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2歳までに「砂糖の制限」を受けた人は大人のうつ・不安が少ない傾向


スーパーのお菓子売り場の前で、小さな子どもに「今日は1個だけね」と言い聞かせる親の姿はよく見かけます。


甘いものの話になると、つい虫歯や体重など「体」のことばかりが気になります。


しかし、生まれる前から2歳までに口にした砂糖が、大人になってからの「心」とも関わっているとしたらどうでしょうか。


英サリー大学(University of Surrey)の研究チームは、戦後イギリスの「砂糖の配給」を手がかりに、この疑問に挑みました。


人生のごく初めの食事は、数十年後の不安やうつと結びついていたのでしょうか。


研究内容の詳細は2026年8月19日に『Translational Psychiatry』にて発表されました。




目次



  • 戦後イギリスの砂糖配給が生んだ「自然の実験」
  • 砂糖の配給を長く経験した人の「心」はどうなっていた?

戦後イギリスの砂糖配給が生んだ「自然の実験」


戦後イギリスの砂糖配給が生んだ「自然の実験」
戦後イギリスの砂糖配給が生んだ「自然の実験」 / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

チームが注目したのは、お腹に命が宿ってから2歳の誕生日までの「人生最初の1000日」です。


この時期は体と脳が急速に育ち、ここでの栄養が一生の健康や病気へのかかりやすさの土台をつくると考えられています。


イギリスでは第二次世界大戦中から戦後にかけて厳しい食料の配給が行われ、砂糖の量も強く制限されていました。


以前ナゾロジーではこういう記事も紹介しています(砂糖の配給制限下に生まれた赤ちゃん、数十年後に起きた結果は…)


その砂糖の配給が、1953年9月に突然終わったのです。


つまり、それより前に生まれた人は人生最初の1000日の一部か全部を配給の下で過ごし、終了後にお腹に宿った人は砂糖が豊富な環境で育ちました。


この「自然の実験」を使った過去の研究では、人生最初の1000日に砂糖が制限されていた人は、大人になって糖尿病や高血圧、高齢での認知症、ぜんそくや肺の病気のリスクが低かったと報告されています。


では「心」の健康はどうなのか、というのが今回の研究の出発点です。


チームは、50万人以上のボランティアの健康データを集めた英国の大規模なデータベース「UKバイオバンク」から、1951年10月〜1956年3月生まれの4万6448人を調べました。


チームは参加者を、人生最初の時期のうち何日間が砂糖の配給と重なっていたかでグループに分けました。重なりが最も長い人たちは、お腹の中から2歳まで約1000日間、配給を経験していました。


比べる相手は、食料の配給がすべて終わったあとにお腹に宿った、配給による砂糖の制限を経験していない人たちです。


チームは病院の記録から不安やうつの診断を追い、一部の人にはアンケートで甘いものの好みも尋ねました。


砂糖の配給を長く経験した人の「心」はどうなっていた?


砂糖の配給を長く経験した人の「心」はどうなっていた?
砂糖の配給を長く経験した人の「心」はどうなっていた? / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

参加者は平均で約15.7年間追跡され、その間に全体で2776人が不安、3147人がうつと診断されました。


分析の結果、約1000日間配給を経験したグループは、配給を経験していないグループに比べて、不安と診断されるハザード比が0.67でした。これは、診断される危険の度合い(ハザード)が33%低いことを示します。


うつについても、同じグループは診断されるハザード比が0.71で、ハザードが29%低くなっていました。


この分析では、暮らしぶりや生活習慣、健康状態などの違いも考えに入れています。


実際の割合で見ると、追跡期間中に不安と診断されたのは、約1000日配給のグループで5.79%、配給なしのグループで6.28%でした。


うつでは、約1000日配給のグループが6.69%だったのに対し、砂糖の配給が終わった直後にお腹に宿ったグループでは7.23%でした。


また、約635日と約817日配給を経験したグループでも、不安とうつのリスクはともに低くなっていました。


一方で、お腹の中にいた期間だけ配給を経験したグループと、生後6か月ごろまでだけ配給を経験したグループでは、配給なしのグループとの間に差は認められませんでした。


つまり、この結びつきが現れるには、人生の初めに砂糖が少ない期間がある程度長く続く必要があるのかもしれません。


さらに約1000日配給のグループは、甘いものの好みの平均点が5.82点でした。これは、食料の配給がすべて終わったあとにお腹に宿ったグループの6.04点より低い値です。


では、大人になって甘いものをあまり食べないことが、心の健康につながっていただけなのでしょうか。


チームが大人になってからの砂糖の摂取量なども考えに入れて分析し直したところ、不安とのつながりは変わらず残りました。


原因と結果の道筋を統計モデルで調べた分析でも、配給期間の長さから不安へと直接つながる関係が確かめられています。


その一方で、うつとのつながりはこうした分析では弱まり、統計的にはっきりしたものではなくなりました。


うつについては、大人になってからの要因で一部が説明できるようだと研究チームは見ています。


サリー大学のノファー・ゲイフマン教授は、UKバイオバンクの規模の大きさのおかげで統計的に力の強い研究になったと述べ、不安とのつながりは「とても興味深い」ものだったと語っています。


研究チームは結論で、人生最初の1000日の砂糖の配給が、大人になってからの不安のリスクの低さと「関連していた」という言い方をしています。


そのうえで、人生の初めの環境が心の病気のなりやすさを形づくるうえで大切であり、栄養が不安に負けない力を与えている可能性があると指摘しています。


甘いものは子どもの歯や体だけでなく、大人になってからの心の調子とも、思いのほか長い糸でつながっているのかもしれません。


とはいえ今夜のケーキを我慢しても、赤ちゃん時代までさかのぼってやり直せるわけではないので、ほどほどに楽しみましょう。


全ての画像を見る

参考文献

Early-life sugar restriction tied to better mental health in adulthood (PsyPost)
https://www.psypost.org/early-life-sugar-restriction-tied-to-better-mental-health-in-adulthood/

元論文

Dietary sugar exposure in early life and risk of adult mental health disorders: UK Biobank cohort study
https://doi.org/10.1038/s41398-026-04376-w

ライター

山下 浩介: むずかしい研究を、なるべく分かりやすく伝えたい。専門の言葉はふだんの言葉に置きかえて、身近な例で例える。それで「わかった」「楽しかった」と言ってもらえたら嬉しいです。
好きなのは、通学路や台所や日常の中にある科学。眠っているあいだに記憶が整理される話や、虫の鳴き方に意味がある話のように、読み終わったあとに誰かへ話したくなる研究を探しています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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