『膵炎』とは

まず膵臓は上腹部に位置し、胃と十二指腸の間にある臓器です。横に長く伸びたような形状をしており、消化酵素の生成や分泌、インスリンというホルモンの調整を行っています。
膵炎とは膵臓にトラブルが生じ、炎症が起こることによって様々な症状を呈する病です。本来であれば十二指腸に届いから活性化する膵液が、膵臓内で機能化され膵臓を溶かしてしまうという恐ろしい現象です。(自己消化という)
猫が膵炎を発症した場合は隣接した臓器(肝臓・胆嚢と胆管・腸)にも炎症が及びやすいことが特徴です。従って膵炎が元で併発するこれらの臓器の炎症を『三臓器炎』と呼びます。
中高齢の猫に多く痛みは感じにくい場合がある

猫における膵炎は中高齢期(7〜10歳)に多いという特徴があります。かつては稀な病気でしたが、近年では死亡解剖を行った猫の60%に慢性膵炎の初見があったとの報告があります。
ところで、膵炎と聞くと激しい痛みを伴う病気というイメージがありませんか?確かに人間の場合はそうなのですが、猫の場合はのたうち回るほどの痛みが出ないことが多いそう。よって、気づきにくい厄介な病気だといえます。
膵炎の種類と原因

膵炎には『急性膵炎』と『慢性膵炎』があります。それぞれの特徴を紹介いたします。
急性膵炎
急性膵炎は、自己消化と炎症が急激に起こるタイプの膵炎です。腹膜炎や消化管の炎症も同時に引き起こされます。
幸い、早期発見から早期治療へと結びつけることができれば回復する可能性が高い病気です。一方、発見が遅くなると多臓器不全を起こし、命に関わるという恐ろしい側面を持っています。
慢性膵炎
慢性膵炎は、ゆっくりと時間をかけてジワジワと炎症が続くタイプの膵炎です。膵臓の機能が徐々に破壊されて衰えていくので、自覚症状がないというのが特徴です。
一度失われた機能は元に戻ることはありません。よって、できるだけ早く発見し、治療に結びつけることが重要です。また、食生活の見直しなど膵臓に負担のかからない生活をすることが大切です。
ちなみに猫の場合は、急性から慢性へと移行したり、慢性の状態から急性転化を起こす場合があります。
原因
そもそも猫の膵炎はなぜ起きてしまうのでしょうか。いくつか原因をピックアップいたします。
- 遺伝的な要因
- ストレス
- 交通事故や転落事故による損傷
- 免疫疾患の関与
- 薬物の影響
ちなみに犬の場合は、高脂血症や高脂肪食による影響が要因になることがあります。しかし猫の場合は、これらの要素は関係ないとされています。
膵炎の主な症状

膵炎が起こる仕組みや種類、原因などは何となく見えてきましたが、結局のところ膵炎を発症した猫の身にはどのような症状が起こるのでしょうか。
急性膵炎における主な症状
- 1日に何度も吐く
- 下痢を繰り返す
- 痛みでうずくまる
- 食欲や元気がなくなる
- 動きが鈍くなり次第に活動性が低下する
これらの症状が急激にかつ、短期間のうちに現れるのが特徴です。急性膵炎は自然治癒が見込めない病気です。異変に気づいたら、夜間救急も含めてその日のうちに診察を受けるようにしてください。
慢性膵炎における主な症状
- 基本的にはっきりとした症状が現れない
- 数日間に1回嘔吐や下痢の症状が現れる
- 進行すると徐々に体重が低下する
- 毛艶が悪くなる
- 何となく元気や食欲がない
慢性膵炎は進行がゆっくりなため、症状の現れ方も緩いことが特徴です。中には消化器症状(嘔吐・下痢)が全くないケースもあります。
やはり早期発見が重要なので、愛猫の様子に違和感を覚えたら診察を受けるようにしてください。病状の改善と再発を繰り返しやすい病気です。
その他合併症
膵炎における合併症は、付随する近くの臓器の胆のうや肝臓へのトラブルです。
膵炎が原因でこれらの臓器に異常がないかを確認してもらうのはもちろんのこと、逆に腸炎や肝臓の数値の異常がある場合は膵炎の可能性を疑ってもらうことが重要です。
慢性膵炎においてはインスリンの分泌が阻害されるため、糖尿病を併発する恐れがあります。
治療法と予防法

大切な愛猫が膵炎を発症してしまったら、どのような治療法があるのでしょうか。また、日頃から予防することは可能なのでしょうか。
治療法
まずは基本的には一度入院し、静脈点滴によって輸液を流します。
特に消化器症状が目立つ際には、輸液による脱水改善と予防・吐き気止めの投与・消化管の動きを良くする薬の投与などを輸液と共に流します。
更に痛みがある場合や曖昧だけれど食欲不振が続く場合には、痛み止めも用いていきます。痛みや吐き気が改善されることにより、少しずつ口から栄養が取れるようになります。
その間、食事が取れない場合にはシリンジによる強制給餌やカテーテルによる流動食の投与が行われる場合があります。
猫は3日間絶食状態が続くと『肝リピドーシス』といって、肝臓が機能しなくなってしまうからです。
合併症として近くの臓器へのトラブルがある場合にはそちらの治療も並行して行なわれます。背景として感染症がある場合には、ステロイド薬を用いて炎症を抑える治療が行なわれます。
予防法
膵炎のメカニズム自体が明確ではないので、残念ながら予防に特化したものはありません。
しかしながら、日頃からよく触れ合い、行動を観察することで違和感に気づくことはできるかもしれません。
母の勘ならぬ飼い主さんの勘を信じ、少しでも腑に落ちない点があれば獣医さんに相談しましょう。
また、7歳を過ぎたら定期的な健診を受けておくと安心です。
まとめ

最近活発ではなくなった、以前より食べる量が減った気がするなどなど。一見すると加齢に伴う変化のように思われがちなこれらの行動の背後には、恐ろしい『膵炎』という名の病が潜んでいるかもしれません。
くれぐれも、加齢や高齢による変化と決めつけずにまずは自分の直感を信じましょう。いくらシニアと言えど、ある日突然衰えることはありません。繰り返す嘔吐も、最近になって時々見られるようになった嘔吐も"猫にはよくあること"と軽視しないように気をつけましょう。
猫は違和感の正体を言葉で言い表すことができません。膵炎は早期発見が重要です。そして他の病気との判別も大切です。いずれも獣医さんのサポートなしには実現しないので、"なんか変"と感じたら、できるだけ早めに医療にかけるように心がけてください。
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