猫との生活をもっと幸せに送るために。
今回の猫壱よみものは、獣医師で米国獣医行動学専門医であり、そして猫愛にあふれる入交先生のご寄稿第3回です。
第1回はこちらです。
第2回では、おうちで暮らす猫にとって快適な環境を整えるをテーマに教えていただきましたが、今回は猫との暮らしにおいて重要な「トイレ」にフォーカスしてお届けします。
猫との生活を送る上での知識や、解決策のヒントがたっぷり詰まっていると思います。
「猫が幸せ、私も幸せ」な毎日の実現に、お力添えできますように…。
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猫がトイレの外で排泄をする問題は、一緒に生活するご家族にとっては大問題です。
布団の上などにおしっこをされるとニオイが取れなかったりしますし、カーテンにかけられるとシミになったりします。
また家の中が、なんとなく猫の排せつ物のニオイがしてしまいます。
おそらく数ある困った行動の中でも、すぐにでもなんとかしたい行動だと思います。
<そもそも猫トイレを使わない理由は何?>
トイレに排せつをしなくなる理由は大きく4つあげられます。1)腎臓や膀胱などの病気によるもの
例えば膀胱炎になってしまったために頻尿になり、トイレまで行くことが間に合わなかったり、トイレの中で排泄中におなかが痛かったので、トイレに行くとおなかが痛くなるから行かない、と思ってしまったり…という理由から、トイレを外す行動が見られます。2)猫がトイレを嫌がっている
病気がないのにトイレの外で、しゃがんで普通に排せつをしている場合ですが、猫がトイレが嫌っているのかもしれません。猫が好むトイレを猫が好む場所においてあげるようにしてください。
猫が好むのは、十分な広さのあるトイレです。
猫は排泄するときにニオイをかぎ、砂を掘り、排せつして、排泄物をトイレの中をうろうろしながら埋めていきます。
掘ったり埋めたり動き回る行動ができる十分な大きさのトイレを与えてください。
大体の感覚だと、頭からおしりまでの長さの1.5倍くらいは長さが必要です。
さらに、小さいトイレにカバーが付いていると、ニオイがこもったり、中で身動きが取れないので、カバーはない方がいいでしょう。
ただし、大きなトイレであればカバーはついていても問題ないようです。
砂は猫それぞれにこだわりがありますが、一般的には粒の細かい砂の方が好きです。
またきれいなトイレが好きですので、排泄物が付着した砂はどんなに抗菌処理されていたとしても汚れたらすぐに片づけてあげてください。
システムトイレの砂は数週間変えなくてもよいと記載はあるようですが、私が猫だったら汚れたら新しい砂に取り換えてほしいと願うと思います。
システムトイレの砂はどこが汚れているのかわかりにくいので、固まる猫の砂の方が汚れた砂をすぐに取り除けるので個人的にはお勧めです。
きれいなトイレを保つため1日2回はトイレをチェックして片付けてあげてください。
トイレの場所は静かな落ち着ける場所に置くこと、1か所にまとめずにいくつかの場所に置いておく方がよいです。
そうするとトイレの場所に何らかの問題がある場合(例えば苦手な同居の猫がいた、苦手なお子さまがいた、人通りが多かったなど)、別場所のトイレ設置箇所に行けるので、「あそこに行けなかったから、おもらししたの」という猫の訴えがありそうな問題もなくなります。
静かな場所が好ましいですが、人が全く様子が見られない場所はトイレの回数や残尿感がありそうかな、などのトイレでの健康管理ができなくなるので、人が猫の排せつの状況を確認できる場所が好ましいです。
3)スプレー行動
カーテンや家具などに霧吹き状におしっこをかけている場合です。これはスプレー行動と言って「マーキング行動」の1つです。
猫はおしっこにフェロモンを入れて、ラブレターとして使います。
フェロモンには猫の個人情報が入っています。
「ぼくは1歳、初めての彼女募集中」とか「私3歳、素敵な彼とデートしたいわ」などの情報をフェロモンとしておしっこに入れてあちこちにかけておきます。
そのため、このスプレー行動に対しては、不妊手術(去勢手術、避妊手術)をすることで、もうラブレターを書かないでも良いようにします。
猫は人と違って食べることもそっちのけで必死に相手探しをするような動物なので、不妊手術をしてあげることで落ち着いて毎日を過ごせるようになります。
4)ストレス
4つ目はストレスからの排せつの行動です。不適切な生活環境や痛みなど、身体的な問題があってストレスがかかると排せつの行動としてあらわれます。
いろいろなタイプのストレスがあるので、まずはじっくり猫を観察してストレスがどこからきているのか、見極める必要があります。
動物病院にご相談されて一緒にストレスのもとを探してみてもよいかもしれません。
入交眞巳先生 プロフィール
どうぶつの総合病院 行動診療科 主任(獣医師・獣医学博士)
米国獣医行動学専門医(ACVB)、学術博士
東京農工大学 動物医療センター 特任講師
著書:猫が幸せならばそれでいい:猫好き獣医さんが猫目線で考えた「愛猫バイブル」