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創造力は大人の方が上、幼児が勝るのは自信とやる気と判明


保育園のお迎えに行くと、廊下の壁一面に子どもたちのクレヨン画がにぎやかに貼り出されています。


「子どもは大人よりずっと創造的だ」という言葉に、うなずく人は多いでしょう。


ところが、この見方を実際の作品で直接確かめた研究は、意外なほど少なかったのです。


では、同じ課題を出したとき、より創造的な作品を生むのは子どもと大人のどちらなのでしょうか。


研究の詳細は、オーストリア・グラーツ大学らにより、2026年10月21日付で学術誌『PLOS One』に掲載されました。


「子どもの方が創造的」は本当か


板に向かって、自分から進んで絵を描く子どもです。創造性は、こうした誰かに言われてではなく夢中で取り組む姿と重ねて語られがちでした。
板に向かって、自分から進んで絵を描く子どもです。創造性は、こうした誰かに言われてではなく夢中で取り組む姿と重ねて語られがちでした。 / Credit: Sumasa / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

この疑問に取り組んだのは、オーストリアのグラーツ大学のヤニカ・サレツキ氏らのチームです。


チームはまず、人々が創造性をどう捉えているかを探る質的な予備調査を行いました。


すると創造性は、小学校に上がる前の幼い子ども(未就学児)と結びつけて語られがちだと分かりました。


しかもそれは、誰かに言われてではなく、自分から夢中で取り組む姿と重ねられていたのです。


この見方は、本番の調査に参加した大人にもはっきり表れていました。


「子どもと大人、どちらが創造的か」とたずねると、大人の78.6%が「子ども」と答えたのです。


10人いれば8人近くが、自分たち大人より子どもの方が上だと考えている計算です。


一方、子どもたちの答えは「子ども」が46.7%、「大人」が43.5%と、ほぼ半々に割れました。


大人と子どもに同じ質問をしたときの答えの割合を、帯の長さで表した図です。大人の帯はほとんどが「子ども」の色なのに、子どもの帯は2つの色がほぼ半分ずつです。
大人と子どもに同じ質問をしたときの答えの割合を、帯の長さで表した図です。大人の帯はほとんどが「子ども」の色なのに、子どもの帯は2つの色がほぼ半分ずつです。 / Credit: ナゾロジー編集部(編集部が作成した図、論文の図2(Saretzki et al., PLOS One (2026)、CC BY 4.0)をもとに作成)

当の子どもたちは、自分たちの方が上だとは決めつけていなかったわけです。


そこでチームは、92人の未就学児と70人の大人に、同じ創作の課題に取り組んでもらいました。


参加者みんなが同じ順番で取り組んだ課題の流れを示した図です。作品は、誰が作ったかを知らない採点者が、新しさ・有効性・創造性の3点で評価しました。
参加者みんなが同じ順番で取り組んだ課題の流れを示した図です。作品は、誰が作ったかを知らない採点者が、新しさ・有効性・創造性の3点で評価しました。 / Credit: ナゾロジー編集部(編集部が作成した図)

大人の参加者は、主に20代の人たちでした。


1つ目は、ありふれた空き缶の使い道を、3分間でできるだけ多く考える課題です。


子どもは空き缶になじみが薄いことも考えて、子どもにも大人にも本物の空き缶を渡し、手に取りながら考えてもらいました。


2つ目は、白紙と色ペンを渡され、何でも好きに絵を描く課題です。


3つ目は、この世にいない空想の動物を考えて描く課題で、こちらは独創的な作品をはっきり求めます。


作品は、誰が作ったかを知らされていない採点者が評価しました。


見たのは、新しさ、アイデアとして有効か(有効性)、全体としての創造性の3点です。


さらに参加者自身にも、やる気や楽しさ、自信、不安の度合いを答えてもらいました。


採点者の目に「創造的」と映ったのはどちらか


歯止めのない消費を表すために、空き缶を山のように積み上げた展示です(イタリア・ミラノの2015年万博、韓国館の前)。今回の実験で使われた空き缶ではありません。実験では、こうしたありふれた空き缶の使い道を、3分間でできるだけ多く考えてもらいました。
歯止めのない消費を表すために、空き缶を山のように積み上げた展示です(イタリア・ミラノの2015年万博、韓国館の前)。今回の実験で使われた空き缶ではありません。実験では、こうしたありふれた空き缶の使い道を、3分間でできるだけ多く考えてもらいました。 / Credit: Gzzz / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

