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岩合光昭監督への猫目線インタビュー〜初監督作品『ねことじいちゃん』を語る〜





岩合光昭さん初監督作品『ねことじいちゃん』が、本日2月22日の猫の日に全国で各地の映画館で一斉封切りされることは、このブログをご覧の 「世界ネコ歩きウオッチャー」でしたらすでにご存じかとは思います。個人的には主役が志の輔師匠ってところにビビッと来たりもしましたが、このたび岩合監督へインタビューする機会を得まして、いろいろ考えた結果、いつも通り猫目線で話をうかがおうと心を決め、インタビューを敢行した次第です。
実を申しますと、あらかじめうかがおうと思った点の多くは、メディア用のプレスシートに掲載のインタビューに答えが書いてあったため、猫目線での質問をぶつけて参りましたので、ご覧いただければ幸いです。映画の事前情報やトレーラーはこちらの公式サイトからどうぞ。
撮影中、猫のストレスを軽減するために、どのようなことを心がけられたのでしょうか?
岩合監督(以下「岩合」):ドキュメンタリーの『岩合光昭の世界ネコ歩き』でも、スタッフとの間で「猫が嫌がることをするのはやめようね」と常に言っていまして、映画でもそれと同じように、スタッフ皆で猫に負担をかけないようにしたことが、撮影のなかで一番努力をしたところじゃないかなと思います。
具体的には、この場所にいるところを撮影したいけれど、猫がそこから出て行ってしまうならば、2~3回頑張ってもらってダメなら、できる形に変えたり、猫の居心地が良くなるように工夫したり、そういうことを常に心がけました。また、映画だと撮影時間が長くなってしまいがちですが、撮影スケジュールを組むときにも、1匹の猫を長時間撮影で拘束しないようスケジュール割りをしていきました。あくまでも“猫ファースト”の映画だったと思いますね。撮影にしても。ただ、主役のタマ(ベーコン君)には、いくつもお願いしなきゃいけない日が、どうしてもあって。でも、彼はそれに応じてくれるような猫なので、すごく助かりましたね。
“猫ファースト”ということはキャストの方々、著名な俳優さんがたにも理解いただいて。「申し訳ないんですけど猫映画なんで」と伝えたら「それは分かってる」って答えてくださるんです。この映画に出演してくださる理由が「猫、好きだからね」ということを、皆さんおっしゃっていただいたんで、すごく助かりました。
出演者のなかで、出演猫から好かれていた方はどなただったでしょうか?
岩合:柴咲コウさんが、もう圧倒的人気でしたね。ノエルちゃんと暮らしていらっしゃいますし、本当に猫に好かれる方ですね。
柴咲さんの撮影があった日のことです。彼女をはじめキャストがメイクなどをする建物に、35匹の出演猫たちの“控え室”もあったんです。猫たちの鳴き声を聞いた柴咲さんが控え室へ行って、ぱっとケージを見たとき、たまたまトイレの掃除がされてなかったんです。そのときは十何匹がいっぺんに出演するシーンで、いつもは猫の世話をしているプロダクションの方が全員出払っていたんですね。
そのとき、柴咲さんが真っ先にトイレの掃除を始められたんです。そうしたら、メイクさんやスタッフさんたちも掃除を手伝って、全員で猫のケージを掃除してくれたことがありました。これから自分の出番だというときに、そこまでやってくださるのって、すごいなと思いました。役を忘れて猫のことを考えてくださっていました。
猫目線で、注目してもらいたいシーンはどこでしょうか?




岩合:
やっぱり他の猫の動きや動くものに猫は敏感ですから、猫が見たら反応するシーンは多分随所にあると思いますね。それと、人物用の照明を映画では使うんですが、猫用の照明も作ってもらい、キャストだけでなく猫も立体的に映るようにと考えて撮影していました。人間を撮るときとの違いでいえば、猫も生き生きと見えるようにアングルは低めに。カメラを構えてモニターを見た第一声で「もっと低く」と、常に口にしていたような気がします。まさに猫の目線ですね。
主役のタマを演じた、ベーコン君
主役のタマは「島で生まれて島で生きている猫」を演じましたが、都会の猫とは違う“島の猫”をどう表現されましたか?
岩合:東京で、外で出会う猫は判断能力がすごく速いと思います。生物としては当然ですが、不特定多数の人を見てきているので、「この人は私に危害を与えるか与えないか」という判断がもう即座にできるんですね。それに対して、島のネコってやっぱりのんびりとしてるので、島の人たちののんびりと動く感じだとか雰囲気だとか、それと同じような「その島の空気感で生きる猫」という感じを出すのに、それはすごく考えながら撮影をしました。
例えば、島の風っていうのは急激にヒュっと吹く風なんですね。塀の上を猫が移動するときに、ヒュって風が吹いて、猫の毛がふわっと風になびいたりする瞬間などは、多分スタジオでは撮れませんし、東京でもなかなか撮れないと思います。島独特の風がそこに吹いているという、そういう感じは取り入れました。自然とともに人も猫も暮らしている、生きているということは、常に映画の中でも取り入れようとしていましたね。
ドキュメンタリーや自然番組と、映画との違いを感じられた部分はどこでしょうか?
岩合:「演出されない世界」と「演出した世界」、一番の違いはそこでしょうね。絵のこだわりを最後まで持てるのは「演出した世界」だと思います。その絵のこだわりを持ってたらいつまでも撮れないっていうのがドキュメンタリーの世界ですよね。
脚本家の坪田文さんには、「猫のストーリーも人のストーリーと並行して、必ず一緒に流れていくように」と依頼して、ものすごくよく書いて入れていただきました。それに沿って、でもそこを膨らませるとか、バランス的にここは短くていいとか、「非演出」と「演出」とのバランスを見ながら撮影していきました。でも結局、「いい猫のシーンが撮れたな」という箇所は、ほぼすべて使いましたね。ディレクターズカットはできないぐらい(笑)。
ベーコン君との挨拶はおでこを擦り合わせて
猫を愛する猫ジャーナル読者諸兄に向けて、『ねことじいちゃん』の見どころをお教えください。
岩:猫の映画なので、「猫が何かするんじゃないか」って期待してご覧になる方も多いかもしれませんが、この『ねことじいちゃん』では、肩の力を抜いてリラックスして見ていただければと思います。もうとにかく全シーンに猫が出てきますので、猫を探す気分で。

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岩合さんのお話通り、春夏秋冬すべてのシーンに猫が登場する映画となっておりますので、世界ネコ歩きで鍛えた猫センサーを存分に活用しつつ、リラックスして映画館にてご覧いただき、DVD・Blu-ray化された折には自宅で猫と一緒にリラックスしながら見るのがよろしいかと思います。
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