「このまま定年まで働けそうだ」と思えた日は、帰り道の足取りが少し軽くなるものです。
クビになる心配が少なく、安心して働ける職場は、多くの人にとってありがたいものです。
では、その「安心」は、発明家(新しい技術やしくみを考え出す人)にとっても味方なのでしょうか。
今回、雇用の安定(仕事を失いにくいこと)と発明家の創造性の関係について、新しい研究が報告されました。
この話題の詳細は2026年9月28日に『Phys.org』にて公開されました。
目次
- 「クビにならない安心」は発明の追い風になる?
- 雇用の安定が創造性を弱める可能性
「クビにならない安心」は発明の追い風になる?

雇用の安定とは、仕事を失う心配が少なく、同じ職場で働き続けやすい状態のことです。
そうした安心があれば、失敗を恐れずに思い切ったアイデアに挑戦できそうな気もします。
一方で、創造性(これまでにない新しいアイデアを生み出す力)が、そうした安心とどう関わるのかは、すぐには分かりません。
安定した立場は、発明家のひらめきを後押しするのでしょうか、それとも違う形で働くのでしょうか。
今回の研究が注目したのは、まさにこの「安心」と「創造性」の関係です。
以前ナゾロジーではこういう記事も紹介しています(音楽BGMが創造性を損なう? 歌詞の有無などは無関係)
雇用の安定が創造性を弱める可能性

今回の研究が伝えているのは、雇用がより安定していることが、発明家の創造性を弱める可能性がある、という内容です。
つまり、「クビにならない安心」が、必ずしもひらめきの味方になるとは限らないのです。
安心が挑戦を後押しすると考えるなら、これは直感とは逆向きの見方だと言えます。
ただし、示されているのは「弱める可能性」であり、安定した発明家がみな創造性を失うという意味ではありません。
以前ナゾロジーではこういう記事も紹介しています(何物にも縛られない「自由な動き」が創造性を高めると判明!)
また、今回伝えられている内容からは、どのような発明家を何人調べたのか、どれほどの差があったのか、なぜそうなるのかといった詳しい中身までは分かっていません。
安心して働けることと、新しいものを生み出し続けることは、思っているほど単純にはつながっていないのかもしれません。
仕事の安定とやる気がどう結びつくのかは、これからも気になるテーマになりそうです。
かといって、「クビが心配で夜も眠れないけどアイデアは止まらない」という毎日も、それはそれで遠慮したいところです。
参考文献
Greater job security can make inventors less creative ()
https://doi.org/10.64628/aao.wmtqvpjjd
ライター
山下 浩介: むずかしい研究を、なるべく分かりやすく伝えたい。専門の言葉はふだんの言葉に置きかえて、身近な例で例える。それで「わかった」「楽しかった」と言ってもらえたら嬉しいです。
好きなのは、通学路や台所や日常の中にある科学。眠っているあいだに記憶が整理される話や、虫の鳴き方に意味がある話のように、読み終わったあとに誰かへ話したくなる研究を探しています。
編集者
ナゾロジー 編集部
