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ほとんどの人が1種類のバナナしか食べたことがない理由


世界中のスーパーで「キャベンディッシュ」種のバナナが主に流通しているのは、消費者の求める一貫した品質、低価格、そして既存の流通インフラがこの品種に特化しているためです。多彩な品種があるものの、バナナのグローバルな生産と流通はキャベンディッシュに大きく依存しています。病害や市場の需要の変化がこの単一支配を崩す可能性があります。様々な品種が店頭に並ぶためには、病害や消費者の選択肢の多様化への投資が必要です。

スーパーに行くと、「ふじ」「つがる」「ジョナゴールド」など、様々な品種のリンゴを購入できます。

しかし、同じく品種が豊富で身近なフルーツであるバナナに関しては、ほぼ1種類しか並んでいません。

ほとんどの人は「キャベンディッシュ(英語:Cavendish)」という品種しか食べたことがないのです。

ここでは、世界の多くの人が1種類のバナナしか食べたことがない理由を解説します。

目次

  • バナナの品種は豊富
  • 多くの人がキャベンディッシュしか食べたことがない理由
  • キャベンディッシュ以外が店先に並ぶ方法

バナナの品種は豊富

バナナと聞くと、どんな形や色、また味を思い浮かべますか?

ほとんど人は、甘くてデザートになるバナナを思い浮かべます。

ある程度の太さと長さがあり、皮は厚く、熟すときれいな黄色になる「いつものバナナ」です。

しかし、これらはすべて「キャベンディッシュ」という品種の特徴であり、バナナすべてに共通するものではありません。

左から、プランテン、モラード、ラツンダン、キャベンディッシュ
左から、プランテン、モラード、ラツンダン、キャベンディッシュ / Credit:TimothyPilgrim(Wikipedia)_バナナ

実際バナナには、加熱調理される大きな「プランテン」、赤茶色の皮をした「モラード」、小ぶりで皮が薄い「ラツンダン」など、さまざまな品種があります。

もちろん、違いは見た目だけではありません。デザートに最適なバナナだけでなく、炒め物やビールの醸造に適した品種さえあるのです。

とはいえ、そんな多種多様なバナナの中でも、やはりキャンベディッシュが世界を制覇しています。

キャンベディッシュは世界で生産されるバナナのほぼ半数であり、国際取引されるバナナのほとんどを占めています。

そのため多くの国のスーパーには、キャベンディッシュ1種しか並びません。

では、このような状態になっている理由は何でしょうか?

多くの人がキャベンディッシュしか食べたことがない理由

世界を制覇したバナナ「キャンベディッシュ」
世界を制覇したバナナ「キャンベディッシュ」 / Credit:Depositphotos

多くの人がキャベンディッシュしか食べたことがないのは、キャベンディッシュを超えるバナナが作られたり、世界に流通したりしないからです。

その原因は主に3つあります。

①同じ大きさや形、味が求められている

「消費者は一貫した体験を求める」というのが、青果業界での定説です。

私たちはスーパーに並ぶものが、同じ形や大きさ、色であることを望んでいます。

もちろん、これはバナナだけに限った話ではありません。

ニンジンも同じ形や大きさが求められていますし、アボカドも同じ理由で1種類しか販売されていません。

②キャベンディッシュは安い

昔はバナナも貴重でした。

実際、18世紀半ばのニューヨークでは、バナナを食べることが一種のステータスとなっていたようです。

しかし現在では、バナナが最も安価な果物になっています。

人々にとってバナナは「安くて美味しいもの」であり、高いバナナの需要は一部の除いてほとんどありません。

費用を投資して「美味しく高価な別のバナナ」を作ったとしても、見返りは少ないでしょう。

③インフラの固定化

バナナのようなトロピカルフルーツを安価で世界中に流通させるには、専用のグローバルインフラが必要となります。

現在、冷蔵輸送コンテナ、熟成を遅らせるホルモン剤、膨大な数の輸送箱などは、すべてがキャベンディッシュに合わせて作られています。

他の品種を導入することは、世界規模の機械にサイズの異なる歯車を入れるようなものであり、大規模な変更が必要になります。

これらの点を考えると、今後もしばらくはキャベンディッシュだけを楽しむしかなさそうですね。

キャベンディッシュ以外が店先に並ぶ方法

店先にキャンベディッシュ以外が並ぶ可能性はある
店先にキャンベディッシュ以外が並ぶ可能性はある / Credit:Depositphotos

では、スーパーに並ぶバナナが多様化する可能性はゼロなのでしょうか?

もちろん、そんなことはありません。2つの可能性があります。

1つは、病気や害虫による攻撃です。

単一品種が生産の大半を占めているということは、その品種を攻撃する「病気や害虫の影響を強く受ける」ということでもあります。

実際、1950年代までは「グロスミッチェル」と呼ばれる品種が世界的にも主流でしたが、病害によって壊滅したため、耐性があった現在のキャベンディッシュの栽培が始まったという経緯があります。

しかし生物の世界では、一方の耐性はもう一方の進化を促します。

2015年以降、グロスミッチェルを壊滅させたのと同じ病原菌が、キャベンディッシュの耐性を突破して病害をひろめつつあります。

そのためバナナ農家は代替品(3代目)を探しているとのこと。

もう1つの可能性は、顧客による投資です。

現在、フロリダにある熱帯教育センターでは、「あまり知られていない果物や野菜に対して、顧客がどれほど投資するか」といった点が調査されています。

そして見込みのある果物や野菜を対象に、小規模農家と協力して新たな供給ラインを構築しているとのこと。

実際にライムやアボカドでは新しい種の生産と販売が始まっているようです。

こうした団体の活動をサポートしたり、直接農場に新しい品種を注文したりするなら、顧客として投資していることになります。

また多くの人が、店先に並ぶキャベンディッシュ以外の品種に目を光らせて購入するなら、需要と供給が徐々に向上し、バナナの多様化に貢献できるでしょう。

現在、多くの人は1種類のバナナしか食べたことがありません。

しかし私たちが望めば、いつかは他のフルーツと同じように、バナナの多様化を楽しめるときが来るかもしれませんね。

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参考文献

Why Is There Just One Top Banana?
https://www.atlasobscura.com/articles/best-bananas

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

ナゾロジー 編集部

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