結果は、多くの大人の思い込みとは逆の方向に出ました。


空き缶の使い道を考える課題では、大人のアイデアの方が新しさ・有効性・創造性のすべてで高く評価されたのです。


空想の動物を描く課題でも同じで、大人の絵は3つの物差しすべてで子どもの絵を上回りました。


とくに有効性の差は、この空想の動物の課題でいちばん大きく開いていました。


ところが、自由にお絵かきをする課題では、少し様子が違いました。


大人の絵は有効性と創造性では上でしたが、新しさだけは子どもと差がなかったのです。


3つの課題の作品を3つの物差しで評価した結果を、マス目にまとめた図です。灰色は自由なお絵かきの「新しさ」だけで、ここでは大人もありきたりな題材を選びがちでした。
3つの課題の作品を3つの物差しで評価した結果を、マス目にまとめた図です。灰色は自由なお絵かきの「新しさ」だけで、ここでは大人もありきたりな題材を選びがちでした。 / Credit: ナゾロジー編集部(編集部が作成した図、論文の図3(Saretzki et al., PLOS One (2026)、CC BY 4.0)をもとに作成)

大人の多くが、似たようなありきたりな題材を選んで描いていたためです。


この違いは、独創的な作品を描くようはっきり求めたのが空想の動物の課題だけだったこととも合っています。


自由なお絵かきは、テストとしてではなく、次の課題の前に道具に慣れる時間として、遊びに近い形で出されていました。


ラオスの11歳の子どもが描いた、魚のいる水辺に高床の家や柵、木々が並ぶ村の絵です。今回の調査の作品ではありませんが、自由なお絵かきの課題でも、こうして何でも好きに描いてもらいました。
ラオスの11歳の子どもが描いた、魚のいる水辺に高床の家や柵、木々が並ぶ村の絵です。今回の調査の作品ではありませんが、自由なお絵かきの課題でも、こうして何でも好きに描いてもらいました。 / Credit: Khamkhoune at 11 years old (contact Basile Morin) / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

自由なお絵かきでは、新しさと創造性の差も、ほかの課題より小さくなっていました。


ここで、もう一つ気になる点があります。


子どもたちは、時間制限のある課題を大人より早く切り上げていたのです。


空想の動物の絵にかけた時間は、子どもが平均約2.7分、大人が約6.6分でした。


時間の決まりがある2つの課題で、取り組んだ平均の時間を棒の長さで比べた図です。空想の動物では大人が子どもの2倍以上かけましたが、時間の差を差し引いて比べ直しても評価の結果は変わりませんでした。
時間の決まりがある2つの課題で、取り組んだ平均の時間を棒の長さで比べた図です。空想の動物では大人が子どもの2倍以上かけましたが、時間の差を差し引いて比べ直しても評価の結果は変わりませんでした。 / Credit: ナゾロジー編集部(編集部が作成した図)

大人は子どもの2倍以上の時間をかけて、じっくり描いていたことになります。


空き缶の課題でも、3分のうち子どもは平均約1.9分、大人は約2.7分取り組んでいました。


一方、時間制限のない自由なお絵かきでは、子どもが平均約5.1分、大人が約4.2分と、かけた時間に大きな差はありませんでした。


それなら、大人は長く粘ったから高く評価されただけでは、という疑問が浮かびます。


そこで、かけた時間の違いを計算で差し引いて比べ直しても、全体の結果は変わりませんでした。


つまり作品の評価という点では、全体として大人の方が子どもを上回っていたのです。


それでも子どもが「創造的」に見えるわけ


箱に入った色とりどりのチョークに手を伸ばす子どもたちです。子どもが創造的に見える手がかりは、作品の出来より、課題に向かう気持ちの側にありました。
箱に入った色とりどりのチョークに手を伸ばす子どもたちです。子どもが創造的に見える手がかりは、作品の出来より、課題に向かう気持ちの側にありました。 / Credit: Tina Floersch / Stocksnap(CC0)

