1.ピンと立てた三角耳(素のわたしです)
しっぽと同様に、猫の耳は自分の気持ちを雄弁に語ります。ほとんどの猫の場合、耳をまっすぐ立てた状態が通常モードです。穏やかで、ゆったりした心理状態を表しています。
素の状態から、ピンと立てた左右の耳を忙しなく動かし始めると、まわりの音を注意深く聞き分けている証拠です。猫の優れた聴覚は、可聴領域で言うと、人間の約3倍もあると考えられています。
物音や気配に反応するたびに、耳の向きが目まぐるしく変化します。その姿はまるで高性能レーダーのよう。自慢の能力を駆使して、情報分析の真っ最中です。
さらに、耳の向きにつられるように顔も動くと、特別な関心を寄せているサインです。帰宅する飼い主さんの足音やごはんを用意する音、あるいは、遠くで鳴るサイレンの音などを熱心に聞き取りしています。
耳の動きを見るだけでも、いかに猫が豊穣な音世界に暮らしているか、とてもよくわかります。
2.イカ耳(クサクサしています)
次に挙げるのは、耳が後ろに反り返った状態です。見るからに緊張感がみなぎっています。俗に言う「イカ耳」と呼ばれるもので、大半のケースでは、ネガティブな感情を表現しています。
状況によってさまざまな意味がありますが、代表的なのは「怒り」の気持ちです。猫同士のバトル、知らない人の接近など、恐怖心や不安感に襲われたとき、身を守るため、「イカ耳」に武装化します。
相手が一線を越えて踏み込んでくると、とたんに反撃するのも特徴です。「シャーッ!」と威嚇し、「猫パンチ」で応戦します。場合によっては、飼い主さんでさえもターゲットになりかねません。
もし愛猫が「イカ耳」になっていたら、「あと一歩でも近づいたら、反撃すっぞ!」の合図です。その際は、むやみに刺激しないように、近づかず、一定の距離を保って、愛猫の気持ちが落ち着くのを待ってあげましょう。
3.外向きリラックス耳(くつろいでいます)
力を抜いた状態で耳をやや外側に向けているときは、リラックス中です。似たようなスタイルの「イカ耳」ほどは張り詰めていません。猫の表情的にも、「何人たりとも許さん!」という緊迫感はなく、ほどよく脱力しています。
ウトウト時によく見られる耳のかたちであり、猫からすると、「イカ耳」とは違った意味で、邪魔して欲しくないタイミングです。自分だけの世界に没頭し、好きなようにくつろいでいます。
いずれにせよ、愛猫が耳を外側に向けていたら、そっとしておくのが無難です。下手にちょっかいを出すと、「リラックス耳」から「イカ耳」へと急展開します。
ちなみに、猫の耳の先には、房毛(リンクスティップ)と呼ばれる、ちょっとだけ飛び出した毛があります。感度良好なセンサーとして、ハンティング時に重要な役割を果たすパーツです。
メインクーンを代表とする長毛猫種のトレードマークですが、実は、短毛猫種の中にも持っている子がいます。ただし、長さは「気持ち程度」です。改めてじっくり観察してみると、みなさんの愛猫の耳にもキュートな房毛が見つかるかもしれません。
まとめ
猫は、言葉を持たない代わりに、自分の身体を使って気持ちを表します。しっぽのように、耳もまた、猫にとって重要なコミュニケーション手段です。
今回は、デフォルト状態、通称「イカ耳」、リラックス中、3つのパターンに分けて解説しました。愛猫がどんな心理状態にあるのか、飼い主さんも興味津々でしょう。
耳の動きは、貴重なサインです。愛猫の気持ちをより深く知るために、これからも「耳読力」に磨きをかけてみてください。
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