成熟したヒマワリは、その顔を常に東に向けています。
アメリカ・カリフォルニア大学デービス校(University of California, Davis:UCD)に所属する植物学者ステイシー・ハーマー氏ら研究チームは、ヒマワリが東に向けて花を咲かせる理由を解明しました。
ヒマワリは東を向くことで、ミツバチを介した受粉の効率を向上させていたのです。
研究の詳細は、2022年7月27日付の科学誌『New Phytologist』に掲載されました。
目次
- 成熟したヒマワリは東を向く
- 東向きのヒマワリは温かくミツバチを集めやすい
- ヒマワリは東を向くことで子孫繁栄を狙っていた
成熟したヒマワリは東を向く
以前の研究から、成長期の若いヒマワリは、太陽を追って体を東から西に動かすと分かっています。
これはヒマワリ内部の概日リズムによって生じています。
人間の体内時計と同じく、植物の体内時計が作用することで日光を最大効率で吸収できるようにしていたのです。
そして太陽が沈むとまた東向きに戻り、朝日から十分に日光を受けられるよう備えます。
しかしこの1日の動きは、成長段階のヒマワリに限定されます。
成熟した(花が咲いた)ヒマワリは、顔の向きを東向きで固定してしまい、動かなくなるのです。
では、成熟したヒマワリが東向きで固定するのはなぜでしょうか?
ハーマー氏ら研究チームは、この点を解明しようとしました。
東向きのヒマワリは温かくミツバチを集めやすい
まずチームは、ヒマワリの頭頂部の向きを人為的に操作することにしました。
そして東向きのヒマワリと西向きのヒマワリを比べて、どのような違いが生じるか観察したのです。
その結果、東向きのヒマワリには、特に午前中、多くのミツバチが集まっていることを発見しました。
また東向きのヒマワリの頭頂部は、西向きに比べて朝の温度が高いと判明。
ハーマー氏によると、「この温度の高さが朝に採餌するミツバチにエネルギー上の恩恵をもたらしている」とのこと。
さらに東向きは、温度上昇によって花粉が早いタイミングで放出されていました。
つまり成熟したヒマワリは、朝ミツバチが採餌(および受粉)しやすいようにあえて東向きに固定していたのです。
ヒマワリは東を向くことで子孫繁栄を狙っていた
また東を向くヒマワリは、より大きく重い種子をつくる傾向にありました。
ハーマー氏によると、この効果は頭頂部の温度に左右されるようです。
実際、西向きの頭頂部をポータブルヒーターで暖めると、東向きのヒマワリと同じような結果が得られました。
さらに別の実験では、実際に西向きのヒマワリと東向きのヒマワリのどちらがより多くの子孫を生み出すか調査されました。
その結果、東向きのヒマワリの方がかなり多くの子孫を生み出すと判明。
つまりヒマワリは、頭をあえて東向きに固定することで、子孫繁栄をもたらしていたのです。
ヒマワリは写真や絵画の題材にピッタリです。
たくさんのヒマワリが同じ方向に花を咲かせるため、「絵になる美しさ」があるからです。
しかしその美しさの秘密は、ヒマワリの「徹底的な生存戦略」でした。
天真爛漫なイメージのヒマワリは、実はかなり計画的で賢い植物だったのです。
※この記事は2022年8月に公開のものを再掲載しています。
参考文献
Why sunflowers face east
https://phys.org/news/2021-08-sunflowers-east.html
Researchers find out why sunflowers always face east
https://www.zmescience.com/science/researchers-find-out-why-sunflowers-always-face-east/
元論文
Flower orientation influences floral temperature, pollinator visits and plant fitness
https://nph.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/nph.17627
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。