では、なぜ大人の8割近くが「子どもの方が上」と考えていたのでしょうか。


手がかりは、作品の出来ではなく、課題に向かう「気持ち」の側にありました。


子どもたちは、空き缶と自由なお絵かきの課題ではやる気が、2つのお絵かきの課題では自信が、大人より高いと答えていたのです。


空き缶の課題では、不安も子どもの方が低くなっていました。


課題ごとに、子どもが大人より高く答えた気持ちをマス目にまとめた図です。自由なお絵かきでは3つとも子どもが上で、空き缶の課題では不安も子どもの方が低めでした。
課題ごとに、子どもが大人より高く答えた気持ちをマス目にまとめた図です。自由なお絵かきでは3つとも子どもが上で、空き缶の課題では不安も子どもの方が低めでした。 / Credit: ナゾロジー編集部(編集部が作成した図、論文の図3(Saretzki et al., PLOS One (2026)、CC BY 4.0)をもとに作成)

楽しさも、空想の動物の課題を除けば、子どもの方が大きいと答えていました。


自分の創造性をどう思うかという自己評価でも、子どもの方がはっきり高い点をつけました。


子どもの多くは自分を「とても創造的」と答え、大人で多かったのは「わりと創造的」でした。


ふだん創作に触れる回数にも、大きな開きがありました。


子どもで最も多かった答えは「ほぼ毎日」何かを作ったり描いたりしているというもので、大人で最も多かったのは「少なくとも週に1回」でした。


色鉛筆で、ぬり絵に色をぬる子どもです。子どもに多かった答えは、「ほぼ毎日」何かを作ったり描いたりしているというものでした。
色鉛筆で、ぬり絵に色をぬる子どもです。子どもに多かった答えは、「ほぼ毎日」何かを作ったり描いたりしているというものでした。 / Credit: 作者不明 / Rawpixel(CC0)

研究チームは、この食い違いを「スポーツマン」という言葉にたとえています。


スポーツマンと呼ばれるのは、試合に勝つ人というより、ふだんからよく運動する人だというのです。


同じように、毎日のように自信たっぷりに創作する子どもの姿が、大人の目に「創造的」と映る可能性があります。


子どもたちが描いた絵です(ロシア・ロストフ・ナ・ドヌ)。毎日のように自信たっぷりに描く子どもの姿が、大人の目に「創造的」と映るのかもしれません。
子どもたちが描いた絵です(ロシア・ロストフ・ナ・ドヌ)。毎日のように自信たっぷりに描く子どもの姿が、大人の目に「創造的」と映るのかもしれません。 / Credit: Vyacheslav Argenberg / Wikimedia Commons(CC BY 4.0)

ただし、今回分かったのは、子どもと大人で自信や不安に違いがあったということです。


大人の不安や自信のなさが、作品の出来を押し下げていると確かめたわけではありません。


また、なぜ大人が自分を子どもより創造的でないと見るのかも、まだ分かっていません。


研究チームは今後、この点を明らかにしていくとしています。


チームは「子どもの方が創造的だという通説は、単純すぎることが分かった」と述べています。


大人はより独創的で有効なアイデアを出し、幼児はより自信とやる気をもって創作を楽しんでいたのです。


冷蔵庫に貼られたわが子のクレヨン画に大人が及ばないのは、腕前ではなく、迷わず描き始める思い切りの方なのかもしれません。


まずは「絵は苦手で」という決まり文句を、そっと封印するところから始めたいものです。


ここからは、創造性をもっと知りたい人へ


創造性とは、新しく独自で実りのある考えを生み出す力のことです


色とりどりのクレヨンです。創造性を測るテストには、意味のない線に描き足して絵を仕上げるものもあります。
色とりどりのクレヨンです。創造性を測るテストには、意味のない線に描き足して絵を仕上げるものもあります。 / Credit: Photo by Miesha Renae Maiden on Pexels(Pexels のライセンス)

