昼休みのコンビニで、サラダとからあげ弁当の棚のあいだを行ったり来たりしてしまう日があります。
しかし中には、45歳以下という若さで発症する人もいます。
こうした人たちは、一生のうちに合併症に悩まされる危険が高いとされています。
では、薬をやめて、食事と運動を24週間がらりと変えたら、その体には何が起きるのでしょうか。
イングランドとカナダの研究チームが、その答えを確かめる試験を行いました。
研究の詳細は、2026年10月1日付で学術誌『The Lancet Regional Health – Americas』に掲載されました。
若くして発症した2型糖尿病に、食事と運動の「合わせ技」を試す
2型糖尿病では、血糖を下げる薬を使わなくても血糖が落ち着いている状態を「寛解」と呼びます。
これまでの研究で、カロリーを大きく抑えた食事(低カロリー食)によって、寛解に持ち込めることが分かっていました。
ただし、低カロリー食に、指導者がついて決まった内容の運動を行う方法を組み合わせた場合については、まだ調べられていませんでした。
そこで研究チームは、若くして2型糖尿病を発症し、肥満もある18〜45歳の大人を対象に試験を行いました。
インスリンによる治療を受けている人は、対象から外しています。
参加したのは、イングランドとカナダの3つの施設で集めた96人です。
平均年齢は38歳で、女性と男性はおよそ半々でした。
ヨーロッパ系や南アジア系など、さまざまな背景の人が含まれています。
参加者はくじ引きのような方法で2つの群に分けられ、50人が新しい方法を、46人がいつもどおりの治療を受けました。
新しい方法の前半12週間は、食事を1日800〜900キロカロリーに抑えます。

それに加えて、3週目からは、指導者のついた運動を週2回、自分で行う運動を週1回こなします。
指導つきの運動には、息が上がる有酸素運動と、筋肉に負荷をかける筋力トレーニングの両方が含まれていました。
後半の12週間は、落とした体重を保つための食事に切り替え、運動は自分で続けました。

そして24週間後に、血糖の薬を12週間以上使わずに、血糖の状態を示す値(HbA1c)が6.5%未満の人を「寛解」と数えることにしたのです。
薬をやめて24週間、血糖が落ち着いた人はどれだけいた?
新しい方法の始まりは、かなり思い切ったものでした。
参加者は低カロリー食を始めると同時に、血糖を下げる薬と血圧を下げる薬をやめました。
血圧の薬については、尿にアルブミン(たんぱくの一種)が出ていない人に限った措置です。
最初の2週間は、ふつうの食事をとらず、すべての食事を置き換え食にして過ごします。

カロリーのない飲み物は1日2リットル以上、500mLのペットボトルなら4本分以上とるよう勧められました。
必要なときに使えるよう、食物繊維でできた便通の薬も渡されています。
3週目からは、1日1食だけ、ふつうの食べ物で食事をとれるようになりました。
その1食には、果物1つ分と、でんぷんの少ない野菜2つ分を入れるよう決められていました。

管理栄養士は、置き換え食をとるタイミングや水分をとる工夫を、一人ひとりに合わせて助言しました。
医師と管理栄養士は、最初の2週間に出る頭痛やだるさは想定どおりの症状で、自然に治まると参加者に伝えて安心させていました。
こうして24週間を終えたとき、新しい方法の群で寛解していた人は54%にのぼりました。
人数でいえば50人中27人で、ほぼ2人に1人にあたります。
いつもどおりの治療を受けた群で寛解していたのは、4%にとどまりました。
両群の差は50ポイントあり、偶然では説明しにくいはっきりした差でした。
途中の12週の時点では58%が寛解しており、後半もほぼ同じ水準が保たれていました。

なお、最後の検査に来たのは96人中86人で、来られなかった人は「寛解しなかった」と数えています。
寛解の割合は、男女、民族、国で分けて見ても、同じような結果でした。
さらに、体重が多く減った人ほど寛解しやすい傾向がありました。
もとの体重から10%以上減った14人は、全員が寛解していたのです。
たとえば体重90kgの人なら、9kg以上減ったことになります。
一方で、新しい方法の群では、50人中43人が少なくとも1つの体の不調を経験しました。
その多くは、低カロリー食を始めたばかりの頃の便秘、頭痛、めまい、だるさで、いずれも治まっています。
いつもどおりの治療の群で不調が出たのは46人中6人で、どちらの群でも重い有害事象(治療中に起きた好ましくない出来事)は報告されていません。
つまり、薬に頼らず血糖を保てる状態に、若くして発症した人のほぼ2人に1人がたどり着けたのです。
減ったのは脂肪で、筋肉はむしろ強くなっていた
では、このとき体の中ではどんな変化が起きていたのでしょうか。
24週間後の体重は、いつもどおりの治療の群と比べて約7.5kg多く減っていました。
お米の5kg袋でいえば、1つ半ぶんの重さです。
体の脂肪の量も、いつもどおりの治療の群との差で16.5%減っていました。
体の断面を撮る検査(MRI)でも、おなかや太ももの脂肪が減っている様子が確かめられています。
肝臓にたまった脂肪も減っていました。
肝臓に占める脂肪の割合は、いつもどおりの治療の群と比べて9.1ポイント多く下がりました。
代表例として示されたある参加者では、肝臓の脂肪の割合が14.5%から1.6%まで下がっています。

