猫のジェラシーとは
動物学者たちの中には「猫も嫉妬する」と考えている人もいます。実際に愛猫の行動を見ていて「嫉妬しているのかな」と思ったことのある飼い主さんは、多いのではないでしょうか。しかし猫と人の嫉妬には、心理面で少し異なる部分があります。
人の場合、嫉妬には大きく2つの心理が関係しています。1つは「自分と他人を比較し、自分よりも優れている人に対して抱く感情」で、もう1つは「自分に向けられていた愛情が他の人に向けられたことに対して抱く感情」です。
猫は人とは違い、他者と協力し合ったり、他者と切磋琢磨することで成長したりする機会があまりありません。
どちらかというと、すべての行動に自己責任が伴う「一匹狼型」の生き方です。そのため、「自分よりも優れている相手に対して」嫉妬心を抱くことは少ない傾向にあります。
その代わり、飼い主さんから受けていた愛情の一部が他者に向かってしまうことで不安になり、飼い主さんの愛情を取り戻そうと相手にジェラシーを燃やすということは、大いにあり得るでしょう。
自立する必要のなくなった現代のイエネコには「子猫的な気質」がいつまでも残っているため、飼い主さんからの愛情を失ってしまったと感じることで強い不安を覚え、愛情を取り戻そうと躍起になるのが猫のジェラシーだと考えられます。
猫がジェラシーを燃やすシチュエーション
1.新しい猫を迎え入れる
猫がジェラシーを燃やしていると思われる行動を最も見せるシチュエーションが、新しい猫を迎え入れた時です。以前から多頭飼いだった場合もそうですが、それまで飼い主さんと猫が1対1の関係で暮らしていた場合は特に多く見られます。
2.飼い主さんの家族が増える
猫だけではなく、新しい家族が増えた場合も同様に、ジェラシーを燃やしていると思われる行動を見せます。
この場合の家族とは、犬などの他の動物を迎え入れた、赤ちゃんが生まれた、飼い主さんに新しいパートナーができて頻繁に家に来たり同居したりするようになったなど、さまざまなケースが含まれます。
3.同居猫が病気等になる
同居していた猫が、長期にわたる通院治療やご自宅での投薬・看病・介護が必要な状態になってしまうと、飼い主さんがその猫につきっきりになることが多くなり、家族全体のバランスが崩れてしまいます。
このことがきっかけとなり、ジェラシーを燃やすことになるケースもあります。
4.在宅時に仕事ばかりする
新型コロナ感染症の流行により、在宅勤務に切り替わったという方も増えたことでしょう。飼い主さんの在宅時間が増えても、パソコンに向かって仕事ばかりしていて愛猫には目もくれなくなってしまうと、猫はパソコンに対してジェラシーを燃やすこともあります。
5.新しい趣味の沼にハマる
飼い主さんが愛猫を放ったまま夢中になるのは、在宅勤務時のパソコンだけとは限りません。ゲーム、配信動画、模型作り、楽器演奏などさまざまです。
何か新しい趣味の沼にハマってしまい、愛猫が放っておかれる時間が増えると、猫は新しい趣味の対象に対してジェラシーを燃やすようになることがあります。
嫉妬している猫へのアフターフォローおよび予防策
飼い主さんが自分に向けてくれる愛情が他に移ってしまったと感じた猫は、飼い主さんの気を引こうとしてちょっかいを出したり、甘えたような声を出したり、飼い主さんの視線の先に割って入ったりといった行動をとるようになります。
それでも飼い主さんの行動が変わらないと、次第にジェラシーの対象に対して攻撃的な態度を取ったり、自傷行為に走ったりすることもあります。
また飼い主さんのことを諦めて、心が完全に飼い主さんから離れてしまったり、ストレスで免疫力が下がり感染症にかかったりする可能性も捨てきれません。
愛猫のジェラシーに気付いたら「どんなに環境や事情が変わっても、飼い主さんの愛猫に対する愛情は変わっていない」ということをしっかりと示しましょう。猫のジェラシーへの、唯一のアフターフォローです。
赤ん坊や病気の猫のお世話、仕事等は手を抜くわけにはいきません。しかし、できるだけ愛猫に声をかける、手の空いている時には積極的にスキンシップを図ることで、しっかり愛情を示すことができます。
また、新しい家族が増える場合はいきなり対面させず、最初は「ニオイ」のついたものを嗅がせて慣れさせ、少しずつ距離を縮めながら対面させましょう。
新しいパートナーの訪問時に、愛猫が安心して過ごせる「猫専用の隠れ家」を作るといった準備を整えることでも、ある程度予防できます。
まとめ
猫のジェラシーの原因は主に「不安」です。「そのうちに慣れるだろう」と放っておくと、不安はどんどん膨らんで大きなストレスになってしまいます。なるべく早く気付いて適切に対処をし、不安を取り除いてあげましょう。
どんなに猫に愛情を注いでいる飼い主さんでも、長い人生を全く変化なく送り続けることは不可能です。
変化のない生活を続けることに努力するのではなく、変化が起きても愛猫に不安を与えない工夫と努力を続けることが、飼い主さんにも愛猫にも豊かな人生をもたらすことになるでしょう。
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