーツ数は130以上にものぼりますが、その要因となったもののひとつが「骨格」。3Dデータを一から作成し、それを3Dプリンタで出力して、組み上げたものが中に仕込まれているんです。
文字通りの「骨組み」を作ったのち、まるでパズルのごとく表皮のパーツを縫い合わせたのが本作。だからこそ、ぬいぐるみとは思えないほどの躍動感が伝わってくるんですね。
「完成まで苦労はしましたが、平面だった布が、縫うごと立体的に組みあがっていくのはとてもワクワクする体験でした。“本物”と暮らすのはハードルが高いですが、ドールなら一緒に暮らせます。『くつろいでいる横に小さな愛馬がいたら最高だよね!』という思いで生まれた作品です」
幼少期からのいきもの好きで、動物園や水族館へ行くと「観察」に夢中になり、そこから微動だにしなかったというちぴょさん。そういった「下地」もあって、取り扱う題材は哺乳類の他に、鳥類・爬虫類・両生類・魚類・昆虫類、はてはドラゴンといった架空の生物と多様です。
また、制作ごとに都度新たな技法を取り入れており、デジタルアナログ問わず、変化自在にいきものたちの「リアル」を伝えています。次の作品はどんなものになるのか、今から楽しみになってしまいますね。
<記事化協力>
ちぴょ『雨晴の庭』さん(@tipyo0222)
(向山純平)