肝臓に混じっていた脂肪が、およそ9分の1にまで減ったことになります。
すい臓に占める脂肪の割合も、いつもどおりの治療の群と比べて1.3ポイント多く下がりました。
これだけ脂肪が落ちると、筋肉まで細ってしまわないかが気になるところです。
ところが、脂肪以外の体の重さ(除脂肪量)は、いつもどおりの治療の群と比べて変わっていませんでした。
これまでの低カロリー食の試験では、脂肪以外の体の重さが、比べる群より平均2.9kg減っていました。今回は、そうした目減りが見られなかったのです。
MRIで測った筋肉の量も保たれ、筋肉の中や筋肉どうしのすき間にたまる脂肪はむしろ減っていました。
握力は上がり、体重あたりで見た心肺の持久力も10.3%高まっていました。

安静にしているときの血圧と心拍数も下がり、心臓の左心室(全身に血液を送り出す部屋)の形もより好ましい方向に変わっていました。
心の面でも、気分の落ち込みや糖尿病にまつわる悩みが軽くなり、生活の質が上がっていました。
研究チームが筋肉に注目するのには、理由があります。
筋肉は、インスリンの働きで血液中の糖を取り込む主な場所の一つだからです。
また2型糖尿病では、体の老化が早く進むしるしが、筋肉に表れやすいとされています。
さらに、筋肉の中に脂肪が多くたまることは、インスリンの信号がうまく伝わらないことと関係しているとされます。

ただし、筋肉が守られたのが筋力トレーニングのおかげだと言い切ることはできません。
今回の試験には、低カロリー食だけを行う群がなかったからです。
研究チームも、筋肉への効果は筋力トレーニングを組み込んだことと関係していそうだとしつつ、はっきりとは結びつけられないと述べています。
また、今回確かめたのは24週間までの結果で、その先も寛解が続くかどうかは、この試験からは分かりません。
薬をやめることも含めて、この方法は医師と管理栄養士が見守るなかで行われたものです。
研究チームによると、高い寛解率は、この組み合わせが若くして発症した2型糖尿病で実行でき、効果もあることを示しています。
そのうえで、食事と運動を組み合わせたことで、寛解のほかにどんな上乗せの効果があるのかも調べる価値があると述べています。
置き換え食で始まった24週間を終えると、脂肪が落ちる一方で握る力はむしろ強くなり、ほぼ2人に1人が薬なしで血糖を保てていたのです。
置き換え食の2週間を思うと、コンビニのからあげ弁当がいつもより少しまぶしく見えてきます。
ここからは、2型糖尿病をもっと知りたい人へ
2型糖尿病とは、生活習慣と生まれつきの体質がかかわって起こる糖尿病です

2型糖尿病は、毎日の生活習慣と親から受け継いだ体質の両方が影響して起こる糖尿病で、糖尿病の患者の多くがこの型にあたります。
この病気の具合を知るうえで難しいのは、血糖の値の上がり下がりが激しいことです。
そのため、病院で一度だけ血糖を測っても、その人の糖尿病がどんな状態にあるのかまでは分かりません。
そこで手がかりになるのが、赤血球の中で酸素を運ぶヘモグロビンという物質に、血液中の糖がくっついたもので、これをHbA1cと呼びます。
血液中のヘモグロビンのうち、糖がくっついたものは5%ほどですが、糖尿病ではこの割合が増えます。
このため病院では、糖尿病がうまく抑えられているかを見る目安として、HbA1cがよく使われています。
写真で見る血液検査と食事の計画


参考文献
Low energy diet plus supervised exercise vs. usual care alone in people with early-onset type 2 diabetes (RESET for Remission): a randomised, open-label, blinded-endpoint efficacy trial (The Lancet Regional Health – Americas)
https://doi.org/10.1016/j.lana.2026.101664
コトバンク「ヘモグロビンA1c」
https://kotobank.jp/word/%E3%81%B8%E3%82%82%E3%81%90%E3%82%8D%E3%81%B3%E3%82%93a1c-3239203
コトバンク「2型糖尿病」
https://kotobank.jp/word/2%E5%9E%8B%E7%B3%96%E5%B0%BF%E7%97%85-1127439
元論文
Low energy diet plus supervised exercise vs. usual care alone in people with early-onset type 2 diabetes (RESET for Remission): a randomised, open-label, blinded-endpoint efficacy trial
https://doi.org/10.1016/j.lana.2026.101664
ライター
山下 浩介: むずかしい研究を、なるべく分かりやすく伝えたい。専門の言葉はふだんの言葉に置きかえて、身近な例で例える。それで「わかった」「楽しかった」と言ってもらえたら嬉しいです。
好きなのは、通学路や台所や日常の中にある科学。眠っているあいだに記憶が整理される話や、虫の鳴き方に意味がある話のように、読み終わったあとに誰かへ話したくなる研究を探しています。
編集者
ナゾロジー 編集部
