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マウスでアスパルテームが「脳卒中のダメージ」を悪化させた


コンビニの棚で「カロリーゼロ」の缶を手に取るとき、甘さの正体まで気にする人は多くありません。


その甘さの正体の一つがアスパルテームです。ゼロカロリー飲料や加工食品に広く使われ、規制当局は決められた1日の上限内なら安全としています。


人の脳細胞にこの甘味料を与えると酸化ストレスとミトコンドリアの損傷が起きる、という2023年の研究もあり、神経への影響は議論が続いていました。


復旦大学の研究チームは、アスパルテームを1週間飲ませた雄のマウスで、脳の血流を止めて戻したあとに死ぬ組織が広がり、神経細胞の傷みも悪化することを報告しました。


培養した神経の幹細胞でも、酸素と糖が足りない条件では細胞死が増えました。通常の酸素の条件では影響はごくわずかで、アセスルファムやスクラロースでは増えませんでした。


マウスと培養細胞の結果で、人で同じことが起きるかは調べられていません。


甘味料が傷を広げた仕組みとして研究チームが突き止めたのは、細胞のエネルギー工場の不調と、細胞を守る信号の弱まりです。その中身は、培養細胞の実験で確かめています。


研究内容の詳細は2026年2月27日に『Ecotoxicology and Environmental Safety』にて発表されました




目次



  • 1週間の甘味料で、死んだ脳組織の広がりが大きくなった
  • エネルギー工場の働きが落ち、守りの信号が弱っていた

1週間の甘味料で、死んだ脳組織の広がりが大きくなった


1週間の甘味料で、死んだ脳組織の広がりが大きくなった
1週間の甘味料で、死んだ脳組織の広がりが大きくなった / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

脳梗塞の怖さは、詰まっている間だけではありません。血流が戻ったあとに炎症や酸化ストレスの連鎖が起きて、組織がさらに傷むことがあるのです。その引き金になるのは、急に流れ込む酸素と栄養です。


この二度目の傷は「虚血再灌流傷害」と呼ばれ、脳卒中の後の状態を左右する主な要因の一つです。


研究チームは雄のマウス50匹を群に分け、0.1%か0.2%のアスパルテームを溶かした水を7日間自由に飲ませました。人の許容摂取量の上限に近づけた濃度です。


脳梗塞に見立てた処置は、首の動脈を2時間ふさぎ、その後12時間血流を戻すというものです。


甘味料なしのマウスで死んだ脳組織の面積は約24.3%でしたが、0.2%の水を飲んだマウスでは58.6%に広がりました。


生き残った神経細胞は、甘味料を飲んだマウスで少なくなっていました。細胞の崩れが目立ったのは、記憶や思考に関わる大脳皮質と海馬です。


エネルギー工場の働きが落ち、守りの信号が弱っていた


エネルギー工場の働きが落ち、守りの信号が弱っていた
エネルギー工場の働きが落ち、守りの信号が弱っていた / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

細胞で起きることを見るための材料は、生まれたばかりのマウスの脳の神経の幹細胞です。この細胞にアスパルテームを48時間与えておき、そのうえで酸素と糖を断ちました。


細胞の生存率は、酸素と糖を断っただけの場合より約25%大きく落ちました。通常の酸素の条件では、甘味料の影響はほとんどありません。


細胞のエネルギー工場であるミトコンドリアの中には活性酸素がたまり、膜の電位が失われて働きが落ちていました。


細胞をストレスから守る信号の経路(ERK/CREB1)の働きも落ちていました。薬でこの経路を動かし、ミトコンドリアの活性酸素を取り除いた細胞では、細胞死と炎症が部分的に和らいでいます。


炎症を進める物質の遺伝子の働きも上がり、神経細胞へ育つ細胞の割合は減っていました。この変化も、守りの経路を活性化すると和らぎました。


研究チームのまとめでは、甘味料の害はストレスに依存する形で現れました。通常の酸素の条件ではほとんど影響がなく、酸素と糖が断たれた条件で、ミトコンドリアの不調と活性酸素の蓄積、守りの信号の抑制が重なって傷が広がったのです。


限界もはっきりしています。与えた期間は7日間で、人が毎日長年飲む状況とは違い、実験は雄のマウスだけで、行動や認知の変化は調べていません。


人が長年少しずつ飲み続けたときに脳の耐性がどう変わるのか、人でも同じ経路が働くのかは、これからの検証に残されています。今回の結果が示すのは、血流が途絶えて戻るという強いストレスの下で、この甘味料が細胞の守りを弱める側に働きうる、ということです。


全ての画像を見る

参考文献

Common artificial sweetener aspartame makes brain cells more vulnerable to stroke damage, mouse study suggests
https://www.psypost.org/common-artificial-sweetener-aspartame-makes-brain-cells-more-vulnerable-to-stroke-damage-mouse-study-suggests/

元論文

Aspartame exacerbates cerebral ischemia–reperfusion injury via mitochondrial dysfunction and ERK/CREB1 pathway suppression
https://doi.org/10.1016/j.ecoenv.2026.119938

ライター

天道銀河: 科学、歴史、心理、宇宙、生き物、テクノロジーなど、気になるものにはジャンルを問わず首を突っ込む雑食系ライターです。ひとつの分野を深く極めるというより、さまざまな知識を広く集め、意外なつながりを見つけるのが好きです。専門家ほど深くはなくても、好奇心の広さなら負けません。「こんな世界もあるのか」と思えるような、面白くてわかりやすい話題を届けていきます。

編集者

ナゾロジー 編集部

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