1.遊びの一環
子猫や遊び盛りの若い猫は、遊んでいる途中に興奮して急に噛むことがあります。猫同士なら「プロレス」がはじまるような、楽しいコミュニケーションのひとつです。大好きな飼い主さんに、自分と同じように遊ぼうと誘っているのです。
ときに、猫は遊びの中で飼い主の手や指を、獲物に見立てて噛むことがあります。これは飼い主に対する攻撃ではなく、あくまでも狩りごっこという猫らしい遊びの中で「イマジナリー獲物」に対してやっているのです。
ただし、噛み方があまりにひどい場合には、人の手で遊ばせないようおもちゃを噛ませるようにしましょう。しつこく噛む場合には、無言で立ち去り部屋に猫を残します。人の手を噛んだら、一緒に遊んでもらえないことを学習させてください。
2.過剰に触りすぎ
愛猫を撫でていると、ゴロゴロと喉を鳴らしてうれしそうにしているかと思えば、突然ガブリと噛まれることがあります。
これは猫の性格によって異なり、必ずしも噛むわけではありませんが、なかには「もうやめてほしい」という意思表示として噛む猫もいます。特に、お腹や手足などの敏感な部分を撫でたときに起こりやすいでしょう。
猫は気持ちの切り替えが早く、最初はうれしさを感じていても、「もう嫌だな」と感じた瞬間、自己防衛のスイッチが入って反射的に噛むことがあります。
猫は撫でられたくないと感じると、しっぽをバンバン振ったり、耳を後ろに倒したりといった不快のサインを出します。このサインが見られたら、すぐに撫でるのをやめるようにしましょう。
3.注意を引きたい
飼い主さんが何か別のことをしているときに、注意を引きたくて噛むこともあります。特に、お腹が空いた、つまらないなど、強く伝えたい気持ちがあるときに見られます。猫にとっては「どうしたら飼い主が自分に気づくか」を考えた結果なのでしょう。
一方で、噛み方がガブッであっても、強さが甘噛みであったり、噛む前にスリスリしてきたりするのであれば、飼い主さんへの親愛表現の場合もあります。猫は小さいときに兄弟猫や母猫と遊ぶときに、噛むことで信頼関係や社会性を学ぶため、親愛の表現のひとつとして残ることがあるのです。
あまりにも思いがけないタイミングで噛んでくる場合は、もしかしたら愛猫は日頃から飼い主さんからの注目が足りないと感じている可能性もあります。
毎日少しずつでも猫とのふれあいを増やすことで、注意を引くために噛まなくても大丈夫ということを伝えましょう。
4.体調不良や痛みがある
寝ている猫を触って、ガバッと起きた途端に噛んできた場合は、猫が体のどこかに痛みを感じている可能性があります。触られた部分の不快感が原因となったのかもしれません。猫には、具合が悪くても隠そうとする習性があるため、飼い主は気がつきにくいのです。
触れた途端にいきなり噛まれると驚いてしまいますが、猫が体調不良時に噛む行為は、猫からの苦痛を示す見逃せないサインです。内臓疾患や関節炎などで慢性的な痛みがある場合は、触れられることで痛みが増すことを恐れて、飼い主が近寄ろうとすることも拒絶するかもしれません。
特にふだんはおとなしい猫が急に噛むようになったときには、体調不良や痛みが隠れているかも知れません。寝ている時間や食欲の変化などを総合的に見て、獣医に相談するのが良いでしょう。
5.ストレスからの八つ当たり
猫はストレスが原因となって、ガブッと噛んでくることもあります。引っ越し、新しい家具、ほかの同居動物、生活リズムの変化など、猫にとって不安な状況がストレスとなり、八つ当たりするのです。
猫の行動学では、このように感情や興奮を別の対象に向けて発散する行動のことを「転嫁行動」と呼んでいます。ストレスとなる原因はさまざまですが、転嫁行動は、猫の精神的な負担が大きすぎる際に見られる反応なので、一度だけでなく頻繁に噛んでくることが多くなります。
飼い主にできることは、猫の生活で変化した部分を特定して、できるだけ改善するように努めることです。たとえば、転居などの環境の変化を戻すのは非常にむずかしいものですが、猫のトイレの位置や砂を変えてみたなどであれば、以前のものに戻すなど対応可能な部分があるかもしれません。
原因はひとつだけとは限らず、複数が重なることも考えられます。ストレスの軽減には、猫が安心できる隠れ家の確保や、遊び時間を設けることが効果的な対策となります。
まとめ
猫が突然噛んでくる行動には、遊び本能や注目欲求から体調不良の警告まで、いろいろな理由があります。
噛み方が甘噛みであっても、かなり痛いですし、本気で猫に噛まれたら穴が開いてしまうでしょう。
しかし、一見ネガティブに思える猫の噛みつき行動も、猫なりに積もり積もった思いをぶつけてきていることに間違いありません。猫の困った問題行動だと感情的にならずに、猫が噛む行為に至った原因も考える必要がありそうです。
そして、噛む原因として体調不良の気配があるようなら、すみやかに獣医師に相談するようにしましょう。
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