心理学の研究では、創造性は新しい考えを生み出す力だけを指すのではありません。それにかかわる性格や技能、ふるまいまで含めた、幅の広い言葉として使われています。


この創造性は頭のよさ(知能)とは別の力だ、と唱えたのが、アメリカの心理学者ギルフォードです。


ギルフォードがそう考えたきっかけは、第二次世界大戦中に陸軍で、その場に応じて対処する力を研究した経験でした。


ギルフォードの考えでは、答えが1つに決まらない場面に対処する力(拡散的思考)が創造性で、決まった答えを出す力(集束的思考)が知能です。


この考えをもとに、創造性テストが作られてきました。たとえば、新聞紙のようなありふれた物の使い道を、できるだけたくさん挙げるテストです。


こうしたテストで調べたところ、創造性テストの成績は、知能テストの成績とあまり関係がないとされています。


ところで世の中には、「学校は子どもの創造性を損なう」という通説があります。影響力のあるTEDトークや本を通じて、広く知られるようになりました。


けれどもこれまでの研究では、学校教育は創造性を損なうのではなく、むしろ育てるという結果が出ています。


写真で見る子どものお絵かき


色鉛筆で、紙に絵を描く手です。今回の調査では、作品の評価で全体として大人が子どもを上回りました。
机に向かって絵を描く女の子です。自分の創造性をたずねられると、子どもの多くは自分を「とても創造的」と答えました。
農業の成果を紹介する博覧会で開かれた、子どもの絵のコンクールの参加者たちです。今回の調査では、大人の多くが「創造性は子どもの方が上」と考えていました。
色鉛筆やはさみと、ぬり絵の紙です。創作の楽しさは、空想の動物の課題を除けば、子どもの方が大きいと答えていました。

この研究の概要


発表

国際的な科学誌「PLOS One」に、2026年10月21日に発表されました。



研究チーム

オーストリアのグラーツ大学のヤニカ・サレツキ氏らのチームです。



調べた対象

予備調査では、大人10人に1人ずつ聞き取りをしました。本番の調査に参加した子どもは、地元の9つの幼稚園に通う、小学校に上がる前の最後の年の子どもたちでした。



調べ方

参加者は1人ずつ、3つの創作の課題に決まった順番で取り組みました。作品は、作った人が子どもか大人かを知らされていない5人の経験ある採点者が、5段階で評価しました。



分かったこと

作品の評価では大人が子どもを上回り、その差は目標がはっきりした課題でとくに目立ちました。子どもは、課題によって大人より自信ややる気が高く、不安が低いと答えました。



まだ分かっていないこと

子どもと大人を同じ時期に比べた調査なので、何が原因で差が生まれたのかまでは言えません。また作品を採点したのは大人で、子どもが採点すれば評価が変わる可能性があります。



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参考文献

Preschoolers aren't more creative than adults—they're just more confident (Phys.org)
https://phys.org/news/2026-10-preschoolers-creative-adults-theyre-confident.html

コトバンク「創造性」
https://kotobank.jp/word/%E5%89%B5%E9%80%A0%E6%80%A7

元論文

Are children really more creative than adults? A mixed-methods examination of creative performance and experience
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0346553

ライター

山下 浩介: むずかしい研究を、なるべく分かりやすく伝えたい。専門の言葉はふだんの言葉に置きかえて、身近な例で例える。それで「わかった」「楽しかった」と言ってもらえたら嬉しいです。
好きなのは、通学路や台所や日常の中にある科学。眠っているあいだに記憶が整理される話や、虫の鳴き方に意味がある話のように、読み終わったあとに誰かへ話したくなる研究を探しています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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