いわきの海沿いには、石を割るとアンモナイトが出てくる場所がある。その敷地から、恐竜の骨も出た。
イグアノドン類は、後期ジュラ紀から後期白亜紀にかけて世界に広がった植物食の恐竜です。
アジアと北米、ヨーロッパの間を行き来したことが、この仲間の多様化を形づくったと考えられています。
日本の化石も、その広がりをたどる手がかりになります。
ただし日本の記録には欠けが多く、多くは単離した歯や断片でした。
生態や多様性については、大事な問いが未解決のまま残ってきました。
研究チームが記載したのは、福島県で採集された1点の胸骨板(きょうこつばん、胸の骨)です。
拾われたのは1999年、いわき市アンモナイトセンターの敷地。
骨の大きさから、体長およそ3メートルの個体のものと推定されました。
日本の上部白亜系の海成層から見つかっていたイグアノドン類は、体長3メートルを超える個体のものとみられていました。
この地域の岸辺には、もっと小さい個体もいた。
では、1点の骨から、どうやってそこまで言えるのでしょうか。
研究内容の詳細は2026年1月1日に『Paleontological Research』にて発表されました
目次
- 手斧の形をした胸の骨、種までは決まらない
- 当時の福島に広がっていた「浅い海」
手斧の形をした胸の骨、種までは決まらない

見つかったとき、この骨はハドロサウルス上科の胸骨板だろうと考えられました。
その見立てのまま、20年以上、詳しく調べられませんでした。
ナゾロジーでは以前、南極観測隊の収蔵庫に40年ほど置かれていた骨化石が、再分析で南極から最初に採集された恐竜の骨だと分かった研究を紹介しました(40年も保管庫に眠っていた化石)。
今回の形の解析で、右側の胸骨板だと分かりました。
形は手斧に似ていて、骨は癒合していません。
後ろ内側の突起は発達しておらず、外側の縁はへこんでいます。
後ろ外側の突起は、比較的短い。
これらの特徴から、イグアノドン類のうちスティラコステルナ類に入ると判断されました。
ただし、種までは決まっていません。
おそらくハドロサウルス上科だろう、というところまでです。
体長の推定に使ったのは、近縁の種との比較。
同じ地層から出ている他のイグアノドン類と比べると、かなり小さい個体になります。
当時の福島に広がっていた「浅い海」

骨が出たのは双葉層群 芦沢層の一部で、およそ9000万〜8800万年前にできた地層です。
残っているのは、浅い海で積もった堆積物。
今の福島県の一角には、そのころ浅い海が広がっていました。
日本の後期白亜紀からは、体長およそ8メートルの大型のイグアノドン類のほぼ完全な骨格も記載されています。
そこに、ずっと小さい個体が加わった。
東アジアの沿岸の環境には、体の大きさに幅のあるイグアノドン類がいたことになります。
手がかりは単離した1点の骨で、種までは決まっていません。
体長およそ3メートルという値も、骨の大きさと近縁種との比較からの推定です。
日本の化石記録は断片が多く、生態や多様性には未解決の問いが残ります。
その岸辺に、ほかにどんな大きさの恐竜が歩いていたのでしょうか。
20年以上引き出しで待っていた骨が、白亜紀の岸辺に小さな影を一つ足しました。
参考文献
90-Million-Year-Old Fossil Reveals a Small Dinosaur Living Along Japan’s Coast (SciTechDaily)
https://scitechdaily.com/90-million-year-old-fossil-reveals-a-small-dinosaur-living-along-japans-coast/
Postcranial osteology of the basally branching hadrosauroid dinosaur Tanius sinensis (Journal of Vertebrate Paleontology)
https://doi.org/10.1080/02724634.2021.1914642
40年も保管庫に眠っていた化石、「南極で最初に見つかった恐竜の骨」と判明(ナゾロジー)
https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/197131
元論文
An iguanodontian sternal plate from the Upper Cretaceous Ashizawa Formation (Futaba Group) of Fukushima Prefecture, Japan
https://doi.org/10.2517/prpsj.250042
ライター
天道銀河: 科学、歴史、心理、宇宙、生き物、テクノロジーなど、気になるものにはジャンルを問わず首を突っ込む雑食系ライターです。ひとつの分野を深く極めるというより、さまざまな知識を広く集め、意外なつながりを見つけるのが好きです。専門家ほど深くはなくても、好奇心の広さなら負けません。「こんな世界もあるのか」と思えるような、面白くてわかりやすい話題を届けていきます。
編集者
ナゾロジー 編集部
